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ナムジャイブログ

2009年05月26日

諦めるべきではないか

 先週の月曜日にバンコクに向かった。その直前から、日本は大変なことになっていた。豚インフルエンザである。
 神戸で患者がみつかり、大阪に飛び火した。その後の経過は、バンコクを経由して訪ねたチェンマイやバリ島で知った。アジアから眺めると、皆がマスクをする姿は、どこか滑稽ですらあった。
 元々、豚インフルエンザは、毎年、流行するインフルエンザに近いものであることは専門家が口にしていた。しかしWHOは、鳥インフルエンザの人から人への感染を防ぐ予行演習に使った節すらあった。
 しかしその結末は、「防ぎきれない」という切ない結末だった。
 僕の周りでは、この時期に豚インフルエンザに罹り、免疫をつくったほうがいいのではないかという話が囁かれつづけていた。受験生を抱える家族は、今年の年末、インフルエンザを防ぐワクチンを打ってもらう人が多い。健康保険が適用されないから、ひとり6000円もかかる。それなら豚インフルエンザにかかってしまおうという発想である。さして怖くはないインフルエンザだから、そんな会話が交わされるのだ。しかし、どこかそんなことは口にできない空気に日本は包まれてしまった。
 怖い国である。
 諦めるべきではないか。いまの科学では、インフルエンザのウイルスの変異を予測できない。それよりも、人類はできるだけ多くの免疫を体内につくっていくことではいか。
 こういうと、非難が集まることはわかっているのだが。
  

Posted by 下川裕治 at 13:19Comments(1)

2009年05月19日

「わび」「さび」という日本ブランド

 茶会というものに参加した。やはり年をとったということなのだろうか。最近、知人が深入りする世界は、妙に和風である。
 町田に近い一軒家。そこのなかにある茶室で、懐石料理をいただき、最後にお茶という世界だ。
 無粋なうえに、海外ばかりほっつき歩いてきた僕は、お茶の世界にはとんと疎い。礼儀作法にも縁がない。高い茶器の世界や家元制にも違和感を覚えていた。
 しかし茶会は新鮮だった。三畳ほどの個室は、武将たちの密会の場だった。この部屋には刀はもち込むことはできなかったのだ。
「わび」の世界にしても、千利休という男を介した、ひとつのブランドだった。
 茶室に響く釜の音。和ロウソクが燃える音。掛け軸の前に飾られた茶花。それは日本人がつくりあげたブランドだったのだ。
 そぎ落としていくというマイナスの美学が生んだ「わび」「さび」というブランド。そこは日本人の生き方に通じていた。
 しだいに豪奢になり、戦争を通して、そのブランドへの評価は低くなってしまったが、そこにある宇宙観には、目を瞠るものがある。そこへの道のりは遠そうで、分け入ろうとは思わないが、ときにその世界に圧倒される茶室は、沈思黙考してしまうほど新しかった。
  

Posted by 下川裕治 at 12:24Comments(0)

2009年05月11日

台北の朝に呟く「旅」

 このコーナーを書きはじめて、1ヵ月がたつ。週末に原稿を書くようにしているのだが、1回も自宅で原稿を書けなかった。バンコク、沖縄、信州の松本……。そしていま、台北にいる。なにやかやと仕事や用事があるのだが、さすがに疲れる。
 飛行機という乗り物も、やはり疲れる。昔から、搭乗時のトラブルは何回も経験しているので、どうしても早く空港に向かってしまう。今回はなんの問題もなく、空港もすいていたので、成田空港で2時間近くも時間ができてしまった。
 コーヒーショップで本のゲラをチェックしていたのだが、周囲はこれから旅に出るグループ客ばかりだった。楽しそうだった。考えてみれば、この1ヵ月、自宅を離れるときは、いつもひとりだった。連れがいれば、また気を遣うことが多いのだが、こうして、ひとりで飛行機ばかり乗っていると、ときに観光旅行に出かける人が羨ましくも映る。
 昨夜はホテルに近い寧夏夜市で夕食をとった。昔は珍しい料理や面白い店に足を運んだものだが、最近では、簡単にすませてしまうことが多い。昨夜は一杯のビーフンだった。沖縄でも、コンビニで弁当を買ってホテルの部屋で食べていた。
 これも旅? 最近、自分でもわからなくなる。やはりこれも旅なんだろうか。
 快晴である。気持ちのいい台北の朝。窓から、朝日を浴びる台北駅を眺めながら、旅を考えてしまうのだ。
  

Posted by 下川裕治 at 14:08Comments(0)

2009年05月06日

景気刺激策から抜け落ちた島

 ひどい渋滞のなかを東京に戻った。
 ゴールデンウイークである。生まれ育った信州に帰った。実家は松本市に近い安曇野にある。何年か前、安曇野市になった。
 実家には母親がひとりで暮らしている。まだ元気なのだが、なにかと用事があり、新宿と松本を往復することは多い。高速バスで3時間ほどだ。JRの「あずさ」の半額近い金額になるので、もっぱら高速バスを使っている。
 いつもはスムーズなのだが、今回は5時間もかかってしまった。日本は景気刺激策のひとつとして、休日の高速道路の通行料金を一律1000円に引き下げた。連休の高速道路は、どこも渋滞に見舞われた。たったこれだけで、とんでもない渋滞が起きる。なんと日本人は従順な国民なのか。
 先週、訪ねた沖縄の石垣島で土産物屋を営む知人が憂鬱そうな顔でこういった。
「今年のゴールデンウイークは、去年より観光客がだいぶ減りそうです。宿も空室がまだある。今年は高速料金が安いから、車で出かける人が多いさ。お陰で……」
 日本の景気刺激策から、沖縄の離島がすっぽり抜け落ちている。いまにはじまったことではないのだが。
  

Posted by 下川裕治 at 01:58Comments(0)