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ナムジャイブログ

2018年03月26日

桜が咲いた

 老いというものは、こうしてやってくるのだろうか。
 1ヵ月前、アジアから飛行機で帰った。その足で名古屋に向かい、そこから信州の実家に寄って東京に戻った。飛行機、そして列車と乗り続けたが、いままでの僕の旅を考えれば、過酷というわけではない。
 ところがその翌日、腰に痛みを覚えた。歩くことができないほどではないが、椅子に座り、階段をのぼると痛みが走る。
 家の近くにある整形外科医に行った。レントゲンを撮ってもらった。骨に異常はなかった。「疲れでしょう」という診断だった。
 コルセットを買い、それをはめることにした。それから数日が経ち、腰の痛みはすっかり消えた。
 そして今月。同じようにアジアから飛行機で帰国した。関空に着き、列車で名古屋へ。そこから実家に寄って東京に帰った。その翌日、まったく同じ痛みを、腰が訴えた。おそらく疲れだろう。コルセットを再びとり出し、腰に巻いた。それから今日で6日。前回と同じように腰の痛みは引きつつある。
 何人かの知人に訊いてみた。皆、待ってました……とばかりに、腰痛談義をはじめる。僕の周りに、これほど腰痛もちがいたことが意外だった。そして皆、腰の痛みから救ってくれた鍼灸医を紹介してくれる。
「それにしても、下川さんがこれまで腰痛をまったく知らないってことのほうが不思議ですよ。あれだけ過酷な列車やバスに乗っているというのに」
 そういわれても困るが、たしかにこれまで腰痛とは縁がなかった。
 4月に入ると、中国のカシュガルから天山山脈を越え、キルギスタン、ウズベキスタンをまわる旅が待っている。どんな乗り物になるのかもわからない。その旅の前に不安が脳裡をよぎる。どこかで鍼を打ってもらったほうがいいのだろうか。しかし前回同様、腰の痛みは日に日に消えていく。
 迷っているうちに、風邪を引いてしまった。いまの日本は季節の変わり目だ。気温がかなり変動する。初夏のような日射しの翌日に真冬に戻ったりする。
 寒気がし、頭も重い。今回は吐き気も少しある。子供の頃、よく風邪を引いた。30歳をすぎた頃から、なぜか風邪を引かなくなってきた。最近、子供の頃の体質に戻ってしまったのだろうか。
 いま、東京の桜は満開である。妻や娘たちは、近くの公園に花見に出かけた。僕ときたら、首にタオルを巻き、布団にくるまっている。
 部屋から近くの教会の桜の木が見える。
 満開である。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=カンボジアの旅はそろそろ終盤。来週から玄奘三蔵の旅がはじまります。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
  

Posted by 下川裕治 at 12:25Comments(2)

2018年03月19日

マンゴー犬と生もの犬

 飛行機を使った運び屋になることがよくある。たとえば、海外で講演がある。主催者から、講演の後でサイン会を……という依頼。しかし、現地の書店に頼んでも講演までに日本から本が届かないという。そんなときは持参するしかない。本はかなり重い。30冊となるとずっしりとくる。自分で本を持参し、サインをして、売る。旅行作家の原点のような運び屋である。
 タイ人の知人が多いから、昔、よく運び屋を頼まれた。「次にタイに来るとき、もってきてくれないかなぁ」と、タイから電話がかかってくる。「いいよ」と答えると自宅に物が届く。
 さまざまなものがあった。サッカーボールや化粧品は楽だったが、あるとき、子供用の自転車がどんと届いたことがあった。「こんなものを飛行機に預けられるんだろうか」。航空会社に訊くと、大丈夫だという。しかし空港までどうやって運んだらいいのだろうか。車をもっている友達に頭をさげた記憶がある。
 あるとき、やけに重い箱が届いた。開けると車用ジャッキが2台も入っていた。なんとか運んだが、ひたすら重かった。
 日本でエイズを発症したタイ人の薬を運んでいたこともある。彼は留学生で、日本で治療を受けていた。体調を壊しタイで治療をするようになったが、すぐに薬を変えるのはよくない……と医師からいわれた。安全に運ぶには持参しかなかった。
 知人のなかには、とんでもないものを預けた奴もいる。フランス人の知人は、日本の骨董品店で買ったたんすを預けた。容量の制限に引っかからなかっただろうか。
 中国の旅を経験した知人は、洗濯代が驚くほど安いことを知った。その後、中国に行ったとき、自分が寝ていたシーツや部屋のカーテンなど、洗濯が大変なものをすべて飛行機に預けた。最初に着く上海で洗濯し、それを店に預けておき、帰国便に再び預ける算段。うまくいったと得意げに話していた。
 マンゴー犬と生もの犬の話を聞いた。マンゴー犬は日本の空港。アジアの一般店で売っているマンゴーは、日本に持ち込めない。そのにおいを嗅ぎわける犬だという。生もの犬の話はタイの空港。生の魚や和牛のにおいを感知する犬だという。タイの場合、依頼主は日本料理店らしい。常連客が日本に行ったときの帰りに、もってきてもらうのだという。バンコクの日本料理店の競争は激しい。その結果だろうか。
 調べると、本当にそんな犬がいた。動植物検疫探知犬と日本では呼ばれている。ビーグル犬が多いらしい。
 この探知犬は世界の空港にいるようだ。タイの空港でも働きはじめたのだろうか。
 果物や生もののにおいを消す? これ難問です。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=カンボジアの旅。アンコールワット、そして船旅。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機  

Posted by 下川裕治 at 11:45Comments(1)

2018年03月12日

空港で呟くこと

 いまタイのスワンナプーム空港にいる。チェンマイに行こうと思いたち、電車でやってきた。航空券は買っていなかった。
 タイのLCCは世界でいちばん使いやすいと思う。バンコクーチェンマイ、バンコクーウドンターニーなど就航便が多い路線では、事前にネットで予約する必要がない。空港に行き、航空会社の発券ブースに出向けば、その場で航空券が手に入る。便数が多いので満席になることはなく、直前だからといって運賃があがるわけではない。JRの切符を買うような気楽さがある。これまでも何回か、空港LCCの航空券を買ってきた。バンコクのドンムアン空港か地方の空港だったが。
 僕はLCCの搭乗記の連載を書いている。なるべく違うLCCに乗ろうと思う。今回はタイ・ベトジェットエアに乗るつもりだった。ベトナムのLCCであるベトジェットエアがタイに子会社をつくり、タイの国内線を飛んでいる。調べると、スワンナプーム空港が拠点だった。
 いつものように空港で航空券を買えばいいと思っていた。しかし空港で探しても発券ブースがみつからない。空港の案内所で訊いてみた。
「タイ・ベトジェットエアの発券オフィスはないんです。ときどき訊かれるんですけど。インターネットだけです」
 案内所にやってきたのは、LCCにしばしば乗るタイ人に違いなかった。ドンムアン空港では、空港のブースで買っていたのだろう。スワンナプーム空港やタイ・ベトジェットエアは勝手が違う。
 空港のベンチに腰かけ、インターネットをつないで航空券を買った。乗るつもりだった1時間後の便は、すでに画面から消えていた。3時間後の便になった。
 事前にネットで航空券や宿を予約することは性に合わない。今日どの街に着くかわからないような旅ばかりしてきたからだ。
 先日、台湾の高雄にいた。そのときは、何人かのメンバーが集まることになっていたため、彼らが宿をとった。住所や行き方を教えられていたが、宿の近くまできて迷ってしまった。そんなとき、いつも思う。予約をすると面倒だな……と。だからタイのLCCは気に入っていたのだ。
 この話は、著作のなかでも書いている。もちろん、僕が少数派であることはわかっている。ほとんどの人が、飛行機やホテルを予約して旅に出る。ホテルサイトを開くと「あと3室」などといった表示に焦る。そんなストレスなしに旅が続けられたらとは思うのだ。
 目の前をさまざまな国籍の人たちが足早に歩いている。チェックインカウンターに急いで向かう。いつから、旅はこんなにストレスフルなものになってしまったのだろう。
 スワンナプーム空港で呟いている。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=カンボジアの旅。アンコールワット、そして船旅。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
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○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
  

Posted by 下川裕治 at 16:09Comments(1)

2018年03月07日

【新刊プレゼント】『週末ちょっとディープなベトナム旅』

下川裕治の新刊発売に伴う、プレゼントのお知らせです。

【新刊】



下川裕治 (著)


『週末ちょっとディープなベトナム旅』 (朝日文庫)


◎ 本書の内容

20年前のトラブルを想い出しながらハノイのロンビエン橋を渡る。ホーチミンではベトナム人のフォーへのこだわりに触れ、大音量のデタム界隈でアジアのエネルギーに脱帽。さらに、陸路で国境を越えてカンボジアへ。工業団地で変わる村、利権に揺れるアンコールワットを見つめる。756円(税込)

【プレゼント】

新刊本『週末ちょっとディープなベトナム旅』 を、

抽選で"3名さま"にプレゼントします!

応募の条件は以下です。

1.本を読んだ後に、レビューを書いてブログに載せてくれること。
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)

応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2018年3月30日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。

えんぴつお問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php


1.お問合せ用件「その他」を選んでください。

2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。

 ・お名前
 ・Eメールアドレス
 ・ブログURL
  (記事を掲載するブログ)
 ・郵送先住所
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Posted by 下川裕治 at 18:53Comments(0)

2018年03月07日

【イベント告知】新刊「週末ちょっとディープなベトナム旅」発売記念

下川裕治の新刊「週末ちょっとディープなベトナム旅」発売を記念して、トークイベントを開催いたします。

詳細は以下です。


今回は、東京での◆下川裕治さん トークイベント◆新刊「週末ちょっとディープなベトナム旅」発売記念のお知らせです。

新刊『週末ちょっとディープなベトナム旅』(朝日文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、ふらっと行く週末ベトナム旅行のディープな楽しみ方についてスライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。前作『僕はLCCでこんなふうに旅をする』では、いまさら聞けないLCCの使い方や仕組み、予約方法やさらに使いこなすノウハウや落とし穴など、日本とアジアを頻繁に行き来する経験を通じてLCCの最新事情を紹介した下川さん。本書は、20年前のトラブルを想いながらハノイを歩き、ホーチミンでベトナム人のフォーへのこだわりに触れ、大音量のデタム界隈でアジアのエネルギーに浸かるなど、ベトナムのディープな楽しみ方を紹介した1冊になっています。現地ベトナムを徘徊し、さらにはカンボジアにも足を延ばして取材した下川さん独自のベトナム情報が聞けるはずです。下川ファンの方はもちろん、ベトナムが大好きな方やホーチミンのさらにディープなスポットに興味のある方はぜひご参加ください!


※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。

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●下川裕治(しもかわゆうじ)

1954年長野県松本市生まれ。旅行作家。『12万円で世界を歩く』でデビュー。以後、主にアジア、沖縄をフィールドにバックパッカースタイルでの旅を書き続けている。著書に、 『鈍行列車のアジア旅』『「生き場」を探す日本人』『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』『「行きづらい日本人」を捨てる』『シニアひとり旅 バックパッカーのすすめアジア編』 等。

◆下川裕治さんブログ「たそがれ色のオデッセイ」http://odyssey.namjai.cc/

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【開催日時】 
3月22日(木) 19:30~ (開場19:00)

【参加費】  
1000円※当日、会場入口にてお支払い下さい

【会場】 
旅の本屋のまど店内

【申込み方法】 
お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、お申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
 
※定員になり次第締め切らせていただきます。

【お問い合わせ先】
旅の本屋のまど TEL:03-5310-2627 (定休日:水曜日)
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F

http://www.nomad-books.co.jp

主催:旅の本屋のまど 
協力:朝日新聞出版  

Posted by 下川裕治 at 18:17Comments(0)