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ナムジャイブログ

2021年04月26日

隔離とは入院だったか

 明日から入院することになった。鼠経(そけい)ヘルニア、俗にいうと脱腸の手術を受ける。鼠経は陰部を挟んだ両側にある。そこは腸が出やすい部分で、5年ほど前、右側の鼠経ヘルニアの手術を受けている。今度は左側である。鼠経ヘルニアになりやすい人は、僕のように時間を経て、両側の手術を受けることは珍しくないらしい。
 それほど大変な手術ではない。はみ出てしまった腸を戻し、その出口をネットでふさぐことになる。1度経験した手術でもある。気分はそれほど重くない。
 しかし入院は1週間近くになる。通常は3日ほどで終わる手術なのだが、僕はヘパリン置換を行わなくてはならない。不整脈という持病があるため、僕はワーファリンという抗凝固薬を飲んている。血液をサラサラにするといわれる薬だ。その状態での手術は、出血が止まらない可能性もある。そこで手術の間だけ、ヘパリンに変える。ワーファリンからヘパリンに変える期間が約2日。その分が余分にかかってしまうのだ。
 それを意図したわけではないいが、東京は今日(25日)から緊急事態宣言になった。多くの店舗が閉まってしまう。家にいることを余儀なくされてしまうのだが、そんな東京を僕は病室の窓から眺めることになる。
 しかしコロナ禍の入院は不自由だ。新型コロナウイルスを院内にもち込まないことに細心の注意を払わないといけない。
 昨日、PCR検査を受けた。入院2週間前からの体温や行動も記録しなくてはならない。
 病院内の移動も制限されている。僕が入院する病院にはコンビニが入っているのだが、そこに行くことはできない。入院フロアーから出ることができないのだ。
 面会も禁止。差し入れはチェックを受けたものだけ……。
 そんな説明を受けながら、バンコクや成田空港での隔離ホテルの日々が蘇ってきてしまった。
 今年の2月から3月にかけ、タイに出かけた。当然、その前後で隔離が待っていた。
 バンコク、そして日本、どちらの隔離ホテルも面会は禁止されていた。食べ物、飲み物の差し入れは禁止だった。
 日本での入院はそれに似ていた。
 いや、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための隔離とは入院に近かった。病院がホテルに変わっただけと考えると、なんとなく符号するものがある。
 今年はルールを守りつつ、いくつかの国に行こうと思っている。ワクチン接種が進んでも、国によって差があるから、どうしても隔離は必要になってくるだろう。
 来週のこのブログは、予定でいけば退院後になる。そのときはどんな心境になっているのだろうか……。

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Posted by 下川裕治 at 11:46Comments(0)

2021年04月19日

唾液が少ない人生

 世界の人々のなかで、どのくらいの人がPCR検査を受けたのだろうか。その結果は完全というわけでもなく、その後で感染してしまえばなんの意味もなくなってしまう検査だが、「いま」の不安というものがある。我が家をみても、全員が1回はPCR検査を受けている。体調がすぐれないとき、どうしても新型コロナウイルスへの不安に傾いていってしまう時代である。日本も簡単にこの検査を受けることができるようになってきた。
 僕は体調には関係なく、海外に出たために何回もこの検査を受けた。
 PCR検査は、一般的にはふたつの方法で検体をとる。鼻腔ぬぐい液と唾液だ。鼻腔ぬぐい液をとるときは、鼻の奥に綿棒を入れる。ちょっと痛い。綿棒は英語でスワブという。海外に渡航するときはPCR検査が義務づけられていることが多いから、しばしばスワブテストという説明を耳にする。
 このスワブテストが一般的な方法かと思っていたが、成田空港では小振りの試験管を渡された。この線のところまで唾液を入れてください、といわれた。
 試験管は細いが、底から1センチほど唾液を溜めなくてはならない。口のなかの唾液を絞りだすようにして入れたが、2ミリにも満たなかった。
「皆、簡単に唾液を溜めることができるんだろうか」
 唾液をとる場所は簡易ブースのようなつくりになっていた。人の動きを見ていると気が散るので、壁に向かい、口のなかに唾液を溜める。唾液をとるには、かなり集中しないといけない。いや、そう思ったのは僕ぐらいなのだろうか。
「唾液が少ないね」
 あれは小学校の高学年のときだった気がする。虫歯の治療のために歯科医にかかっていた。
「唾液が少ないと、虫歯になりやすいよ。ご飯をよく噛んで食べることだね。そうすると唾液が出やすくなるから」
 歯科医の説明を、僕は口を開けたまま聞いていた。
 歯科医の予測はみごとにあたった。20歳の頃には、治療はしてあるものの、奥のほうの歯はすべて虫歯だった。歳をとると、治療した歯もダメになってくる。昨年の末、一ヵ所が入れ歯になってしまった。
「気をつけないと、ほかの場所も入れ歯に鳴っちゃいますよ」
 歯科医からそういわれているが。
 僕は唾液の少ない人生を歩んできたのかもしれない。「固唾を呑む」ということわざがあるが、どうしてもぴんとこない。原稿でも使っていない気がする。
 試験管を手にそんなことを考えてみる。しばらくじっとしていないと唾液が溜まらないのだ。僕の後からブースに入った人はもう出ていってしまった。唾液というものは、焦って出せるものでもない。
 これからも何回か唾液の採取で苦労するのだろうか。


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Posted by 下川裕治 at 12:06Comments(0)

2021年04月12日

コロナ禍のトークイベント

 海外への旅が難しくなって1年以上がすぎた。先週のこのブログで伝えたが、2月から3月にかけ、タイのバンコクに出かけた。しかしそれが旅か……と訊かれると、僕自身、首を傾げてしまう。パスポートにはスタンプが捺されたが、その日々の大半はホテルの部屋に隔離されていた。本来なら列車やバスに揺られていたはずだが。
 そんな状態に陥ってしまったが、ありがたいことに、僕の本はペースこそ遅いものの出版される。今月に入り、「5万4千円でアジア大横断」(朝日文庫)が書店に並んだ。
 なぜ僕の本は出版されるのかといえば、旅のガイドの要素が薄いからだ。旅の読み物だから、旅に出ることが難しくても、旅の気分を味わうために買ってくれる。そう出版社は読んでいる。
 しかし話はそう簡単ではない。
 僕の本が出ると、西荻窪のある「のまど」という書店でトークイベントが開かれる。今回も4月23日に開催される。
http://www.nomad-books.co.jp/event/event.htm
 来週なのだが、いまから悩んでいる。なにを話したらいいのかわからないのだ。この種のイベントは、旅のときの裏話や、実際に行く人へのアドバイスといったことが中心になることが多いのだが、集まってくれる人は、海外に旅に出ることができないのだ。なにかテンションが違う。
 この本にもコラムが設けられている。それは実際の旅のアドバイスなどだ。トークイベントはそれが膨らんだ内容になると思えばいい。しかしそれを膨らませることが……。
 実は前回もそうだった。そのときは、「旅の本の読み方」のような話をしたが、さて、今回はどうしたものか。
 人前で話すことは苦手だ。多くの人がそうだと思う。新聞記者をしていたとき、選挙などで政治家に貼り着くことがある。脇で彼らを見ていると、人前で話すことが好きな人たちなんだ、と自分との溝を感じたことがよくあった。
 それでもなんとか場をこなしてきたが、それは話す内容があったからで、今回のような場合は、いまから考え込んでしまっている。
 去年の暮れまで、芭蕉の「奥の細道」を手に日本国内を歩いていた。
──月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也。
 こんな名文ではじまる1冊だが、コロナ禍のいまから俯瞰してみると、それなりの手続きはあったものの、旅ができた時代の文章に思えてくる。海外はもちろん、日本では県をまたぐ移動にも規制がかかり、月日は百代の過客という余裕がない。
 はてさて……。次回のトークイベントはどんな話をしたらいいものか。


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Posted by 下川裕治 at 11:49Comments(1)

2021年04月05日

安全な旅の基準をつくりたい

 コロナ禍でも旅がしたい──。そんな人のためのオンラインサロンをスタートさせる。
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01v8b3bubhj11.html

 有料で恐縮だが、ここまでの道のりは僕にとっては紆余曲折だった。
 昨年の春、新型コロナウイルスの感染が拡大。多くの国が外国人の受け入れを停めた。同時に日本政府は感染危険情報をつくった。それはレベル1からレベル4まで。レベル2は「不要不急の渡航は止めてください」、レベル3は「渡航中止勧告」である。一時期、世界の多くの国がレベル3だった。
 昨年秋ごろから、ヨーロッパ内の多くの国で規制緩和の動きが広まった。日本人は隔離もなく、コロナ禍になる前と同じような旅に戻った。飛行機も飛んでいた。しかし日本政府の感染危険情報はレベル3のままだった。
 タイで働くことになっていた知人は、予定通り赴任していった。タイでの隔離はあったが、当時、タイはレベル3だった。
 僕の心は千々に乱れた。海外への旅とはどちらに帰属するのか……と悩んだ。渡航する国は許可をし、日本は渡航中止勧告を出している。知人の駐在員はそれを無視してタイに赴任する。
「規制のないヨーロッパへ行こうか」。何度となく航空券を予約しようとして、途中でやめた。こっそりと行くことはできるかもしれない。しかし僕はそうもいかない。日本で旅を我慢している人には不快に映るだろう。
 理由はわかっていた。世界の国々が、コロナ禍のなかでの海外旅行に対して共通の指針をもっていないことだった。各国が独自に規制を行うため、渡航する側が混乱してしまうのだ。
「自分のなかで基準をつくるしかない」
 それが結論だった。渡航先にウイルスをもち込まず、日本にも、もち帰らない。そのためのルールをつくることだった。
 昨年末、タイ政府は外国人への入国許可制度をつくった。多くのアジアの国がビザを課しているが、タイはCEO(入国許可)をとればビザを免除された。
 僕は「歩くバンコク」というガイドブックの責任編集者である。昨年の春、その編集作業は進んでいたが、そこで新型コロナウイルス。すべてが止まってしまった。それからほぼ1年……。取材を依頼した人のなかには、日本に帰国してしまう人も出てきていた。その契約や支払い、今後の対応など、タイに行く必要はあった。
 タイへの入国条件をみる。PCR検査の陰性証明、14日間の隔離、その間に2回のPCR検査。これだけやれば、タイにウイルスをもち込むことはないだろう。
 次に帰国。4日間の隔離。その間に2回のPCR検査。そこから自主隔離が帰国日から2週間。これなら日本へももち込まない気がした。
 2月末にタイに出かけた。強制隔離があるから、バンコクの街に出たのは3月になっていたが。
 その様子をいま、僕のYouTubeチャンネルで連載をはじめた。多くの方が観てくれている。誰しも海外旅行に出たい。しかし不安がある。渡航先にもち込まず、日本にももち込まないための納得する基準づくり。もちろん感染防止に完全はないが。
 そんな試行錯誤のなかで辿り着いたのが、冒頭で紹介したオンラインサロンだ。




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Posted by 下川裕治 at 11:56Comments(1)