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ナムジャイブログ

2018年08月27日

醒めたチームワーク

 夏の甲子園。秋田県の金足農業が決勝戦まで進んだ。大阪桐蔭との決勝戦。締め切り原稿に追われながらも、ときどきテレビで観戦した。興味深い決勝戦だった。
 プロとアマチュアの試合。誤解を恐れずにいえば、そういうことだった気がする。大阪桐蔭の選手からはプロ野球のにおいがした。
 いまの高校野球は、少年野球やリトルリーグからスタートする。優秀な選手は野球エリート校から勧誘を受ける。様々な出身地の生徒を集める野球エリート高校は1県で3校までという話を聞いたことがある。人材や指導者、高校の資金力などを考えると、そのあたりに落ち着くのだという。首都圏や関西圏はもっと高校が増えるが。
 決勝戦を観ながら、以前に書いた『南の島の甲子園』(双葉文庫)を思い出していた。沖縄の石垣島。八重山商工高校が甲子園に行った。その話をまとめたものだ。
 取材で八重山商工の伊志嶺吉盛監督とよく話をした。
「石垣島にある県立高校は八重山高校と八重山商工、八重山農業の3校。中学で野球の才能がある選手がいても、この3校にばらけて進学しちゃう。これじゃ強くなれない。ひとつの高校に集まらないと」
 それを実践したのが伊志嶺監督だった。彼は少年野球の指導者だった。そこで育てた子供たちが、八重山商工野球部に集まった。
 全国の高校の野球部をみても、この方式しかないと思う。野球エリート校に対抗できるチームはそのなかから生まれる。
 少年野球で優勝したようなチームのメンバーを全員、しっかりした指導者がいる高校に進学させる。県立高校が強くなる方法論といってもいい。
 そこにはふたつの条件がある。進学する高校の偏差値が高くないこと。生徒の学力はさまざまだ。入試が難しい高校では、全員が集まることができない。そしてその進学を生徒たちが望むことだ。親の考えもあるだろう。
 野球エリート校には全国から生徒がひとりずつ集まり、チームがつくられていく。それに比べると、小学校や中学の頃から一緒に野球をやってきた生徒たちの結束力は違う。
 金足農業の野球部は、こうしてできあがったチームだった。そのあたりが、かつての八重山商工に似ていた。野球エリート校に対して「たたきあげ校」とでもいっておこうか。
 このふたつのチームの違いは、個と集団のように思う。大阪桐蔭もいいチームなのかもしれないが、それはリーグ優勝をめざすプロ野球チームに似ている。どこか醒めているのだ。大阪桐蔭の試合から伝ってくるのは、そんなにおいである。プレーひとつがプロ野球へのアピールなのだ。
 しかし金足農業の選手にはそれがない。皆で甲子園をめざした。それだけだ。レベルの違いといったらそれまでなのだが。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまは中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
  

Posted by 下川裕治 at 11:35Comments(0)

2018年08月23日

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下川裕治の新刊発売に伴う、プレゼントのお知らせ記事の再投稿です。

※お詫びとお願い※
システムエラーのため、お問い合わせフォームからお送り頂いたお客様のメールが届いておりませんでした。お手数をおかけして大変申し訳ございませんが、ご応募頂いた方はもう一度メールをお送り頂くようお願い致します。(期限は8月31日までとさせて頂きます。)


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こんな酔狂な旅があるだろうか?日本で夜行列車が廃止される中、世界で何日も走り続ける長距離列車を片っ端から走破してみよう!と旅立ったものの、風呂なしの日々に思いがけないアクシデント続発。インド亜大陸縦断鉄道から、チベット行き中国最長列車、極寒の大地を走るシベリア鉄道、カナダとアメリカ横断鉄道の連続制覇まで、JR全路線より長距離をのべ19車中泊で疾走した鉄道紀行。


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(タイ在住+日本在住の方も対象です。)

応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2018年8月31日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。

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2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。

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Posted by 下川裕治 at 18:44Comments(0)

2018年08月20日

【イベント告知】新刊「鉄路2万7千キロ 世界の超長距離列車を乗りつぶす」発売記念

下川裕治の新刊「鉄路2万7千キロ 世界の超長距離列車を乗りつぶす」発売を記念して、トークイベントを開催いたします。

詳細は以下です。


今回は、東京での◆下川裕治さん トークイベント◆新刊「鉄路2万7千キロ 世界の超長距離列車を乗りつぶす」発売記念のお知らせです。

◆下川裕治さん  
スライド&トークショー◆

「世界の超長距離鉄道2万7千キロの旅」

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新刊『鉄路2万7千キロ 世界の超長距離列車を乗りつぶす』(新潮文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、世界の長距離の鉄道旅の魅力についてスライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。東南アジアの「マイナー国境」をひたすら越える旅や超過酷なユーラシア大陸を横断する鉄道旅など、60歳を超えてなお、いまだにハードなバックパック旅行を続ける下川さんが今回挑戦したのは、日本で夜行列車が廃止される中、世界で何日も走り続ける長距離列車を片っ端から走破する鉄道旅。インド亜大陸縦断鉄道から、チベット行き中国最長列車、極寒の大地を走るシベリア鉄道、カナダとアメリカ横断鉄道の連続制覇まで、JR全路線よりも長い距離をのべ19車中泊で疾走した鉄道紀行になっています。風呂なしの日々に思いがけないアクシデントが続発する中、どんな鉄道旅になったのでしょうか?下川ファンの方はもちろん、海外の長距離鉄道旅に興味がある方や個人でのバックパック旅行が好きな方はぜひご参加ください!


※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。

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●下川裕治(しもかわゆうじ)

1954年長野県松本市生まれ。旅行作家。『12万円で世界を歩く』でデビュー。以後、主にアジア、沖縄をフィールドにバックパッカースタイルでの旅を書き続けている。著書に、『鈍行列車のアジア旅』『「生き場」を探す日本人』『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』『週末アジアでちょっと幸せ』『旅がグッと楽になる7つの極意』 等。 

◆下川裕治さんブログ「たそがれ色のオデッセイ」
http://odyssey.namjai.cc/

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【開催日時】 
9月13日(木) 19:30 ~ (開場19:00)

【参加費】  
1000円※当日、会場入口にてお支払い下さい

【会場】 
旅の本屋のまど店内

【申込み方法】 
お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、お申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
 
※定員になり次第締め切らせていただきます。

【お問い合わせ先】
旅の本屋のまど TEL:03-5310-2627 (定休日:水曜日)
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F

http://www.nomad-books.co.jp

主催:旅の本屋のまど 
協力:新潮社  

Posted by 下川裕治 at 12:20Comments(0)

2018年08月20日

「風立ちぬ」という言葉の連想

 ベトナムのダラットから東京に戻った。
 ダラットは標高1500メートルの高原。気温は15度から20度という気候だった。夜はヒーターをつけたほどだった。暑い東京から向かったが、この涼しさはありがたかった。久しぶりによく眠った。
 そこから北上して東京に向かった。北に向かうほど気温が上昇していく。なんだかしっくりこない移動でもある。
 今年の東京は暑い。6月末にパキスタンからインドに抜けた。最高気温44度、最低気温38度というなかを歩いてきた。これほどの暑さを経験したのだから、東京の暑さなど……と思っていたが、やはり暑い。湿度の高さも堪えるのだろう。
 ダラットからまた、あの暑さのなかに戻っていく──。覚悟して成田空港に着いたのだが、東京は秋の気配を予感させる空気に包まれていた。どこか肩透かしを食らったような気分だった。また暑さがぶり返すと天気予報は伝えているが。
 秋の気配を感じたとき、いつも浮かんでくる言葉がある。
 風立ちぬ──。
 堀辰雄の小説、松田聖子のヒット曲、ジブリの映画……。「風立ちぬ」という言葉はさまざまなタイトルになってきた。その言葉の響きが、やはり秋を連想させるのだろう。俳句の世界でも、秋の季語になっている。
 秋の気配を察したとき、僕はいつもこの言葉が浮かんできてしまう。以前、このブログでも書かせてもらった記憶がある。
「風立ちぬ」という言葉をはじめて使ったのは堀辰雄である。ヴアレリイの詩を堀辰雄が訳した。そこで、「風立ちぬ」という言葉が生まれた。訳としての正しさ、文法上の問題など批判も多いが、その後、人々のなかで勝手に発展していった。想像力を掻き立てる語感をもっているのだと思う。
 人の脳のなかには、さまざまな言葉が詰まっている。それがなにかのスイッチで引き出されてくる。そのスイッチの汎用性が日本人の共通認識として育っていく。
 僕は言葉を書くことを生業にしているわけだから、いつも言葉の汎用性と斬新さの中で悩んでいる。新しい言葉を書いても、それが伝わるか……というせめぎあいである。
 いったい誰が、「風立ちぬ」は秋の言葉だと決めたのだろう。おそらく手を挙げる人はいない。しかし秋を連想させる言葉として定着してしまった。つくづく、言葉は生き物なのだと思う。
 いま、9月に発売される本のゲラを読んでいる。編集者や校閲者から指摘を前に、ひとり悩む。もう少し時間をかけ、言葉を選ばないと自分が堕ちていく。そんな怖れに苛まれる。いま午前4時……。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまは中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
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Posted by 下川裕治 at 12:08Comments(0)

2018年08月13日

僕の「スタンドバイミー」

 転校が多い小学生だった。父親の転勤の為だったが、卒業するまで3校に通った。
 小学校2年まで、長野県の諏訪にある小学校に通っていた。ひょんなことから、その同級会の連絡があった。会うのは55年ぶりである。
 会場で顔を会わせても、いったい誰なのかまったくわからなかった。集まった同級生たちも、僕の記憶はまったくなかった。小学校2年までの記憶はその程度のものなのかもしれない。
 不思議な同級会といえなくもない。
 会がはじまったときはそう思っていた。
 僕が参加していたせいか、皆の話は小学校1年や2年の話が多かった。
 ひとりが骨折したときの話になった。彼の家は学校から少し離れていた。何人かで自転車に乗り、彼の家を訪ねたことがあった。単なる見舞いだったのか、なにかの配布物を届けにいったのか。記憶は曖昧だった。
 彼の家に行くには、いまは上川と名前が変わってしまった六斗川を越えなくてはならなかった。そのあたりから、記憶がつながりはじめた。
「そういえば、そのなかに下川君がいた」
「自転車が5段変速だったやつがいんだよ」
 骨折したクラスメイトを訪ねたメンバーの記憶が蘇ってきた理由……。
 それは冒険だった。
 小学2年生の僕らにとって、六斗川は遠かった。いま、距離を見ると1キロもないのだが、当時の僕らの行動範囲の外にある川だったのだ。
 その川を越える。
 僕らの意識を支配していたのは不安だったのだろうか。いや、そこには、六斗川の向こう側の風景への好奇心もあった。そこまで自転車を漕いでいく……。僕らの冒険は、鮮やかな記憶とつながっていた。
 僕らにとっての「スタンドバイミー」だったのだ。
 会がはじまる前、小学2年まで住んでいた家のあたりを訪ねてみた。既に家はなく道路になっていた。近くに城跡があり、その石垣の記憶も戻ってきたが、その色合いは、六斗川に何人かで向かったときとは異質だった。
 出席したメンバー皆、その小学校を卒業していた。彼らには、六斗川以外の記憶もいっぱいあり、話はしだいに僕とは無縁の世界に広がっていった。
 なぜいま頃、同級会?
 連絡をくれた知人に訊いてみた。すると彼は「終活」という言葉を口にした。そういう年なのだろう。ということは、「終活」を彩るものは、少年時代の冒険なのだろうか。

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○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
  

Posted by 下川裕治 at 20:38Comments(0)