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ナムジャイブログ

2017年07月31日

シムフリースマホとLCC

 先日、講演会があった。『シニアひとり旅 バックパッカーのすすめ』(平凡社新書)の発売を記念したものだった。
 会場は東京の西荻窪にある『のまど』という書店である。本の内容もあり、できるだけシニアの人に集まってほしいという告知をした。40人を超える人たちが集まってくれた。
 その人たちに訊きたいことがあった。スマホについてだった。「携帯ではなく、スマホを使っている人」という問いかけに9割ほどの人が手を挙げた。続いて、「シムフリーのスマホの人」と訊くと、3人だけになってしまった。
 おそらく、これが、日本の割合なのだろう。日本人の多くは、シムフリーの外側でスマホを使っている。
 僕はシムフリーのスマホ派だ。しかし通信機器については詳しくはない。タイ在住の知人が、「もう使わないから」と古いモデルのスマホを安く譲ってくれたことがきっかけでいまの機種になっただけだった。
 海外に出る機会が多くなければ、僕はいまもシムロックされたスマホを使っている気がする。
 シムフリーは、海外に出たとき、その威力を発揮する。ひとつの国に入国し、空港でその国のシムカードを入れてもらうと、スマホは日本で使っていた状態になる。さまざまな情報を日本語で検索できるようになる。アジアはそのシム代も安い。1週間で1000円ほどの国が多い。そんな時代の恩恵を、日本人の多くが受けていないことになる。
 海外から日本にやってくる人の多くが、シムフリーの機械をもっている。日本と違い、海外ではシムフリーが基本だからだ。彼らは、自分の言葉で情報を得、困ると翻訳機能を使って日本人に訊く。僕も2回ほど、外国人の旅行者からスマホの画面を見せられている。ひとりは中国人、もうひとりはマレーシア人だった。翻訳機能は満足ではなかったが意図はわかった。
 アジアを見ていると、海外旅行のハードルを低くしているのが、シムフリーのスマホとLCCという気がする。外国へ行っても本国とインターネット電話でつながり、現地の情報も自分の言葉で得ることができるスマホの存在は大きい。中国人旅行者からスマホをとりあげると、多くの人が困りはててしまう気がする。
 日本にやってくる外国人が急増している理由のひとつがスマホという気がしないでもない。翻って日本人。海外旅行が盛りあがらないのは、多くの人がシムフリーの世界を知らないからのような気もするのだ。
 日本でシムフリーを制限してきた通信会社の弊害は少なくない。ガラケーと揶揄された日本の通信構造は、いまだ変わっていない。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=世界の長距離列車の旅。シベリア鉄道を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。難関のミャンマーの列車旅が続く。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
  

Posted by 下川裕治 at 12:49Comments(2)

2017年07月24日

薬を飲みはじめるとき

 10日ほど日本を離れて帰国した。はじめに郵便物の整理することが多いのだが、今回はその中に、3通の退職通知があった。定年である。僕の知人も60歳を超え、そういう節目を迎えつつあるようだ。
 1ヵ月ほど前、親しくしている知人も定年を迎えた。
「40年以上勤めた会社なんだけど、意外と感慨はなかった。こんなもんかって感じ」
 そういうものだろうか。定年通知には、近況も書き添えられている。父親の介護という奴もいる。アジアに旅に出ると書いてあるはがきもあった。
 定年というものがない職業だから、どこか羨ましい思いもある。強制的に節目を迎えるわけで、それはシステムとはいえ、心を軽くしてくれそうな気がする。
 定年を迎えたしばらく経った知人と会うことがある。個人差はあるが、一気に言葉に鋭さがなくなる気がする。世間話にキレがないというか、凡庸な会話になるというか……。やはり、緊張の糸が切れたのだろう。彼らにとって会社とは、それほどの存在だったのかと思う。
 困るのは約束を忘れることだ。そしてメールを最後まで読まなくなる。まあ、定年になったのだから、しかたのないことなのだろうか。僕は相変わらず仕事に追われている。どことなくテンションが合わなくなってくる自分を感じてしまう。
 日本の中ではサラリーマンは多数派である。彼らに合わせて生きていかないといけないのだろうが、定年を迎えてしまうと、そのあたりが曖昧になってしまう。
 僕は不整脈という持病があって、2ヵ月に1度ぐらいの割合で病院に通っている。脈が不規則で、間隔が開いたときに血栓ができやすい。それを防ぐためにワルファリンという薬を飲んでいるのだが、その効果を定期的に血液検査で調べなくてはならないのだ。同時に様々な数値が出てくる。尿酸値、血糖値、コレステロール……。先日の検診のときに医師からこう訊かれた。
「下川さんは何歳まで働くつもりです?」
 唐突に訊かれても困る質問だ。
「いや、LDLの値が少しずつ高くなってきている。治療っていうレベルじゃないけど仕事を続けると、どうしてもね。海外に行くと食べ物の管理も難しいし。まだまだ働くつもりなら、予防薬を飲んだ方がいいかもしれません。まあ、考え方ですが。薬に頼らず頑張る人もいますから」
 LDLは悪玉コレステロールといわれるものだ。この数値は、さげておいたほうがいい。仕事がなければ、食事の管理などもできるが、僕のように海外ばかり歩いていると……。
 薬を飲むことになるんだろうなぁ。病院からの帰り道で呟いていた。

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○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
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Posted by 下川裕治 at 11:28Comments(2)

2017年07月17日

頑固な旅人になる

『シニアひとり旅バックパッカーのすすめ』(平凡社新書)が発売になった。その前に日本を離れてしまったので、僕自身、まだ本は見ていない。
 僕は63歳になったから十分にシニアだ。この年齢になり、続けるアジア旅のなかから、シニアの旅のエッセンスを書き込んだつもりでいる。
 発刊前、タイトルを考えた。対象はシニアだが、出版界には、「シニア向けの本にシニアというタイトルをつけても売れない」という不文律のようなものがある。ダイエット本に、「肥満」とか「デブ」といった言葉を使わないことと同じ論理だ。太っている人は、書店で手にとれないからだ。
 シニアといわれる人は、まだまだ若いと思っていて、シニアといわれるのを嫌う傾向があるのだろう。
 そこで僕が考えたのは、「妻を棄てて旅に出よう」だった。寺山修司の『書を捨てよ、町にでよう』のもじりだった。言下に編集者から却下されたが。紆余曲折を経て、タイトルにシニアを入れることになった。シニアの人口が増え、そういわれても気にしない人が増えたという判断もある。書店よりネットで購入する人も多いという要素も加味されたのだろうか。
 時間に余裕ができ、男性のシニアは旅を考える。そこでガイドという流れになるが、僕はその発想を変えたほうがいいと思う。ガイドブックの大半はシニアを対象につくられていないからだ。さらに、日本のガイドブックは、女性向けに編集されている。男はガイドブックを読まないということではなく、旅の主導権は女性にあるからだ。その流れができた後で、ネット系のガイドが登場する。その手法も女性向けに染まっている。旅のブログのスタイルもその影響を受けている。
 しかし男性シニアには、人生を生きてきた自負がある。尊厳といってもいいだろうか。その思いに、流布している旅情報はそぐわない気がする。もちろん女性のシニアも人生を生きてきた。しかし女性には、旅情報を咀嚼する柔軟性があるように思う。そこへいくと多くの男性シニアはだめなのだ。つまり頑固なのだと思う。
 頑固を自認するしかない。自分の好みを抑えて、旅情報に迎合したところで、疎外感を味わうだけだ。ガイドブックに載っている有名店で、所在なげに座る男性シニアの姿を何回も見てきた。
 自分の旅をつくるしかないと思う。そのぐらいのエネルギーはあるはずだ。旅を自分たちのものにしなくてはいけないと思う。
 その助けになれば……と書き込んできたつもりだが、はたしてうまくいっているかどうか……。

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Posted by 下川裕治 at 11:21Comments(1)

2017年07月10日

湿気の国

 4日ほど前、ロサンゼルスから東京に戻った。ソウル経由の長いフライトだった。成田空港に着き、東京駅に向かうバスに乗るためにターミナルを出た。
 重い湿気に包まれた。
「うッ」
 思わず立ち止まってしまった。しかし安堵もある。水を得た魚ということだろうか。体や衣類、荷物……すべてが一気に水分を吸い込みはじめるような感覚がある。
 アメリカの西海岸は、悔しいぐらいに乾燥している。シカゴから列車に乗り、ミズーリ―州を南下し、テキサス州、アリゾナ州を横切って西海岸に出た。アリゾナの砂漠は、思った以上に蒸し暑かった。ところが列車が海に近づくにつれ、気温と湿度がさがっていった。乾いた空気と明るい太陽。ロサンゼルスの気候はやはりいい。日本人が抱くアメリアのイメージも、この西海岸で育っていった。コーラは西海岸で飲むとやけに体に染みる。
 しかし西海岸の気候は疲れも呼ぶ。もともと明るくもない人間が、無駄な明るさを強いられている感覚といったらいいだろうか。
 そこから太平洋を渡る。アジアのモンスーン気候のなかに入ってくる。湿度が急に高くなる。日本は梅雨のただなかだった。
 湿気……。西海岸生まれのアメリカ人が日本に暮らすようになり、皮膚にカビが生えてしまったという話を聞いたことがある。しかしその反対に、かさかさに乾いてしまった肌に水分を与えようと日本にやってくるロサンゼルスの人もいるという。
 週末、九州の別府に出かけた。前から決まっていた仕事だった。九州北部は豪雨に見舞われ、犠牲者が出ていた。こんな時期に……と思ったが、「こちらは大丈夫ですから」といいわれた。
 別府は鉄輪に泊まった。温泉地帯である。街のそこかしこから湯気が噴出している。道を歩くと、湯気に煽られる。加えて雨空。湿度はきっと90パーセントを超えていたかもしれない。
 湿気の国……。いまの時期の日本は、そんな表現がぴったりくる。
 かつて別府のイメージを変えるプロジェクトに協力したことがある。団体客を頼りにしていた別府は、女性客をターゲットにした湯布院に押されていた。団体客の減少も別府に危機感を生んでいた。
 韓国や中国からの観光客の増加は、別府を救ったが、最近はその数にも陰りが見えてきてもいるという。日本一の温泉には、日本の観光業を牽引する遺伝子が組み込まれているようにも思う。別府の知人たちは、湯布院スタイルの先を標榜する。
「そのキーワードは湿気?」
 湯気が勢いよく出る噴出音が聞こえる宿でそんなことを考えてもいた。

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Posted by 下川裕治 at 12:08Comments(1)

2017年07月06日

【新刊プレゼント】『シニアひとり旅 バックパッカーのすすめ』

下川裕治の新刊発売に伴う、プレゼントのお知らせです。今回は、アジアが舞台です。

【新刊】





下川裕治 (著)


『シニアひとり旅 バックパッカーのすすめ アジア編』(平凡社新書)


◎ 本書の内容

シニアの旅には専用のガイドブックもない。女性や若者向けの旅情報は、やはりシニアにはしっくりとこない。シニアには人生の経験がある。その旅は、若い人とはひと味も、ふた味も違うはず。そんななかで、どうシニアはひとり旅をしていくか。シニア風のバックパッカー旅をしていくか。さまざまなアジアの旅のなかから、シニア向けの旅の目的地を考え、シニアならではの旅を考えていく。巻末にはシニア向けのホテルや、航空券の選び方も紹介している。

【プレゼント】


新刊本『シニアひとり旅 バックパッカーのすすめ アジア編』を、

抽選で"3名さま"にプレゼントします!

応募の条件は以下です。

1.本を読んだ後に、レビューを書いてブログに載せてくれること。
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)

応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2017年7月25日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。

えんぴつお問合せフォーム
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Posted by 下川裕治 at 16:00Comments(0)