2015年02月23日
うろうろと東京に帰る
3年前、僕は頑張った。ユナイテッド航空のマイレージを貯め、ゴールドカードの会員をめざしたのだ。
きっかけは知人の言葉だった。
「バンコクに、月1回のペースで行っているんなら、ゴールドになれるんじゃないですか。チェックインや搭乗で優先されるし、荷物も早く出てくる。ラウンジも使えますよ」
できるだけ東京―バンコク線でユナイテッド航空に乗るようにした。そしてなんとか5万マイルを貯めた。翌年の1月、ゴールドカードが自宅に届いた。
優先搭乗に魅力は感じなかったが、優先的にチェックインできることや、荷物が早く出てくることは、たしかにありがたかった。ラウンジというところも使わせてもらった。はじめは選ばれた人が優雅にソファに座っているような雰囲気に気後れしていた。薄っぺらな優越感の世界が鼻もちならなかった。しかしただで軽食を口にでき、ビールも無料。インターネットもちゃんとつながる……という世界に引きずりこまれていってしまった。
しかし僕は、そういう世界にあまり縁がないらしい。
というのも、必死で貯めている最中に、ユナイテッド航空の東京―バンコク線が廃止になるという発表があったのだ。
さて、どうしたものか。
ゴールドカードを取得条件のひとつに、ユナイテッド航空そのものに4区間以上乗るというルールがあった。ユナイテッド航空の東京―バンコク線が廃止になったのは昨年の3月末である。それまでになんとか4区間乗った。それ以降は、できるだけスターアライアンス系の航空会社に乗るようにした。
昨年の末、やっとの思いで5万マイルに到達した。
しかし昨年、ユナイテッド航空の冷酷な発表があった。獲得マイルを、飛行距離ではなく、航空券の金額をもとに計算するというのだ。1年間に4区間というルールはそのまま残った。
運賃ベースにする……。これは致命的である。そもそもユナイテッド航空のマイルを貯めたのは、運賃が安いのに、たくさんのマイルを貯めることができたからだ。これからは安い航空券を買うと、マイルが少ししか貯まらないのだ。
今週、バンコクに来た。東京からユナイテッド航空でシンガポールに向かい、空港で夜明かしして、朝のLCCでバンコクに着いた。年に4回乗るためである。
しかし空港の夜明かしはつらい。
「ゴールドは、会社の経費で頻繁に海外に出張する人か、マニアのものになっちゃいましたね」
僕にゴールドカードをすすめた知人は無責任なことをいう。しかし、その通りなのだ。安い航空券を狙い、マニアでもない僕は、早晩はじき出されるのだろう。
その覚悟ができず、まだうろうろと、ユナイテッド航空で東京に帰ることになる。
きっかけは知人の言葉だった。
「バンコクに、月1回のペースで行っているんなら、ゴールドになれるんじゃないですか。チェックインや搭乗で優先されるし、荷物も早く出てくる。ラウンジも使えますよ」
できるだけ東京―バンコク線でユナイテッド航空に乗るようにした。そしてなんとか5万マイルを貯めた。翌年の1月、ゴールドカードが自宅に届いた。
優先搭乗に魅力は感じなかったが、優先的にチェックインできることや、荷物が早く出てくることは、たしかにありがたかった。ラウンジというところも使わせてもらった。はじめは選ばれた人が優雅にソファに座っているような雰囲気に気後れしていた。薄っぺらな優越感の世界が鼻もちならなかった。しかしただで軽食を口にでき、ビールも無料。インターネットもちゃんとつながる……という世界に引きずりこまれていってしまった。
しかし僕は、そういう世界にあまり縁がないらしい。
というのも、必死で貯めている最中に、ユナイテッド航空の東京―バンコク線が廃止になるという発表があったのだ。
さて、どうしたものか。
ゴールドカードを取得条件のひとつに、ユナイテッド航空そのものに4区間以上乗るというルールがあった。ユナイテッド航空の東京―バンコク線が廃止になったのは昨年の3月末である。それまでになんとか4区間乗った。それ以降は、できるだけスターアライアンス系の航空会社に乗るようにした。
昨年の末、やっとの思いで5万マイルに到達した。
しかし昨年、ユナイテッド航空の冷酷な発表があった。獲得マイルを、飛行距離ではなく、航空券の金額をもとに計算するというのだ。1年間に4区間というルールはそのまま残った。
運賃ベースにする……。これは致命的である。そもそもユナイテッド航空のマイルを貯めたのは、運賃が安いのに、たくさんのマイルを貯めることができたからだ。これからは安い航空券を買うと、マイルが少ししか貯まらないのだ。
今週、バンコクに来た。東京からユナイテッド航空でシンガポールに向かい、空港で夜明かしして、朝のLCCでバンコクに着いた。年に4回乗るためである。
しかし空港の夜明かしはつらい。
「ゴールドは、会社の経費で頻繁に海外に出張する人か、マニアのものになっちゃいましたね」
僕にゴールドカードをすすめた知人は無責任なことをいう。しかし、その通りなのだ。安い航空券を狙い、マニアでもない僕は、早晩はじき出されるのだろう。
その覚悟ができず、まだうろうろと、ユナイテッド航空で東京に帰ることになる。
Posted by 下川裕治 at
11:54
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2015年02月18日
下川裕治スライド&トークショー【週末香港&マカオの旅の楽しみ方】
新刊「週末香港・マカオでちょっとエキゾチック」発売記念
◆下川裕治 スライド&トークショー◆
「週末香港&マカオの旅の楽しみ方」
------------------------------------
新刊『週末香港・マカオでちょっとエキゾチック』(朝日文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、ふらっと行く週末香港&マカオの旅の魅力について スライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。
前作の『週末沖縄でちょっとゆるり』ではアジアが潜む沖縄そば、脊髄反射のようにカチャーシーを踊る人々、マイペースなおばぁ、突っ込みどころ満載の看板など、なんだか東南アジアのようにゆるい週末の沖縄旅行の楽しみ方を紹介していた下川さん。
本作では、重慶大厦(チョンキン・マンション)や大衆食堂といった庶民的な異空間が残り、路上を占拠した学生たちが涙を流し た香港と、中国の富を巧みにとり込みカジノ景気に沸くマカオの対照的なふたつの街に注目し、週末の香港&マカオ旅行の楽しみ方をオススメしています。90年代にそれぞれイギリス、ポルトガルから返還され、中国と独特なバランスを保ちながら時代のうねりに翻弄され続ける香港とマカオの今を取材した下川さん独自の旅の情報が聞けるはずです。
下川ファンの方はもちろん、香港&マカオが大好きな方や週末旅に興味のある方はぜひご参加ください!
※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。
【開催日時】
3月5日(木)19:30~(開場19:00)
【参加費】
900円
※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】
旅の本屋のまど店内
【申込み方法】
お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、お申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
旅の本屋のまど
TEL:03-5310-2627 (定休日:水曜日)
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
http://www.nomad-books.co.jp
主催:旅の本屋のまど
協力:朝日新聞出版
◆下川裕治 スライド&トークショー◆
「週末香港&マカオの旅の楽しみ方」
------------------------------------
新刊『週末香港・マカオでちょっとエキゾチック』(朝日文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、ふらっと行く週末香港&マカオの旅の魅力について スライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。
前作の『週末沖縄でちょっとゆるり』ではアジアが潜む沖縄そば、脊髄反射のようにカチャーシーを踊る人々、マイペースなおばぁ、突っ込みどころ満載の看板など、なんだか東南アジアのようにゆるい週末の沖縄旅行の楽しみ方を紹介していた下川さん。
本作では、重慶大厦(チョンキン・マンション)や大衆食堂といった庶民的な異空間が残り、路上を占拠した学生たちが涙を流し た香港と、中国の富を巧みにとり込みカジノ景気に沸くマカオの対照的なふたつの街に注目し、週末の香港&マカオ旅行の楽しみ方をオススメしています。90年代にそれぞれイギリス、ポルトガルから返還され、中国と独特なバランスを保ちながら時代のうねりに翻弄され続ける香港とマカオの今を取材した下川さん独自の旅の情報が聞けるはずです。
下川ファンの方はもちろん、香港&マカオが大好きな方や週末旅に興味のある方はぜひご参加ください!
※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。
【開催日時】
3月5日(木)19:30~(開場19:00)
【参加費】
900円
※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】
旅の本屋のまど店内
【申込み方法】
お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、お申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
旅の本屋のまど
TEL:03-5310-2627 (定休日:水曜日)
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
http://www.nomad-books.co.jp
主催:旅の本屋のまど
協力:朝日新聞出版
Posted by 下川裕治 at
12:00
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2015年02月16日
あまりに静かな統一展望台
久しぶりの国境だった。27年ぶり……というと、やはり考えてしまう。
先週、韓国にいた。東海岸の江陵。ここまで来れば、統一展望台まで行ってみたくなった。朝鮮戦争の後、韓国と北朝鮮の間に軍事停戦ラインが引かれた。北緯38度線だ。しかし東海岸では、そこより50キロほど北側にその線が引かれていた。韓国側の北端にあるのが、統一展望台だった。北朝鮮との国境線を眺める展望台。韓国の最北端でもある。
27年前、この展望台には、多くの韓国人がやってきていた。北朝鮮の眺め。それは彼らにとっては大きな関心だった。
当時、江陵の北にある束草の街から、展望台に向かうバスが頻繁に出ていた。非武装ラインの手前、2キロほどのところでいったんバスを降ろされた。名前を書き込み、1時間ほどのビデオを観なければならなかった。
クラブで遊ぶ若者やデモに参加する学生が映しだされ、その間にも、北朝鮮は非武装地帯に地下トンネルを掘っている……という内容だった。最後は、「統一」、「統一」という韓国語を叫ばなければいけなかった。韓国政府にしたら、自国を守る意識を鼓吹したかったのだろう。
それから27年……。その間に、北朝鮮も大きく変わった。なにしろ、当時はまだ、金日成が生きていた。その後、息子の金正日が指導者になり、いまはその息子の金正恩がその後を継いだ。
韓国も変わった。
僕は束草の観光案内所で、教えてくれた路線バスに乗った。1時間半ほどで終点に着いたのだが、その先まで行くバスはなかった。統一展望台まで10キロほどの距離があるという。そこまで行く韓国人は、ほとんどいなくなっていたのだ。路線バスの運転手がタクシーを呼んでくれた。
展望台の手前で韓国軍の検問があった。徴兵制で駆り出された兵士が警備していたのだが、緊張感はまるでなかった。若い兵士たちは冗談をいいあっている。
展望台も閑散としていた。眼下には非武装地帯が広がっていたが、そこには道路と鉄道が敷かれていた。いまはぎくしゃくとしているが、一時は韓国の工業団地が北朝鮮にあったのだ。
氷点下の風に吹かれながら、27年という年月の長さを教えられた。展望台の売店には、北朝鮮の物産や紙幣が売られていた。
日本にいると、拉致問題やミサイルの話ばかりが浮きたってしまうのだが、韓国人たちは、また別の文脈で北朝鮮をとらえていた。
大義に縛られるふたつの国だが、そこに暮らす人々の意識は変わりつつある。少なくとも、韓国人の非武装ラインへの関心は薄れ、風化してきている。本来ならそこから新しいベクトルが生まれるのだろうが、その気配は、若い韓国人からは感じられない。政治の時代が色褪せるということなのだろうか。
統一展望台はあまりに静かだった。
先週、韓国にいた。東海岸の江陵。ここまで来れば、統一展望台まで行ってみたくなった。朝鮮戦争の後、韓国と北朝鮮の間に軍事停戦ラインが引かれた。北緯38度線だ。しかし東海岸では、そこより50キロほど北側にその線が引かれていた。韓国側の北端にあるのが、統一展望台だった。北朝鮮との国境線を眺める展望台。韓国の最北端でもある。
27年前、この展望台には、多くの韓国人がやってきていた。北朝鮮の眺め。それは彼らにとっては大きな関心だった。
当時、江陵の北にある束草の街から、展望台に向かうバスが頻繁に出ていた。非武装ラインの手前、2キロほどのところでいったんバスを降ろされた。名前を書き込み、1時間ほどのビデオを観なければならなかった。
クラブで遊ぶ若者やデモに参加する学生が映しだされ、その間にも、北朝鮮は非武装地帯に地下トンネルを掘っている……という内容だった。最後は、「統一」、「統一」という韓国語を叫ばなければいけなかった。韓国政府にしたら、自国を守る意識を鼓吹したかったのだろう。
それから27年……。その間に、北朝鮮も大きく変わった。なにしろ、当時はまだ、金日成が生きていた。その後、息子の金正日が指導者になり、いまはその息子の金正恩がその後を継いだ。
韓国も変わった。
僕は束草の観光案内所で、教えてくれた路線バスに乗った。1時間半ほどで終点に着いたのだが、その先まで行くバスはなかった。統一展望台まで10キロほどの距離があるという。そこまで行く韓国人は、ほとんどいなくなっていたのだ。路線バスの運転手がタクシーを呼んでくれた。
展望台の手前で韓国軍の検問があった。徴兵制で駆り出された兵士が警備していたのだが、緊張感はまるでなかった。若い兵士たちは冗談をいいあっている。
展望台も閑散としていた。眼下には非武装地帯が広がっていたが、そこには道路と鉄道が敷かれていた。いまはぎくしゃくとしているが、一時は韓国の工業団地が北朝鮮にあったのだ。
氷点下の風に吹かれながら、27年という年月の長さを教えられた。展望台の売店には、北朝鮮の物産や紙幣が売られていた。
日本にいると、拉致問題やミサイルの話ばかりが浮きたってしまうのだが、韓国人たちは、また別の文脈で北朝鮮をとらえていた。
大義に縛られるふたつの国だが、そこに暮らす人々の意識は変わりつつある。少なくとも、韓国人の非武装ラインへの関心は薄れ、風化してきている。本来ならそこから新しいベクトルが生まれるのだろうが、その気配は、若い韓国人からは感じられない。政治の時代が色褪せるということなのだろうか。
統一展望台はあまりに静かだった。
Posted by 下川裕治 at
19:51
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2015年02月09日
【新刊プレゼント】週末香港・マカオでちょっとエキゾチック
下川裕治の新刊が発売されました。「週末香港・マカオでちょっとエキゾチック」という筆者にとっての香港とマカオをまとめた本です。
今回はこの本のプレゼントのご案内です。

週末香港・マカオでちょっとエキゾチック
「週末シリーズ」の『週末香港・マカオでちょっとエキゾチック』が発売になった。自分にとっての思い入れを綴った原稿を読んだ編集者は、「下川さんて、香港・マカオ好きなんですね」といわれた。
しかしいまの香港とマカオは、なかなか難しい場所に立たされている。
路上を占拠した学生たちが涙を流した香港、カジノ景気に沸くマカオ。
同時期に中国に返還されたふたつの街は対照的な顔を見せつつある。
そんなふたつの街のいまを書き込んだつもりだ。
◎ 本書の内容
香港での「僕」の居場所になった重慶大厦(チョンキン・マンション)、
香港の大衆食堂に出現する食の異空間、自由が足かせになった香港、中国の富を巧みにとり込むマカオ。
90年代にそれぞれイギリス、ポルトガルから返還された街は、中国と独特なバランスを保っている。
時代のうねりに翻弄され続けるふたつの街は、ちょっとディープな街歩きにちょうどいい。
新刊本「週末香港・マカオでちょっとエキゾチック」を、
抽選で"3名さま"にプレゼントします!
応募の条件は以下です。
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2015年2月28日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
お問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php
今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。
アマゾン:
週末香港 マカオでちょっとエキゾチック (朝日文庫)
今回はこの本のプレゼントのご案内です。
【新刊】

下川 裕治 / 阿部稔哉 写真
週末香港・マカオでちょっとエキゾチック
「週末シリーズ」の『週末香港・マカオでちょっとエキゾチック』が発売になった。自分にとっての思い入れを綴った原稿を読んだ編集者は、「下川さんて、香港・マカオ好きなんですね」といわれた。
しかしいまの香港とマカオは、なかなか難しい場所に立たされている。
路上を占拠した学生たちが涙を流した香港、カジノ景気に沸くマカオ。
同時期に中国に返還されたふたつの街は対照的な顔を見せつつある。
そんなふたつの街のいまを書き込んだつもりだ。
◎ 本書の内容
香港での「僕」の居場所になった重慶大厦(チョンキン・マンション)、
香港の大衆食堂に出現する食の異空間、自由が足かせになった香港、中国の富を巧みにとり込むマカオ。
90年代にそれぞれイギリス、ポルトガルから返還された街は、中国と独特なバランスを保っている。
時代のうねりに翻弄され続けるふたつの街は、ちょっとディープな街歩きにちょうどいい。
【プレゼント】
新刊本「週末香港・マカオでちょっとエキゾチック」を、
抽選で"3名さま"にプレゼントします!
応募の条件は以下です。
1.本を読んだ後に、レビューを書いてブログに載せてくれること。
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2015年2月28日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。

http://www.namjai.cc/inquiry.php
1.お問合せ用件「その他」を選んでください。
2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。
・お名前
・Eメールアドレス
・ブログURL(記事を掲載するブログ)
・郵送先住所
・お電話番号
・ご希望の書名(念のため記載ください)
2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。
・お名前
・Eメールアドレス
・ブログURL(記事を掲載するブログ)
・郵送先住所
・お電話番号
・ご希望の書名(念のため記載ください)
今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。

週末香港 マカオでちょっとエキゾチック (朝日文庫)
Posted by 下川裕治 at
14:00
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2015年02月09日
日本の政策は中国に似ている?
バンコクでホテル関係の仕事に就く知人の嘆きが聞こえてくる。
「日本人客が少ないんですよ。軍事政権になって、街の活気が減ったこともあるかもしれないけど、直接的には円安。1バーツ4円ですよ。これじゃ、誰だって海外旅行、考えちゃいますよ」
日本の旅行会社もかなり苦しい。
「デフレからインフレに移行させ、やがて給料に反映されるって政府はいうけど、海外旅行に再び行くようになるのはその先でしょ。そもそも給料に還元されるのかも不透明。強い日本になる前に腰砕けになるような気がしてしかたない」
海外に拠点を置いて働いていた知人も、ひとり、またひとりと帰国している。日本から受けとっているギャラが目減りし、生活が立ちゆかないのだという。「ちょうど頃合いかという思いもあってね」。その言葉には覇気がない。帰国を考えはじめたロングステイ組も多いという。
経済力のある日本の再現……。それをめざす政策のなかで、僕の周りで起きていることは、小さな日本への流れだった。産業界にはさまざまな収益構造があるが、海外からの情報を日本人に提供し、日本から収益を得ている人たちの間では、日本回帰の流れがはじまっていた。内に向かうベクトルである。国際的に強い日本を標榜していると政府はいうのだが、実際には島国に閉じこもっていくわけだ。
海外に飛び出していく……。その背後にあるのは、日本への不安だった。それを解消しようというのだから、内向きの動きが出てきて当然のことだった。
小さくまとまった日本。それが、いまの政権がめざしている方向のような気がしてしかたない。
僕にとっての香港とマカオをまとめた『週末香港・マカオでちょっとエキゾチック』という本が発売になった。本を書いている途中で、民主派や学生たちの路上占拠がはじまった。金鐘や旺角の路上に座り、学生たちと何回も話をした。はじめは要求する普通選挙の話だったが、しだいに彼らが内包する不満が顔をのぞかせた。
中国に返還されてから、香港の経済は停滞し、格差社会が広がっていった。そのなかでゼロから成功していく香港流のサクセスストーリーが影を潜めてしまった。学生たちの閉塞感はそのあたりにあった気がする。
その間にも、円安は続いていた。日本の政策が、返還後の香港とダブってしかたなかった。いまの日本の手法は、どこか香港を翻弄させた中国に似ている。それは結果なのかもしれないが、若者が抱く可能性という芽を押さえ込んでいく月日のようにも映るのだ。国の経済力と人の幸せは必ず一致するわけではない。そのあたりの感性が東アジアの空に渦巻いている。
「日本人客が少ないんですよ。軍事政権になって、街の活気が減ったこともあるかもしれないけど、直接的には円安。1バーツ4円ですよ。これじゃ、誰だって海外旅行、考えちゃいますよ」
日本の旅行会社もかなり苦しい。
「デフレからインフレに移行させ、やがて給料に反映されるって政府はいうけど、海外旅行に再び行くようになるのはその先でしょ。そもそも給料に還元されるのかも不透明。強い日本になる前に腰砕けになるような気がしてしかたない」
海外に拠点を置いて働いていた知人も、ひとり、またひとりと帰国している。日本から受けとっているギャラが目減りし、生活が立ちゆかないのだという。「ちょうど頃合いかという思いもあってね」。その言葉には覇気がない。帰国を考えはじめたロングステイ組も多いという。
経済力のある日本の再現……。それをめざす政策のなかで、僕の周りで起きていることは、小さな日本への流れだった。産業界にはさまざまな収益構造があるが、海外からの情報を日本人に提供し、日本から収益を得ている人たちの間では、日本回帰の流れがはじまっていた。内に向かうベクトルである。国際的に強い日本を標榜していると政府はいうのだが、実際には島国に閉じこもっていくわけだ。
海外に飛び出していく……。その背後にあるのは、日本への不安だった。それを解消しようというのだから、内向きの動きが出てきて当然のことだった。
小さくまとまった日本。それが、いまの政権がめざしている方向のような気がしてしかたない。
僕にとっての香港とマカオをまとめた『週末香港・マカオでちょっとエキゾチック』という本が発売になった。本を書いている途中で、民主派や学生たちの路上占拠がはじまった。金鐘や旺角の路上に座り、学生たちと何回も話をした。はじめは要求する普通選挙の話だったが、しだいに彼らが内包する不満が顔をのぞかせた。
中国に返還されてから、香港の経済は停滞し、格差社会が広がっていった。そのなかでゼロから成功していく香港流のサクセスストーリーが影を潜めてしまった。学生たちの閉塞感はそのあたりにあった気がする。
その間にも、円安は続いていた。日本の政策が、返還後の香港とダブってしかたなかった。いまの日本の手法は、どこか香港を翻弄させた中国に似ている。それは結果なのかもしれないが、若者が抱く可能性という芽を押さえ込んでいく月日のようにも映るのだ。国の経済力と人の幸せは必ず一致するわけではない。そのあたりの感性が東アジアの空に渦巻いている。
Posted by 下川裕治 at
12:00
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