2018年04月30日
アルコール度数14%のビール
海外に出たら、その街の料理を庶民の食堂で食べる──。そうしなくてはいけないものだと思っていた。仕事柄……ということもあった。しかし数年前、ホテルの部屋食というものに開眼した。国はロシアだった。この国の地方都市は食堂が極端に少ない。ときにないこともある。
困っていたとき、部屋食を教えられた。ロシア人の多くがそうしているという。そこで、街の雑貨屋風の店やスーパーに出向く。そこには充実した総菜コーナーがあった。何品かの料理とパンを買い、ホテルで食べる。ロシアの食堂よりはるかに楽しい食事を味わうことができた。
こういう世界があるのか……。部屋食という視点で眺めると、外食と同じぐらい普及していることがわかってきた。
部屋食に走る理由はほかにもあった。宗教と酒である。イスラム教の社会では、女性が人前で食事をしないことが多い。ベールで顔を隠す習慣は、外食を難しくする。食事は当然のようにホテルの部屋である。
世界は今、酒への風当たりがきつい。店でアルコール類を出さないという国が増えている。しかし雑貨屋には酒類が売っているから、部屋食になびいていってしまう。
先週、発売になった『旅がラクになる7つの極意』(産業編集センター)でもその話を書いた。
「たしかに部屋食は楽ですけど、ちょっと安易では? やはり下川さんは外で食べてほしい。注文を忘れてしまうオカマ店員とか、ラオスの1ドルバイキングとかの話、面白かったですから」
読者からこんな連絡をいただいた。
襟を正さなければ……と思った。最近、かなり忙しい。旅に出る回数も多い。僕は少し疲れてきたのかもしれない。シニア旅に限定すれば、部屋食は楽なのだが、僕はその世界に走ってはいけないのだろう。
10日ほど前、ウズベキスタンのタシケントにいた。ホテルの近くにケバブ屋があった。訊くと店にビールは置いていないが、外で買い、テラス席で飲むのは大丈夫だという。見ると隣は酒屋だった。
充実した酒屋だった。種類も多く。ビールにはアルコール度数が11%、14%というものもある。日本酒やワインと同じぐらいの強さなのだ。
ウズベキスタンの国民の大半はイスラム教徒である。こういうことをしていいのかと思ったが、11%のビールをしっかり飲んでしまった。14%のビールはやめたほうがいい、と酒屋でいわれた。二日酔いするという。
そういうものだろうか。
僕はやはり、部屋食を拒み、街に出なくてはいけないのだろう。因果な仕事? そうはいわないが。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。今は中国編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
困っていたとき、部屋食を教えられた。ロシア人の多くがそうしているという。そこで、街の雑貨屋風の店やスーパーに出向く。そこには充実した総菜コーナーがあった。何品かの料理とパンを買い、ホテルで食べる。ロシアの食堂よりはるかに楽しい食事を味わうことができた。
こういう世界があるのか……。部屋食という視点で眺めると、外食と同じぐらい普及していることがわかってきた。
部屋食に走る理由はほかにもあった。宗教と酒である。イスラム教の社会では、女性が人前で食事をしないことが多い。ベールで顔を隠す習慣は、外食を難しくする。食事は当然のようにホテルの部屋である。
世界は今、酒への風当たりがきつい。店でアルコール類を出さないという国が増えている。しかし雑貨屋には酒類が売っているから、部屋食になびいていってしまう。
先週、発売になった『旅がラクになる7つの極意』(産業編集センター)でもその話を書いた。
「たしかに部屋食は楽ですけど、ちょっと安易では? やはり下川さんは外で食べてほしい。注文を忘れてしまうオカマ店員とか、ラオスの1ドルバイキングとかの話、面白かったですから」
読者からこんな連絡をいただいた。
襟を正さなければ……と思った。最近、かなり忙しい。旅に出る回数も多い。僕は少し疲れてきたのかもしれない。シニア旅に限定すれば、部屋食は楽なのだが、僕はその世界に走ってはいけないのだろう。
10日ほど前、ウズベキスタンのタシケントにいた。ホテルの近くにケバブ屋があった。訊くと店にビールは置いていないが、外で買い、テラス席で飲むのは大丈夫だという。見ると隣は酒屋だった。
充実した酒屋だった。種類も多く。ビールにはアルコール度数が11%、14%というものもある。日本酒やワインと同じぐらいの強さなのだ。
ウズベキスタンの国民の大半はイスラム教徒である。こういうことをしていいのかと思ったが、11%のビールをしっかり飲んでしまった。14%のビールはやめたほうがいい、と酒屋でいわれた。二日酔いするという。
そういうものだろうか。
僕はやはり、部屋食を拒み、街に出なくてはいけないのだろう。因果な仕事? そうはいわないが。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。今は中国編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
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12:36
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2018年04月23日
カシュガルの鉄パイプ訓練
2週間ほど前、僕は中国のカシュガルにいた。キルギスに向かう国境が閉鎖され、停滞を余儀なくされてしまったことは、このブログでもお話しした。
そのカシュガルで、僕は毎日、鉄パイプ訓練を見ていた。北京時間の12時、新疆ウイグル自治区時間で午前10時、街の人は手に鉄パイプをもって集まってくる。鉄パイプにもいろいろな種類がある。2メートルほどの鉄パイプが多いが、先端に突起が出ているものもある。なかには野球のバットのようなこん棒をもっている人もいた。
どうも20軒から30軒の家や商店がひとつの単位になっているようだった。カシュガルだから、住民は漢民族とウイグル人が混じっている。歩道には公安や訓練の指導係が待っている。
皆、横一列に並び、合図と一緒に、「エイッ」と鉄パイプを突き出すのだ。これが街なかで、一斉に行われる。それも毎日。日曜日も休まず……。
戦前の竹やり訓練を思い出してしまう。といっても僕は、映像でしかその訓練を見たことがない。竹やりは鉄パイプに代わったが、スタイルは似ていた。
公安は胸に「南疆民兵」と書かれた制服を着ていた。彼らはヘルメットで防備し、いつも一帯の警備にあたっている。彼らが真剣な面もちで声を挙げる。
いったいどれだけの住民が、鉄パイプ訓練の有効性を認めているのだろうか。ウイグル人の反政府暴動を抑えることが目的ということはわかるのだが。
日本の竹やり訓練も、いまとなっては滑稽ですらある。アメリカの戦闘機が飛来する空襲に対して、なにか役にたったのだろうか。重装備のアメリカ兵と本当に竹やりで闘えと軍部は指導した精神性に首を傾げる。
鉄パイプ訓練や竹やり訓練は、政府のプロパガンダのように思う。太平洋戦争末期日本軍は様々なスローガンを掲げた。絶望的な戦局のなかで生まれたものが、「一億玉砕」だった。軍部は本土決戦になびき、その流れのなかで、当然のように竹やり訓練が生まれてきた。スローガンを貫徹するために必要な訓練だった。
戦争が日本の敗戦で終わったとき、皆を洗脳していた「一億玉砕」は、その色を一気に失うことになる。
戦争にはそんなスローガンが必要なのかもしれないが、中国はいま、その戦時体制を新疆ウイグル自治区で演出しているように思えてしかたない。
カシュガルの商店は、どこも鉄格子がはめられている。店の人がそれを開けてくれないと、水も買えず、食事もできない。それも壮大な軍事演出に映る。
鉄パイプを握るウイグルの人たちは、そのからくりがわかっている気がする。かけ声は小さく、熱は入っていない。竹やり訓練に駆り出された日本人も……。ただ本心は口にできない。カシュガルにいるとその空気だけははっきりとわかる。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。今は中国編を連載中。
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○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
そのカシュガルで、僕は毎日、鉄パイプ訓練を見ていた。北京時間の12時、新疆ウイグル自治区時間で午前10時、街の人は手に鉄パイプをもって集まってくる。鉄パイプにもいろいろな種類がある。2メートルほどの鉄パイプが多いが、先端に突起が出ているものもある。なかには野球のバットのようなこん棒をもっている人もいた。
どうも20軒から30軒の家や商店がひとつの単位になっているようだった。カシュガルだから、住民は漢民族とウイグル人が混じっている。歩道には公安や訓練の指導係が待っている。
皆、横一列に並び、合図と一緒に、「エイッ」と鉄パイプを突き出すのだ。これが街なかで、一斉に行われる。それも毎日。日曜日も休まず……。
戦前の竹やり訓練を思い出してしまう。といっても僕は、映像でしかその訓練を見たことがない。竹やりは鉄パイプに代わったが、スタイルは似ていた。
公安は胸に「南疆民兵」と書かれた制服を着ていた。彼らはヘルメットで防備し、いつも一帯の警備にあたっている。彼らが真剣な面もちで声を挙げる。
いったいどれだけの住民が、鉄パイプ訓練の有効性を認めているのだろうか。ウイグル人の反政府暴動を抑えることが目的ということはわかるのだが。
日本の竹やり訓練も、いまとなっては滑稽ですらある。アメリカの戦闘機が飛来する空襲に対して、なにか役にたったのだろうか。重装備のアメリカ兵と本当に竹やりで闘えと軍部は指導した精神性に首を傾げる。
鉄パイプ訓練や竹やり訓練は、政府のプロパガンダのように思う。太平洋戦争末期日本軍は様々なスローガンを掲げた。絶望的な戦局のなかで生まれたものが、「一億玉砕」だった。軍部は本土決戦になびき、その流れのなかで、当然のように竹やり訓練が生まれてきた。スローガンを貫徹するために必要な訓練だった。
戦争が日本の敗戦で終わったとき、皆を洗脳していた「一億玉砕」は、その色を一気に失うことになる。
戦争にはそんなスローガンが必要なのかもしれないが、中国はいま、その戦時体制を新疆ウイグル自治区で演出しているように思えてしかたない。
カシュガルの商店は、どこも鉄格子がはめられている。店の人がそれを開けてくれないと、水も買えず、食事もできない。それも壮大な軍事演出に映る。
鉄パイプを握るウイグルの人たちは、そのからくりがわかっている気がする。かけ声は小さく、熱は入っていない。竹やり訓練に駆り出された日本人も……。ただ本心は口にできない。カシュガルにいるとその空気だけははっきりとわかる。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。今は中国編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
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2018年04月17日
【新刊プレゼント】『旅がグンと楽になる7つの極意』
下川裕治の新刊発売に伴う、プレゼントのお知らせです。
下川裕治 (著)
『旅がグンと楽になる7つの極意』 (産業編集センター)
産業編集センター刊
1000円+税
◎ 本書の内容
アジアを中心にバックパッカースタイルで旅をし、旅に関する数々の著作を世に送り出してきたベテラン旅行作家が、飛行機の選び方から現地でのコミュニケーション、移動手段、食事をする場所やトラブルが起きた時の対処法まで、海外旅行の極意を伝授。シニア世代のための、誰でも実践できる"ラクして「海外ひとり旅」"を楽しむことができる旅行術を提案する一冊。
著者自身の撮影による写真と、お役立ちコラムも掲載。
新刊本『旅がグンと楽になる7つの極意』 を、
抽選で"3名さま"にプレゼントします!
応募の条件は以下です。
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2018年5月28日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
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今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。
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【プレゼント】
新刊本『旅がグンと楽になる7つの極意』 を、
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応募の条件は以下です。
1.本を読んだ後に、レビューを書いてブログに載せてくれること。
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2018年5月28日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
お問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php
1.お問合せ用件「その他」を選んでください。
2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。
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(念のため記載ください)
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『旅がグンと楽になる7つの極意』
(産業編集センター)
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2018年04月17日
【イベント告知】新刊「旅がグンと楽になる7つの極意」発売記念
下川裕治の新刊「旅がグンと楽になる7つの極意」発売を記念して、トークイベントを開催いたします。
詳細は以下です。
今回は、東京での◆下川裕治さん トークイベント◆新刊「旅がグンと楽になる7つの極意」発売記念のお知らせです。
◆下川裕治さん トークイベント◆
「旅行作家と一緒に考える旅が楽になる極意」
-------------------------------
新刊『旅がグンと楽になる7つの極意』(産業編集センター)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、参加者の方と一緒に「旅が楽になる極意」について考えていきたいと思います。前作『週末ちょっとディープなベトナム旅』では、20年前のトラブルを想いながらハノイを歩き、ホーチミンでベトナム人のフォーへのこだわりに触れ、大音量のデタム界隈でアジアのエネルギーに浸かるなど、ベトナムのディープな楽しみ方を紹介していた下川さん。本作では、30年以上に渡ってバックパッカースタイルでアジアを中心に旅をして、旅行本を取材、執筆している下川さんが、飛行機の選び方から現地でのコミュニケーション、移動手段、食事をする場所やトラブルが起きた時の対処法まで、誰でも実践できる海外旅行の7つの極意を伝授する1冊になっています。「LCCには乗らない」「ホテルは予約しない」「同じ店に何度も通う」など、下川さんが長い旅行人生の経験を通して体得した独自の旅のノウハウをベースに、「私はこうしている」といった旅好きの方の意見を交えながら皆で旅の極意を考えていく予定です。下川ファンの方はもちろん、もうすぐシニア世代、もしくはもうシニア世代になった旅好きの方や、これから海外ひとり旅をしてみたいと憧れている若い方もぜひご参加ください!
※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。
-------------------------------
●下川裕治(しもかわゆうじ)
1954年長野県松本市生まれ。旅行作家。『12万円で世界を歩く』でデビュー。以後、主にアジア、沖縄をフィールドにバックパッカースタイルでの旅を書き続けている。著書に、 『鈍行列車のアジア旅』『「生き場」を探す日本人』『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』『「行きづらい日本人」を捨てる』『シニアひとり旅 バックパッカーのすすめアジア編』 等。
◆下川裕治さんブログ「たそがれ色のオデッセイ」http://odyssey.namjai.cc/
-------------------------------
【開催日時】
5月18日(木) 19:30~ (開場19:00)
【参加費】
1000円※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】
旅の本屋のまど店内
【申込み方法】
お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、お申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
旅の本屋のまど TEL:03-5310-2627 (定休日:水曜日)
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
http://www.nomad-books.co.jp
主催:旅の本屋のまど
協力:産業編集センター
詳細は以下です。
今回は、東京での◆下川裕治さん トークイベント◆新刊「旅がグンと楽になる7つの極意」発売記念のお知らせです。
◆下川裕治さん トークイベント◆
「旅行作家と一緒に考える旅が楽になる極意」
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新刊『旅がグンと楽になる7つの極意』(産業編集センター)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、参加者の方と一緒に「旅が楽になる極意」について考えていきたいと思います。前作『週末ちょっとディープなベトナム旅』では、20年前のトラブルを想いながらハノイを歩き、ホーチミンでベトナム人のフォーへのこだわりに触れ、大音量のデタム界隈でアジアのエネルギーに浸かるなど、ベトナムのディープな楽しみ方を紹介していた下川さん。本作では、30年以上に渡ってバックパッカースタイルでアジアを中心に旅をして、旅行本を取材、執筆している下川さんが、飛行機の選び方から現地でのコミュニケーション、移動手段、食事をする場所やトラブルが起きた時の対処法まで、誰でも実践できる海外旅行の7つの極意を伝授する1冊になっています。「LCCには乗らない」「ホテルは予約しない」「同じ店に何度も通う」など、下川さんが長い旅行人生の経験を通して体得した独自の旅のノウハウをベースに、「私はこうしている」といった旅好きの方の意見を交えながら皆で旅の極意を考えていく予定です。下川ファンの方はもちろん、もうすぐシニア世代、もしくはもうシニア世代になった旅好きの方や、これから海外ひとり旅をしてみたいと憧れている若い方もぜひご参加ください!
※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。
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●下川裕治(しもかわゆうじ)
1954年長野県松本市生まれ。旅行作家。『12万円で世界を歩く』でデビュー。以後、主にアジア、沖縄をフィールドにバックパッカースタイルでの旅を書き続けている。著書に、 『鈍行列車のアジア旅』『「生き場」を探す日本人』『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』『「行きづらい日本人」を捨てる』『シニアひとり旅 バックパッカーのすすめアジア編』 等。
◆下川裕治さんブログ「たそがれ色のオデッセイ」http://odyssey.namjai.cc/
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【開催日時】
5月18日(木) 19:30~ (開場19:00)
【参加費】
1000円※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】
旅の本屋のまど店内
【申込み方法】
お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、お申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
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(お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
旅の本屋のまど TEL:03-5310-2627 (定休日:水曜日)
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
http://www.nomad-books.co.jp
主催:旅の本屋のまど
協力:産業編集センター
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2018年04月16日
春を駆け抜けてきた
今日ソウルから春の嵐の東京に戻った。春の嵐というと、突然の突風に煽られて苦労はするのだが、人々の顔にはどこか険しさがない。子どものいたずらに出合ったときによく似ている。
しかし乗っている飛行機が、春の嵐に巻き込まれると、さすがに怖い。揺れは内臓を突きあげるように体を襲う。
ソウルから乗ったイースタージェットという韓国のLCCは、果敢に強風に突っ込んでいったのだが、途中で一気に高度をあげた。しばらく成田空港の上空を旋回していたが、やがてこんなアナウンスが流れることになる。
「関西国際空港に向かいます」
関空で1時間ほど待機しただろうか。再び成田空港に向かって離陸した。成田空港は、3時間前の嵐が嘘のように収まっていた。ターミナルを出ると、湿り気のある温かい空気に包まれた。その湿気が日本を思い出させた。
中国の新疆ウイグル自治区からキルギスタンへ。そこからカザフスタン、ウズベキスタンをまわってソウルに旅だった。
新疆ウイグル自治区のカシュガルには、柳絮(りゅうじょ)が舞っていた。タンポポの綿毛のついた種子をもう少し小ぶりにしたような柳の種子である。
北京ではこの柳絮を「春の雪」と呼んでいる。北京の春は短いが、柳の種が街に舞うと一気に春がやってくるのだ。カシュガルも春は短い。しばらくすると、気温が40度を超えるような夏に突入してしまう。乾燥地帯の春は一瞬である。
しかし人々は、その短い春を体全体で受け止めていた。
中央アジアも春のただなかだった。1年のなかで最もいい季節だ。夏は酷暑にあえぎ、冬は雪まで降る。そんな激しい気候のなかで、どこかほっとするような光が、ビシュケクやタシケントを包む。人々は公園のベンチに座り、春の風に揺れるプラタナスの葉に目を細める。
飛行機の関係でソウルにも寄った。春の韓国といえば、レンギョウの黄色い花である。ソウルは4月の初旬、街を黄で染まっていく。もっとも最近は、日本同様、桜もみごとな花をつける。韓国人のなかには、「桜はもともと朝鮮半島のもの」と主張する人がいる。どこか領土問題を思い出してしまうのだが、どちらにせよ、桜に罪はない。
ソウルのレンギョウや桜の季節は終わり春の雨が降っていた。温かい雨というにはほど遠いが、その弱い雨脚に春が潜んでいた。
中国の西域から中央アジア、韓国と緯度があまり変わらないエリアを歩いた旅は、春を駆け抜けるような旅だった。
その仕上げが日本の嵐ということなのだろうか。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。今は中国編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
しかし乗っている飛行機が、春の嵐に巻き込まれると、さすがに怖い。揺れは内臓を突きあげるように体を襲う。
ソウルから乗ったイースタージェットという韓国のLCCは、果敢に強風に突っ込んでいったのだが、途中で一気に高度をあげた。しばらく成田空港の上空を旋回していたが、やがてこんなアナウンスが流れることになる。
「関西国際空港に向かいます」
関空で1時間ほど待機しただろうか。再び成田空港に向かって離陸した。成田空港は、3時間前の嵐が嘘のように収まっていた。ターミナルを出ると、湿り気のある温かい空気に包まれた。その湿気が日本を思い出させた。
中国の新疆ウイグル自治区からキルギスタンへ。そこからカザフスタン、ウズベキスタンをまわってソウルに旅だった。
新疆ウイグル自治区のカシュガルには、柳絮(りゅうじょ)が舞っていた。タンポポの綿毛のついた種子をもう少し小ぶりにしたような柳の種子である。
北京ではこの柳絮を「春の雪」と呼んでいる。北京の春は短いが、柳の種が街に舞うと一気に春がやってくるのだ。カシュガルも春は短い。しばらくすると、気温が40度を超えるような夏に突入してしまう。乾燥地帯の春は一瞬である。
しかし人々は、その短い春を体全体で受け止めていた。
中央アジアも春のただなかだった。1年のなかで最もいい季節だ。夏は酷暑にあえぎ、冬は雪まで降る。そんな激しい気候のなかで、どこかほっとするような光が、ビシュケクやタシケントを包む。人々は公園のベンチに座り、春の風に揺れるプラタナスの葉に目を細める。
飛行機の関係でソウルにも寄った。春の韓国といえば、レンギョウの黄色い花である。ソウルは4月の初旬、街を黄で染まっていく。もっとも最近は、日本同様、桜もみごとな花をつける。韓国人のなかには、「桜はもともと朝鮮半島のもの」と主張する人がいる。どこか領土問題を思い出してしまうのだが、どちらにせよ、桜に罪はない。
ソウルのレンギョウや桜の季節は終わり春の雨が降っていた。温かい雨というにはほど遠いが、その弱い雨脚に春が潜んでいた。
中国の西域から中央アジア、韓国と緯度があまり変わらないエリアを歩いた旅は、春を駆け抜けるような旅だった。
その仕上げが日本の嵐ということなのだろうか。
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