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ナムジャイブログ

2020年02月03日

紋切り型コメントの不快感

 以前から気になっているコメントがある。スポーツの試合やコンサートの後、テレビ局が観客にマイクを向けると、必ずといっていいほど、「元気をもらった」、「勇気をもらった」というコメントを日本人は口にすることだ。それを受けてか、スポーツ選手やミュージシャンが、「元気や勇気を与えたい」というコメントを残す。この感覚がしっくりこない。
 ある精神学者が、「そんなに元気や勇気をもらったら、人間は精神を病んでしまう。もらうのではなく、自分から獲得しないと解決しません」といっていたが、たしかにその通りだと思う。
 コメントを口にする人たちもわかっているのだと思う。そのとき、元気をもらっても、最後に克服していくのは自分自身だということを。
 しかし、「元気をもらった」とコメントを口にすると波風が立たない。無難なのだ。テレビにも採用されやすい。
 スポーツ選手やタレントは、いい印象をあたえなくてはいけない。へたなコメントは避けようとする。その結果が、「元気や勇気を与えたい」という言葉にいきつく。
 僕はアスリートではないので、その心理はわからないが、競技のなかでは、相手のチームに勝ちたいとか、記録をつくりたいといったことを考えているはずで、観客に元気や勇気を与えたいという気持ちで挑んではいないと思う。最後のコメントで出てくる言葉の世界だという気がする。
 テレビ局も、この種のコメントを流しておけば安心。抗議を受ける心配もない……と読む。その結果、「元気や勇気を与えて」、「元気や勇気をもらう」という紋切り型のコメントが氾濫することになる。
 新型コロナウイルスが、中国を中心に猛威をふるっている。3日前にバンコクから東京に戻ったが、どちらも新型肺炎話ばかりである。日本に滞在していた武漢の中国人がチャーター便で帰国するシーンもニュースで流れた。インタビューを受けた中国人は、「政府がきちんと対応してくれるので心配していません」とコメントしていた。新型肺炎が広がりはじめたときも、中国で、日本のテレビ局がマイクを向けると、皆、同様のコメント。海外のメディアには、そう答えると決めているかのようだった。
 ここまで新型肺炎の感染が広がった事実を前に、中国人がいまでも、「政府がきちんと防いでくれる」と思っているとは思えない。防ぐことが難しいウイルスとはいえ、事実を隠そうとする党幹部の資質が、対応を遅らせたことを、多くの中国人はわかっている気がする。しかし、マイクを向けられると、政府を信頼するコメントを口にする。
 紋切り型コメントに不快感を募らせてしまうのは僕だけだろうか。

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Posted by 下川裕治 at 12:58Comments(0)