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ナムジャイブログ

2013年09月30日

【お知らせ】下川裕治 スライド&トークショー

◆下川裕治
スライド&トークショー◆

「週末台湾の旅の楽しみ方」


 新刊『週末台湾でちょっと一息』(朝日文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、ふらっと行く週末台湾の旅の魅力についてスライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。

 前作『週末バンコクでちょっと脱力』では下川さんの第二の故郷ともいえるタイのバンコクで、朝の屋台、運河巡り、歩道のフードコート、川沿いで飲むビール、早朝のマラソン大会など、心も体も癒されるディープな週末のバンコク旅の楽しみ方を紹介していた下川さん。
 本作では、夜市のライスカレー、サイクリング、カジュマル、哀愁の北回帰線駅、自分で取り出すビールなど、羽田空港からたった3時間で到着するゆるくて、深い週末の台湾旅行の楽しみ方をオススメしています。日本じゃないのに懐かしさを感じる、下川さん独自のゆるい台湾旅の味わい方が聞けるはずです。

下川ファンの方はもちろん、台湾や台北が大好きな方や週末海外旅行に興味のある方はぜひご参加ください!

※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。

●下川裕治(しもかわゆうじ)

1954年長野県松本市生まれ。旅行作家。『12万円で世界を歩く』でデビュー。以後、主に
アジア、沖縄をフィールドにバックパッカースタイルでの旅を書き続けている。著書に、
『鈍行列車のアジア旅』『「生き場」を探す日本人』『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断
2万キロ』『週末アジアでちょっと幸せ』『「行きづらい日本人」を捨てる』 等。

◆下川裕治さんブログ「たそがれ色のオデッセイ」
http://odyssey.namjai.cc/


【開催日時】 
 10月18日(金)   19:30 ~ (開場19:00)  
【参加費】   
 900円   ※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】  
 旅の本屋のまど店内  
【申込み方法】 
 お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、
 お申し込みください。TEL&FAX:03-5310-2627
 e-mail :info@nomad-books.co.jp
 (お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
 ※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
 旅の本屋のまど TEL:03-5310-2627 
 (定休日:水曜日)
 東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
 http://www.nomad-books.co.jp

 主催:旅の本屋のまど 
 協力:朝日新聞出版

  

Posted by 下川裕治 at 15:25Comments(0)

2013年09月30日

娘たちは親の背中を見ていた?

 10月1日、内定式を行う企業が多い。複数の内定をもらった学生も、この日で最終的な就職先を決めることになる。
 僕にはふたりの娘がいる。上の娘はすでに就職し、働いている。下の娘が今年、就活だった。なんとか勤める会社が決まり、内定式に出るはずである。
 ふたりの娘とも、僕がかかわる出版界に就職はしなかった。上の娘は、マスコミというものに若干の興味があったらしく、本格的な就職活動がはじまる前に、OB訪問という形で何社かを訪ねた。僕も担当の編集者などを紹介したのだが、そのうちの何人かはこういったという。
「この業界はやめときなさい。将来がありません。厳しくなっていく一方でしょう」
 皆、出版社で僕の本を担当する人たちである。本ができあがったときは、
「ひょっとしたら、この本、売れるかもしれません。頑張りましょう」
 などといっている担当者が、本心ではそう思っているのだ。親の職業の手前というものもあるだろうに……とは思うが、実際にそうなのだ。本の売り上げは年を追って減ってきている。売れる本もあるのだが、全体の流れからみれば、衰退産業なのだ。
 それがきっかけ、というわけではなかっただろうが、娘たちは、出版界に就職しようとはしなかった。正しい選択だとは思うが、出版界で生きている親のしたら、ぽそっとしてしまうところがある。
 ある作家が書いていたが、原稿を書く世界では、2世という存在が少ないのだという。政治家に2世議員が多いことは問題にもなっている。2世タレントという言葉もある。しかし2世作家といういい方は耳にしたことがない。
 読者は冷酷である。面白いものにしか反応を示してくれない。親が作家だからといって読んではくれない。政治家には、「親の地盤を引き継ぐ」という表現があるが、作家に地盤など、爪の先ほどもないのだ。
 ひとつの本が面白かったとなると、読者はさらに読み応えのあるものを要求する。そのなかで生きていかなくてはならない。
 そんな親の背中を、娘たちはしっかり見ていたのだろうか。非正規雇用がいかに危ういものかを、しっかり刷り込まれた世代なのである。そういうフィルターをかければ、親の仕事の脆さはすぐに浮き彫りにされる。
 シニア層は、本を読むことの大切さを強調するが、その言葉が砂漠に染みこむ水のように消えていくことを知っている。
 娘の就職を考えていたら、なんだかずんずんと落ち込んできてしまった。このところ、いつも本の締め切りに追われている。売れるのかどうか……予測もつかない本の原稿を今日も書かなくてはならない。

(お知らせ)
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Posted by 下川裕治 at 15:19Comments(2)

2013年09月23日

日本人の店が怖い

 最近、その傾向がとくに強いような気がする。日本にいると、日本人が経営する店から足が遠のいてしまうのだ。日本人の店は、なぜか怖い。つい、ミャンマー人や台湾人、タイ人、そして沖縄の店に足が向いてしまう。
 僕は日本人だから、日本語を話すことができる。59歳にもなっているのだから、飲食店でのシステムや礼儀ぐらい知っている。場数は踏んできた。しかし年をとるにつれ、日本人の店を敬遠するようになってきた。
 これはどういうことだろうか。
 たとえばどこにでもあるような居酒屋。チェーン店が多い。こういう店の対応は画一的で、丁寧な言葉の背後に威圧感が潜む。アルバイト店員が教えられる接客マニュアルは、サービスという仮面をかぶったトラブル処理術にも思えてくる。
 小料理屋系の小さな店は、料理のレベルは高く、雰囲気もいいのだが、店の人との距離が近すぎる。いろいろと話さなければいけないかと思うと、暖簾をくぐろうという気になれない。
 そこへいくと、アジア人が切り盛りする店は楽だ。マニュアルがにおう対応もない。言葉の問題もあるのだが、向こうから話しかけてくるようなことはまずない。放っておいてくれる。それでいて店だから、氷がなくなると運んできてくれる。
 アジアの優しさが失われていない。なにをしてもいいわけではないが、日本のようにその入り口で、ぴしゃりと拒絶するようなきつさがない。
 それは甘えだとわかっている。アジアに慣れ親しんだ人間だから……ということもあるだろう。しかし親しい知り合いと酒を飲むときぐらい、穏やかな心もちでいたい。そう考えると、アジア人や沖縄の人の店になびいていってしまうのだ。
 先週、このブログで書いた、チェンマイのホームレスの話が世間を駆けめぐっているらしい。今月の初旬、マレーシアに行ったが、そこで会った日本人からも訊かれた。
「あのホームレスの人どうなりました?」
 アジアでホームレスになりたいわけではないだろうが、どこかで気になっている日本人は少なくないのだろう。
「アジアでのホームレスは難しいことはわかるけど、同じホームレスになるなら、アジアのほうがいいなぁって思うんです。やっぱ日本は、ホームレスにも厳しそうだから」
 漠然としたイメージにすぎないが、タイのチェンマイでホームレスになった男のなかにも、同じ思いがあった気がする。甘い話なのだが、アジアはいつもそんな蠱惑の香りをたたえている。おそらく僕が、日本人の店が怖いといった心境と同じなのだろう。
 人はそれほど強くはないということか。


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Posted by 下川裕治 at 12:00Comments(0)

2013年09月16日

チェンマイのホームレスは捕まった

 チェンマイの警察を訪ねた。ひとりの日本人ホームレスが、捕まったことがわかったからだ。
 経緯を少し説明しておく。
 昨年のことだ。チェンマイのバスターミナルで寝泊まりしている日本人ホームレスがいることを知った。彼に会ってみた。チェンマイに来てからの日々をまとめてみたいと彼がいった。ちょうどその頃、『「生きずらい日本人」を捨てる』(光文社)を書いている最中だった。編集部と相談し、彼の手記を収録することにした。
 彼は日本の家庭を捨て、さしたる金ももたずにチェンマイにやってきた。50代の前半という年齢だった。やがてその金も消え、ホームレスになる。高い血圧という病を抱えていた。薬を買う金もなく、やがて死ぬだろうという諦念もあった。
 しかし、ホームレスゆえの粗食とひたすら歩く生活が、彼の体を甦らせてしまう。だからといって、金があるわけではない。万引きを繰り返しながらのホームレス。万引きが発覚して捕まることになる。しかしチェンマイの警察は彼を、「かわいそうだ」と釈放してしまう。
僕が会ったのは、彼がそんな状況に置かれていたときだった。彼はチェンマイでの日々をノート3冊にぎっしり書いてきた。
 本が出版され、収録された彼の原稿分の印税がでた。8万円ほどになった。
 彼を気にしていたチェンマイの日本人と一緒に会った。僕らは、この金で日本に帰るように説得した。ビザは切れ、オーバーステイになっていたが、その罰金は刑期を終えれば消える。彼は、「私にも私の考えがある」といった。僕はその金を渡した。
 それから9ヵ月。やはり彼は捕まった。38バーツの無銭飲食。チェンマイの警察も2回目となれば見逃すことも難しい。
「6日にメーサイに移送した」
 警察でそういわれた。僕が訪ねたのは9月9日。3日前だった。メーサイには、脱北者を収容する施設があると聞いたことがある。ある程度、人数がまとまると、バンコクに送るらしい。
「メーサイか……」
 タイ最北端の山並みは彼の瞳にどう映るのだろうか。もちろん金は一銭もない。家族や親族が送金してくれないと、彼には行き先がない。チェンマイの警察はこういった。
「彼は日本への連絡を拒否している」
 帰りたくはないのだ。しかしタイの警察にしても、いつまでも彼を収容しておくわけにはいかないだろう。
 どう生きようが自由ではないか。彼はそう思っているのだろうか。しかし海外でのホームレスの前には、国籍という壁がある。それを越えるのはなかなか難しい。国境を越える脱北者とチェンマイの日本人ホームレス。メーサイの収容施設では、ふたつの国籍が交錯している。

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Posted by 下川裕治 at 16:40Comments(2)

2013年09月09日

10月1日は世界中の飛行機が混みあう

 トレンガヌという街にいる。マレーシアの東海岸にある街である。この街の沖にある島がリゾートになっているようで、そこに遊びにくる中国人が多い。エアアジアでクアラルンプールから来たのだが、乗客の半数以上は大陸から来たリゾート客だった。
 日本ではあまり知られていないリゾートなのだが、中国系マレーシア人とのつながりなのか、このあたりは完全な中国人のリゾートアイランドになりつつある。中国系マレーシア人は中国語を話すから、中国語のままで楽しめるリゾートというわけだ。
 これからバンコクに向かい、日本に帰るのだが、10月にバンコクに行かなくてはならない。10月1日に東京からバンコクに向かう飛行機を予約しようと思うのだが、とんでもなく混みあっている。
 僕はユナイテッド航空のマイレージを貯めているため、スターアライアンス系の航空会社を選ぼうとする。しかし10月1日は、ユナイテッド航空に席はなく、中国国際航空の予約も難しい。
「そりゃ、そうですよ。国慶節ですから」
 知人から教えられた。
「国慶節……。すっかり忘れてました。でもどうしてアメリカのユナイテッド航空が混むんです?」
「中国人はいま、世界規模で動きますから」
 中国人が長く休むことができる国慶節。10月1日から、彼らの大移動が起きる。
 世界のあちこちで、「なぜ、10月1日の航空券がとれないの?」と首を傾げる人は多いのかもしれない。
 中国の経済成長には陰りがみえてきているが、一般の庶民の感覚は違うらしい。ひと桁多い金額が貯まった貯金通帳を眺めながら、「今年の国慶節は海外だ」と目を輝かすのだろう。
 トレンガヌで日本人墓地を探した。ここは戦中、英雄扱いされたマタハリが生まれた街である。戦前は数十人の日本人が住んでいたといわれ、その墓地は15年ほど前にみつかったのだ。
 街の人たちに尋ねつつ、やっと日本人墓地をみつけたが、そこは広い中国人墓地の片隅だった。マレーシアの中国人と日本人の存在感の違いをみせつけられたような思いだった。
 しかしトレンガヌの墓地に眠る中国人たちは恵まれていたわけではない。豊かな暮らしを夢みて、マレーシアに渡ったのだが、そこには苦力貿易を牛耳るエージェントが跋扈する世界だった。海を渡った中国人の多くは、本国に帰ることはできなかった。
 その街にいま、リゾート客として中国人がやってくるようになった。女性たちはリゾートファッションで決めている。つばの広い帽子が目立つ。子供たちは拾った貝殻を大事そうに手にしている。彼らは確実に豊かになったのだ。
「中国の長い歴史のなかで、いまの中国がいちばん豊かかもしれない」
 ある専門家がいっていた。たしかにそうなのかもしれない。

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Posted by 下川裕治 at 12:58Comments(2)