2015年04月27日
地雷を踏んだ女性たち
ソウルにいる。昨日、ビッグバンというKポップのアイドルグループのコンサートを観にいってきた。コンサートを観たわけではない。コンサートにやってくる人を見にいってきたといったほうが正確だろう。
ビッグバンというグループは、韓国人男性5人組みのユニットである。
だいたい、このアイドルグループのコンサートチケットは、そう簡単に手にできない。ファンクラブに入らないと入手は難しいといわれる。当日券もあるが、3分で売り切れてしまうという。
会場はソウル郊外にあるオリンピックスタジアムだった。その近くにあるカフェに入った。混みあっていて、屋外席に座った。ぼんやり眺めていると、店の前に長い列ができていたった。女性ばかりだ。その数、200人から300人。ダフ屋からチケットを買う人たちだろうか、とも思った。しかし列の先頭のところにはテーブルが出され、そこに女性を含めたスタッフが3人いる。ダフ屋の雰囲気ではない。
スタッフの声が聞こえてきた。
「○○さんですね」
日本語だった。名簿にチェックをし、チケットを渡し、代金を受けとっている。
ひょっとしたら……。列をつくる女性に訊いてみた。皆、日本人だった。サイトでチケットを申込み、ここで受けとるのだという。1枚21万ウオン。日本円にすると、2万円ほどだろうか。
Kポップのアイドルのコンサートに、やってくる日本人がいると聞いていた。その姿を見ることが目的でもあったのだが、その列が目の前にできていた。多くはその日の飛行機でやってきて、明日、日本に戻るという。目的はコンサートだけなのだ。
会場の入り口に向かった。席ごとに並び、順番に入っていく。会場は2万人を収容するという。もちろんチケットは完売である。入口ではマイクから日本語が響く。
「この先でチケットを見せてください」
まるで日本だった。入口で見ていた感覚では、3~4割は日本人女性だった。5000人以上の日本人がやってきたことになる。皆、手には花をあしらったペンライト。これがお決まりらしい。
『冬のソナタ』からはじまった韓流はいま、Kポップだという。その場を見せられると、言葉を失うのだ。
Kポップは地雷だという。ここに集まる日本人は、地雷を踏んでしまった女性たちなのだ。
「踏んじゃった?」
そんな会話が彼女たちの間で交わされ、気がつくとソウルまでやってくるようになる。やはり言葉を失うのだ、
ビッグバンというグループは、韓国人男性5人組みのユニットである。
だいたい、このアイドルグループのコンサートチケットは、そう簡単に手にできない。ファンクラブに入らないと入手は難しいといわれる。当日券もあるが、3分で売り切れてしまうという。
会場はソウル郊外にあるオリンピックスタジアムだった。その近くにあるカフェに入った。混みあっていて、屋外席に座った。ぼんやり眺めていると、店の前に長い列ができていたった。女性ばかりだ。その数、200人から300人。ダフ屋からチケットを買う人たちだろうか、とも思った。しかし列の先頭のところにはテーブルが出され、そこに女性を含めたスタッフが3人いる。ダフ屋の雰囲気ではない。
スタッフの声が聞こえてきた。
「○○さんですね」
日本語だった。名簿にチェックをし、チケットを渡し、代金を受けとっている。
ひょっとしたら……。列をつくる女性に訊いてみた。皆、日本人だった。サイトでチケットを申込み、ここで受けとるのだという。1枚21万ウオン。日本円にすると、2万円ほどだろうか。
Kポップのアイドルのコンサートに、やってくる日本人がいると聞いていた。その姿を見ることが目的でもあったのだが、その列が目の前にできていた。多くはその日の飛行機でやってきて、明日、日本に戻るという。目的はコンサートだけなのだ。
会場の入り口に向かった。席ごとに並び、順番に入っていく。会場は2万人を収容するという。もちろんチケットは完売である。入口ではマイクから日本語が響く。
「この先でチケットを見せてください」
まるで日本だった。入口で見ていた感覚では、3~4割は日本人女性だった。5000人以上の日本人がやってきたことになる。皆、手には花をあしらったペンライト。これがお決まりらしい。
『冬のソナタ』からはじまった韓流はいま、Kポップだという。その場を見せられると、言葉を失うのだ。
Kポップは地雷だという。ここに集まる日本人は、地雷を踏んでしまった女性たちなのだ。
「踏んじゃった?」
そんな会話が彼女たちの間で交わされ、気がつくとソウルまでやってくるようになる。やはり言葉を失うのだ、
Posted by 下川裕治 at
14:15
│Comments(1)
2015年04月21日
【イベント告知】スライド&トークイベント「東南アジアの裏国境越え紀行」
旅の本屋のまどから、下川裕治のスライド&トークイベントのお知らせです。
新刊『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』(新潮文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、東南アジアの裏国境越えの旅の魅力について、スライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。
超過酷なユーラシア大陸を横断する鉄道旅や格安エアラインで世界一周した下川さんが今回挑戦したのは東南アジアの「マイナー国境」をひたすら越える旅。自他共に認める「国境好き」ならではの嗅覚でタイのバンコクからカンボジア、ベトナムを経てラオス、そして最大の難関ミャンマーへ、手に汗握るインドシナ裏道紀行になっています。
旅の途中でおんぼろバスがブレーキ不能で転倒するなど、様々な困難や試練を味わった下川さんの貴重な東南アジア裏国境情報が聞けるはずです。
下川ファンの方はもちろん、国境フェチの方や東南アジア周遊旅に興味のある方はぜひご参加ください!
※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。
-------------------------------
*会場にて新刊「『裏国境』突破 東南アジア一周大作戦」をはじめ、下川裕治さんの著作や東南アジア関連の著者を販売します!
【開催日時】
5月15日(金) 19:30 ~ (開場19:00)
【参加費】900円
※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】旅の本屋のまど店内
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1階
【申込み・問い合わせ】
お電話、ファックス、e-mail、店頭にてお申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせて頂きます。
主催:旅の本屋のまど
協力:新潮社
-------------------------------
新刊『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』(新潮文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、東南アジアの裏国境越えの旅の魅力について、スライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。
超過酷なユーラシア大陸を横断する鉄道旅や格安エアラインで世界一周した下川さんが今回挑戦したのは東南アジアの「マイナー国境」をひたすら越える旅。自他共に認める「国境好き」ならではの嗅覚でタイのバンコクからカンボジア、ベトナムを経てラオス、そして最大の難関ミャンマーへ、手に汗握るインドシナ裏道紀行になっています。
旅の途中でおんぼろバスがブレーキ不能で転倒するなど、様々な困難や試練を味わった下川さんの貴重な東南アジア裏国境情報が聞けるはずです。
下川ファンの方はもちろん、国境フェチの方や東南アジア周遊旅に興味のある方はぜひご参加ください!
※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。
-------------------------------
*会場にて新刊「『裏国境』突破 東南アジア一周大作戦」をはじめ、下川裕治さんの著作や東南アジア関連の著者を販売します!
【開催日時】
5月15日(金) 19:30 ~ (開場19:00)
【参加費】900円
※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】旅の本屋のまど店内
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1階
【申込み・問い合わせ】
お電話、ファックス、e-mail、店頭にてお申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせて頂きます。
主催:旅の本屋のまど
協力:新潮社
-------------------------------
Posted by 下川裕治 at
16:11
│Comments(0)
2015年04月21日
日本人がきても草木も生えない?
台北でひとりの広告マンと会った。日本人である。彼は台北にいて、日本で販売されるガイドブックや雑誌に載せる広告をとっている。彼がいうには、日本のガイドブックや雑誌への広告は苦戦続きだという。
「日本人の客は少なくないんです。でも、お金を落とさない。フカヒレ店でも、日本人はすぐに、『シェアできないか』と訊くっていうんです。そこにいくと……」
円安のなか、海外への渡航者は減少傾向だという。しかし台湾へ観光に出かける日本人は、それほど減っていない。海外を紹介する本を見ても、台湾の本が多い。
ある出版社の人がこういっていた。
「台湾の本が売れるわけじゃないんですが、ほかが売れないので、台湾の本を出すしかないんです」
その台湾で広告がとれないという。
同じような話を、昔、ギリシャで聞いたことがある。夏になると、ヨーロッパから多くの観光客がギリシャにやってくる。
「ドイツ人はもう徹底して節約です。ドイツから車を運転してやってくるんですが、そこにパンやハム、ワインなど、大量の食糧を積んでいる。それを食べながらギリシャで過ごすから、ほんと、お金を落とさない。ギリシャでは、『ドイツ人がやってきても草木も生えない』っていわれているんです」
それと同じような感覚を、台湾の人々はもちはじめているらしい。『日本人がやってきても草木も生えない』……と。
台湾人はどうしても、大挙してやってくる中国人と比べてしまう。彼らの金の使い方は派手だ。高級なフカヒレもどんどん注文してくれる。それに比べると……ということになってしまうのだ。
日本人のなかには、反発する人もいるのだろうが、やはり事実だろうと思う。日本経済には、かつてのような勢いはない。それは構造的なことだから、なかなか好転はしない。そしてアベノミクスのなかで、円安に動いている。いまの円安は政策的な要素が強く、日本人の意識のなかに、好景気の感覚はまだないのだ。景気が好転する実感がなく、円安となれば、財布のひもはますます、固く閉じられてしまう。フカヒレは食べたいが、シェアしてなんとか、と考えてしまう。
僕は昔から、節約歩調で旅を続けてきた。ビンボー旅行である。しかしそれは、金をどんどん使ってくれる日本人の恩恵を受けながらの旅でもあった。
「日本人は皆、飛行機に乗るのに、おまえはバスか」
こんな言葉を何回聞いてきただろう。
いまさら、旅のスタイルを変えるつもりはない。もう体に染みついてしまっている。こんな旅人にも、これから、風あたりは強くなっていくのだろうか。
「日本人の客は少なくないんです。でも、お金を落とさない。フカヒレ店でも、日本人はすぐに、『シェアできないか』と訊くっていうんです。そこにいくと……」
円安のなか、海外への渡航者は減少傾向だという。しかし台湾へ観光に出かける日本人は、それほど減っていない。海外を紹介する本を見ても、台湾の本が多い。
ある出版社の人がこういっていた。
「台湾の本が売れるわけじゃないんですが、ほかが売れないので、台湾の本を出すしかないんです」
その台湾で広告がとれないという。
同じような話を、昔、ギリシャで聞いたことがある。夏になると、ヨーロッパから多くの観光客がギリシャにやってくる。
「ドイツ人はもう徹底して節約です。ドイツから車を運転してやってくるんですが、そこにパンやハム、ワインなど、大量の食糧を積んでいる。それを食べながらギリシャで過ごすから、ほんと、お金を落とさない。ギリシャでは、『ドイツ人がやってきても草木も生えない』っていわれているんです」
それと同じような感覚を、台湾の人々はもちはじめているらしい。『日本人がやってきても草木も生えない』……と。
台湾人はどうしても、大挙してやってくる中国人と比べてしまう。彼らの金の使い方は派手だ。高級なフカヒレもどんどん注文してくれる。それに比べると……ということになってしまうのだ。
日本人のなかには、反発する人もいるのだろうが、やはり事実だろうと思う。日本経済には、かつてのような勢いはない。それは構造的なことだから、なかなか好転はしない。そしてアベノミクスのなかで、円安に動いている。いまの円安は政策的な要素が強く、日本人の意識のなかに、好景気の感覚はまだないのだ。景気が好転する実感がなく、円安となれば、財布のひもはますます、固く閉じられてしまう。フカヒレは食べたいが、シェアしてなんとか、と考えてしまう。
僕は昔から、節約歩調で旅を続けてきた。ビンボー旅行である。しかしそれは、金をどんどん使ってくれる日本人の恩恵を受けながらの旅でもあった。
「日本人は皆、飛行機に乗るのに、おまえはバスか」
こんな言葉を何回聞いてきただろう。
いまさら、旅のスタイルを変えるつもりはない。もう体に染みついてしまっている。こんな旅人にも、これから、風あたりは強くなっていくのだろうか。
Posted by 下川裕治 at
15:59
│Comments(0)
2015年04月13日
【新刊プレゼント】「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦
またまた下川裕治の新刊が発売されました。
『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』という、「マイナー国境」をひたすら越える旅をつづる本です。
今回はこの本のプレゼントのご案内です。
下川裕治/著
「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦
(新潮文庫)
◎ 本書の内容
外国人でも自由に通ることができる国境が増えている。これを機に「国境好き」を自負する著者は「マイナー国境」をひたすら越える旅に出た。タイのバンコクからカンボジア、ベトナムを経てラオス、そして最大の難関はやはりミャンマーだった。バスに乗ることができずに引き換えし、再度入国した山道では、おんぼろバス がブレーキ不能で横転してしまう。手に汗握るインドシナ裏道巡り。
新刊本『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』を、
抽選で"3名さま"にプレゼントします!
応募の条件は以下です。
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2015年4月30日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
お問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php
今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。
アマゾン:
「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦 (新潮文庫)
『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』という、「マイナー国境」をひたすら越える旅をつづる本です。
今回はこの本のプレゼントのご案内です。
【新刊】
下川裕治/著
「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦
(新潮文庫)
◎ 本書の内容
外国人でも自由に通ることができる国境が増えている。これを機に「国境好き」を自負する著者は「マイナー国境」をひたすら越える旅に出た。タイのバンコクからカンボジア、ベトナムを経てラオス、そして最大の難関はやはりミャンマーだった。バスに乗ることができずに引き換えし、再度入国した山道では、おんぼろバス がブレーキ不能で横転してしまう。手に汗握るインドシナ裏道巡り。
【プレゼント】
新刊本『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』を、
抽選で"3名さま"にプレゼントします!
応募の条件は以下です。
1.本を読んだ後に、レビューを書いてブログに載せてくれること。
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2015年4月30日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
お問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php
1.お問合せ用件「その他」を選んでください。
2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。
・お名前
・Eメールアドレス
・ブログURL(記事を掲載するブログ)
・郵送先住所
・お電話番号
・ご希望の書名(念のため記載ください)
2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。
・お名前
・Eメールアドレス
・ブログURL(記事を掲載するブログ)
・郵送先住所
・お電話番号
・ご希望の書名(念のため記載ください)
今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。
アマゾン:
「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦 (新潮文庫)
Posted by 下川裕治 at
20:04
│Comments(1)
2015年04月13日
目覚まし役がいなくなってしまった
日本では4月1日から、体制が変わることが少なくない。新年度というわけだ。4月2日に台湾に向かった。乗ったのはシンガポールを拠点にするLCCのスクート。搭乗手続きは、成田空港の第2ターミナルだった。
成田空港に行くとき、僕はいつも、東京駅と成田空港を結ぶ格安バスを使う。このバスに乗ると、空港の手前でセキュリティチェックがあった。パスポートや免許証を提示しなくてはならなかった。
これはバスに限らず、電車で行くときも受けなくてはならないチェックだった。これが4月1日から廃止された。
このセキュリティチェックは、形骸化していた。一度、成田空港から国内線LCCで沖縄に向かったことがあった。国内だからと、パスポートを持参しなかった。僕は運転免許をもっていないから、免許証もない。するとセキュリティチェックの職員からクレジットカードの提示を求められた。そして、こういわれた。
「お名前を教えてください」
自分の名前を伝えるとチェックは終わってしまった。この程度だったのだ。そもそも羽田空港はこのチェックがない。一貫性にも欠けていた。
成田空港が開港したとき、反対派の学生が乱入して機能が止まったときがあった。そのためのチェックのような気がした。
「いや、利権ですよ」
空港に詳しい知人が教えてくれた。
このチェックがなくなった。
歓迎すべきだった。行政の無駄だったからだ。しかし僕は少し困った。
起こしてくれる人がいなくなってしまったのだ。
海外に向かう前は仕事がたてこむ。LCCは早朝便も多い。寝不足状態で、成田空港に向かうことは多かった。当然、バスのなかで寝込んでしまう。
空港に向かう格安バスは第2ターミナルに停車し、次いで第1ターミナルに向かう。第1ターミナルは終点だから、心置きなく眠ることができた。泥のように寝込んでいても、運転手さんが起こしてくれるという甘えがあった。しかし問題は第2ターミナルだった。寝過ごしてしまう可能性があった。
それを防いでくれたのが、セキュリティチェックだったのだ。チェックを担当する方には申し訳ないが、僕にとっては貴重な目覚ましだったのだ。これまで何回、彼らに起こされたことだろうか。
さて、これからどうしようか。携帯電話の目覚ましをセットして、バスに乗らなくてはいけなくなる。
海外に出向く前に、またやることが増えてしまった。
成田空港に行くとき、僕はいつも、東京駅と成田空港を結ぶ格安バスを使う。このバスに乗ると、空港の手前でセキュリティチェックがあった。パスポートや免許証を提示しなくてはならなかった。
これはバスに限らず、電車で行くときも受けなくてはならないチェックだった。これが4月1日から廃止された。
このセキュリティチェックは、形骸化していた。一度、成田空港から国内線LCCで沖縄に向かったことがあった。国内だからと、パスポートを持参しなかった。僕は運転免許をもっていないから、免許証もない。するとセキュリティチェックの職員からクレジットカードの提示を求められた。そして、こういわれた。
「お名前を教えてください」
自分の名前を伝えるとチェックは終わってしまった。この程度だったのだ。そもそも羽田空港はこのチェックがない。一貫性にも欠けていた。
成田空港が開港したとき、反対派の学生が乱入して機能が止まったときがあった。そのためのチェックのような気がした。
「いや、利権ですよ」
空港に詳しい知人が教えてくれた。
このチェックがなくなった。
歓迎すべきだった。行政の無駄だったからだ。しかし僕は少し困った。
起こしてくれる人がいなくなってしまったのだ。
海外に向かう前は仕事がたてこむ。LCCは早朝便も多い。寝不足状態で、成田空港に向かうことは多かった。当然、バスのなかで寝込んでしまう。
空港に向かう格安バスは第2ターミナルに停車し、次いで第1ターミナルに向かう。第1ターミナルは終点だから、心置きなく眠ることができた。泥のように寝込んでいても、運転手さんが起こしてくれるという甘えがあった。しかし問題は第2ターミナルだった。寝過ごしてしまう可能性があった。
それを防いでくれたのが、セキュリティチェックだったのだ。チェックを担当する方には申し訳ないが、僕にとっては貴重な目覚ましだったのだ。これまで何回、彼らに起こされたことだろうか。
さて、これからどうしようか。携帯電話の目覚ましをセットして、バスに乗らなくてはいけなくなる。
海外に出向く前に、またやることが増えてしまった。
Posted by 下川裕治 at
19:55
│Comments(0)