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ナムジャイブログ

2017年08月07日

労作というしかない本

 自分でいうのもなんだが、労作である。タイとミャンマーの鉄道に乗った『東南アジア全鉄道制覇の旅』(双葉文庫)のタイ・ミャンマー迷走編が発売になった。
 この本の話は、かれこれ2年前に決まったのだが、なかなか発刊まで漕ぎつくことができなかった。のんきに構えていたわけではない。毎月のように、東南アジアの列車に乗っていた。しかし僕はとんでもなく甘かった。いくら乗っても、なかなか未乗車区間は減らなかったのだ。
 元凶はミャンマーだった。この国の鉄道はすべてミャンマー国鉄が運行している。しかしヤンゴンの本部が、全国の鉄道の運行状況を把握していないということが躓きのはじまりだった。本書には、ミャンマー国鉄の運休区間も表示した路線図が掲載されているが、おそらく、本の形で提示されたのは世界初ではないかと思う。ミャンマー国鉄から褒めてもらってもいい路線図なのだが、彼らはそんな路線図になんの興味もないこともわかっている。
「日本人は不思議なことをする人たちなんですねェ」
 と甘いミルクティーを飲みながら眺めるのだろう。僕自身もこの路線図に胸を張れるわけではない。その理由は本書を読めばわかってもらえると思うが、まだ、どこかに老朽化した列車が、自転車に追い抜かれる速度で走っている可能性がある。思わぬところに線路が潜んでいる……。それがミャンマーという国だった。
 足かけ2年をかけて、列車に乗ったのだが、なんとも虚しい思いで本の発行になった。達成感もない。酔狂な列車旅といえばそれまでなのかもしれないが、それにしたらあまりに大変な旅だった。仕事はたくさん溜まっているというのに、どうしてこんなに遅い列車に毎日揺られているのだろうか……。唇を噛みながらの列車旅だった。なかなか乗り終えることができない焦り。暑くなる前に乗り切ってしまおうという目算はみごとに裏切られ、温度が50度にも達する車内で、ただ耐え続けていた。旅はあまりに非効率で、カメラマンに同行してもらうのも忍びなく、ミャンマーの鉄道の半分以上はひとりで乗った。
 60歳をすぎてする旅か……と自分自身思うのだが、隘路を抜け出すには、ただ、ただ列車に乗るしかなかった。
 この旅はまだ続いている。東南アジアは広く、カンボジアやインドネシアなど、まだ多くの未乗車路線が残っている。それが続編ということになるのだが、その旅が来月からはじまる。
 どうしてこんなことになってしまったのだろうか。自分で労作だというしか言葉がないのだ。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=世界の長距離列車の旅。シベリア鉄道を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。難関のミャンマーの列車旅が続く。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
  

Posted by 下川裕治 at 11:29Comments(3)