インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2021年07月26日

甲子園予選の夏の空

 高校野球を観にいってきた。八王子駅からバスで10分ほどのところにある野球場だった。正式にはスリーポンドスタジアム八王子というらしい。検索すると、八王子市民球場とかっこ付きで記されていた。僕の世代にとって高校野球というと市民球場がしっくりとくる。
 真夏の暑い日、高校野球を観にいくことが恒例になってしまっている。きっかけは沖縄だった。石垣島の八重山商工が夏の甲子園への出場を決め、その話を本にするために、何回となく球場に足を運んだ。その年以来、毎年、6月から7月にかけて沖縄に向かうようになった。コロナ禍で沖縄での野球観戦は難しい。八王子はそんななかで決めた。
 夏の甲子園予選の試合は、とにかく暑い。高校野球だからナイターではない。昼間である。高校野球で使われる球場はスタンドに日射しを遮る屋根がないことが多い。真夏の強烈な日射しに晒されての観戦になる。
 沖縄では決勝に近づいていくと、沖縄セルラースタジアム那覇で試合が行われるようになる。プロ野球のナイターにも使われる球場だから、スタンドには屋根があり、日陰で観戦が可能になる。しかしそこに辿り着く前の予選となると……。
 スリーポンドスタジアム八王子の写真を見てみた。やはり……。八王子市民球場の雰囲気だ。炎天下の観戦を覚悟した。
 これまでも何回か、灼熱の観戦を経験している。いくつかの対策がある。帽子かタオルで必ず頭を覆う。半袖は危ない。腕が腫れあがった経験がある。僕は半袖の上に、薄いジャンパーを羽織ることにしている。水はペットボトルで2本。塩分をとる飴も。足の甲が日射しで熱をもつのを防ぐために、足の位置を何回か変える……。そんな対策を確認しながら球場に向かった。
 入口はバックスクリーンの裏にあった。コロナ禍の予選である。検温とアルコール消毒を終えて球場に入った。
 フィールドが見えるまでの時間が気に入っている。バックネット側から入ると、やや暗い通路の先にぱっと球場が開ける。そこに白球を追う高校生たちがいる。
 今回はバックスクリーン側だった。緩やかな坂道を進むと、唐突にフィールドが広がった。なんていい眺めだろう。球場を白いユニフォームが動き、その上に夏の空が広がっていた。
 早実と国学院久我山の試合だった。早実には清宮福太郎君がいる。そのためなのか、観客も多かった。
 早実側のスタンドで試合を眺めていた。スマホで写真でも撮ろうと思ったが、日射しが強すぎて画面が見えない。暑さはしだいに痛さに変わっていく。
 そんなときは空を見あげる。怖いぐらいに青い空と不安定な雲。そう僕が高校野球が恒例というのは口実で、この空と土のにおいの記憶が反応するために球場に足を運ぶのかもしれないと思った。
 試合は国学院久我山の快勝だった。

■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
面白そうだったらチャンネル登録を。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=東京再発見の旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji

  

Posted by 下川裕治 at 15:13Comments(0)

2021年07月20日

【新刊プレゼント】『「裏国境突破」 東南アジア一周大作戦』

下川裕治の新刊発売に伴う、プレゼントのお知らせ記事の投稿です。

【新刊】



下川裕治 (著)


『「裏国境突破」 東南アジア一周大作戦』

朝日文庫


◎ 本書の内容

あの国境を越えられるか。ミャンマーの陸路国境開放をきっかけに、インドシナの「マイナー国境」通過に挑む。ラオスの川くだりでは雨風にさらされ、ミャンマーの山越えではバスが横転。肋骨を折りながらも歩いた越境ストーリー。変化する国事情をコラムに収録。


【プレゼント】

新刊本『「裏国境突破」 東南アジア一周大作戦』 を、

抽選で"3名さま"にプレゼントします!

応募の条件は以下です。

1.本を読んだ後に、レビューを書いてブログに載せてくれること。
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)

応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2021年8月3日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。

えんぴつお問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php


1.お問合せ用件「その他」を選んでください。

2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。

 ・お名前
 ・Eメールアドレス
 ・ブログURL
  (記事を掲載するブログ)
 ・郵送先住所
 ・お電話番号
 ・ご希望の書名
  (念のため記載ください)


今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。

えんぴつアマゾン:
「裏国境突破」 東南アジア一周大作戦(朝日文庫)
  

Posted by 下川裕治 at 19:28Comments(0)

2021年07月19日

国境封鎖のなかで「国境旅」

『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』(朝日文庫)が発売になった。タイのバンコクを起点にカンボジア、ベトナム、ラオス、ミャンマーを陸路で巡った。マイナーな国境を越えていく旅である。
 本が発売になって、こういうことをいうのはなんだが、この本で越えた国境のすべてがいま、封鎖されている。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためである。そこにミャンマーのクーデターも加わった。
 空港からの出入国も制限されているが、どうしても行かなくてはいけない事情がある人もいる。それに比べると、陸路国境にはその役割が薄いということなのだろう。感染初期の段階から国境は閉められた。おそらく1年以上、人や物資の往来は制限されている。もっともアジアは国境を挟んで両側に家族や親戚がいるところが多い。地元の人の行き来はあると思うが。
 この本の発行は感染が拡大する前から決まっていた。国境封鎖はマイナス材料だが、僕の本はガイド色が薄い。読み物の要素が強いから、国境閉鎖はあまり影響を受けないようだ。売れ行きも悪くないという話に胸をなでおろす。
 この旅のきっかけになったのはミャンマーだった。暗く孤立した軍事政権の時代が終わり、民政化が進むなかで、いくつかの国境が開いていった。外国人も自由に往来できるようになった。開かれた国境というものは、軍事政権とは相性が悪いものらしい。
 ところがそれから8年ほどがすぎ、ミャンマーは再び軍事政権に戻っていこうとしている。国軍のクーデターを多くの国民は受け入れていないが、彼らは周囲の声を聞こうとはしない。
 そのなかで、ミャンマーでの感染者が急増している。医療体制は崩壊し、病院は満床状態。自宅隔離しかなく、犠牲者は日を追って増えている。火葬場には順番を待つ長い列ができているという。
 日本はコロナ禍でのオリンピックである。僕はあまり関心がないので、通常の日々だと思っているが、そうもいかない。明日、19日は休みかとばかり思っていた。卓上カレンダーもそうなっている。しかし、オリンピックに合わせて休日が変更になっていた。カレンダーが印刷された後の変更だった。
 19日は平日ということで、ゲラの戻しが19日になってしまった。印刷所が22日と23日を休むため、19日に戻さないと本が出ないと出版社からいわれた。
 今日は朝からゲラと格闘である。
 前からいっているが、オリンピックで盛りあがるのは限られた国にすぎない。世界の半数以上の人が無関心で、オリンピックが日本で行われることを知らない人も多い。
 オリンピックに反対はしないが、基本的にはアスリートのものだ。国家は無縁である。世界の人々が注目していると思わないほうがいい。ましてやコロナ禍の大会である。日本は場所を提供する意味合いが、通常のオリンピック以上に強くなっている。
 もう少し淡々と進められないのだろうか。オリンピックを前に気が重い。

■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
面白そうだったらチャンネル登録を。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=東京再発見の旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
  

Posted by 下川裕治 at 12:43Comments(0)

2021年07月12日

「クリックディープ旅」の連載が終わる・後編

 9月末で終了になるネット連載の「クリックディープ旅」。ここから多くの本が生まれた。しかし、活字世界の停滞とネット社会の広がりのなかで右往左往を繰り返していた連載でもあった。前編ではクリック数を稼ぐ構造と、ネット社会に移行したなかで評価された読み物という話をした。
 後編は世知辛いお金の話からはじまる。
「クリックディープ旅」は、必ず取材に出ていた。目的地の9割以上は海外。当然、費用がかかる。ネット連載のギャランティではとても足りない。企画が実現しないのだ。
 そこで出版社の企画と擦り寄っていくことになる。
 活字離れのなか、全体的な本の売りあげが落ちてきていた。僕の場合、海外に出向かなくてはならない。いくら貧乏旅行の下川裕治といわれても、ある程度の費用はかかる。
 それが出版社の予算にのしかかっていた。旅の経費を計上すると、本の単価があがってしまう。すると売れ行きに影響がでる。そこで多くなってきたのが相乗りだった。2~3社の企画を1回の旅ですませ、経費を軽減していく方法だった。しかしそううまくいくものではない。
 そこでネット連載だった。連載のギャランティを丸ごと取材費にあてる発想だった。実質的に収入が減ることになるが、そうでもしないと本が発行されなかった。
 ひとつの流れができあがっていく。出版社との話し合いや編集会議で、本の企画が決まる。その旅をネットで連載し、そのギャラを旅の経費に当てていく。ネット連載は本のPRにもなった。
 この連載から多くの本が生まれた背後にはそんな事情があった。本の企画が決まっているのだから、連載から本への流れはスムーズだった。
 編集会議では、企画案が練られていく。何回か会議が開かれ、ようやく発行が決まる。連載が載るサイトにしても、それだけ練られた内容だから、やはり面白い。互いの補完関係もできあがっていった。
 朝日新聞社には出版部門もあった。もちろんそこから出版される本が多かったが、他社からも出版できた。そんな時期がしばらく続いた。
 旅の本を書く知人からは、「下川さんはよく本が出せますね。旅の経費はどうしてるんですか」とよくいわれた。
 実はこんな構造があって……と伝えたが、僕には幸運なことだったとも思う。
 若い書き手はなかなか本が出せず、ネットの世界で原稿を書く人が多くなっていった。しかしネットの世界のギャランティは安かった。ネット記事の読者が多くても、それが本になると反応が少ないこともよくあった。やはり読者の感覚が違うのだ。
 活字からネットへ。端境期だったのだ。僕の「クリックディープ旅」は、そのなかを泳いでいた。
 しかしコロナ禍で旅が封印された。「クリックディープ旅」の連載終了の原因は、旅行関係から広告がまったく入らないことだったが、連載が続いた年月の間に、ネットの世界も写真から動画へと移っていた。そういう時期だった気がする。

■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
面白そうだったらチャンネル登録を。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=東京再発見の旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji

  

Posted by 下川裕治 at 15:20Comments(0)

2021年07月05日

「クリックディープ旅」の連載が終わる・前編

「クリックディープ旅」というネット連載が9月いっぱいで終わることになった。連載ペースは週1回、10年以上続いた。多くの本が生まれた連載でもあった。
 新潮文庫の『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』、『「裏国境」突破東南アジア一周大作戦』などの長くて辛い旅。『週末アジアでちょっと幸せ』ではじまった朝日文庫の『週末アジアシリーズ』は10冊を超えている。双葉文庫の『一両列車のゆるり旅』や『東南アジア全鉄道制覇の旅』などの鉄道旅。そして中経の文庫の『ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行』などの『ディープすぎる旅』シリーズなどだ。きちんとカウントしたわけではないが、40冊以上の書籍にまとまっているはずだ。
 その元になった連載といえば存在感はあるが、そこには出版社や新聞社という活字の世界とネットとの間で揺れる内部事情が横たわっていた。振り返ると、右往左往の10年なのである。
 話がもちかけられたのは朝日新聞社の広告局からだった。新聞の購読者数が減少するなかで、広告媒体としての新聞という存在に危機感が漂っていた。時代はネット社会にうごきつつある。そのなかで、広告局がサイトの運営に入り込んでいくという構図だった。
 当時、ネットの広告代金はクリック数で決められていた。広告局の担当者は、こう口を開いた。
「クリック数が増える企画がほしいんです」
 そこで考えたのが「クリックディープ旅」だったのだ。ひとつの旅を紹介していく。写真15点を基本的には時系列にまとめ、その写真に僕が説明を書いていく。
 つまり読者は、「次はどこへいくんだろうか」、「ちゃんとバスは目的地に着くの」といった旅を追体験していく。そうして進んでいくうちに15回はクリックしてくれる。1点の旅紹介で1クリックの15倍。そんな下心ありありの企画だったのだ。
 そのとき、なぜ、写真説明の字数を150字前後にしたのか、記憶はない。日々、本の原稿を書いているわけで、せめて150字ぐらいはないと、いいたいことも書き込めない……程度の動機だった気がする。
 しかしこの字数が、やがて連載を支えていくことになる。旅の続き写真にしてクリック数を稼ごうとする子供騙し作戦はクライアントからすぐに見破られ、その内容を観ている時間の長さに広告料金が対応するようになっていったのだ。そこで文字数の多さだったのだ。
 この企画がスタートした頃から、一般の方が自分の旅のブログを写真中心で掲載するようになっていった。写真が縦に何枚も続き、そこに10字から20字といった写真説明が添えられるスタイルだった。それに比べると、「クリックディープ旅」の原稿は長かった。僕が書くものだから情報というより、読み物に近くなる。それがネット社会では特徴になっていった。
 しかし企画がはじまるまでには高い壁があった。それはギャランティを含めた費用だった。そこで本の販売が落ち込む出版社が絡んでくることになる。    (続く)

■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
面白そうだったらチャンネル登録を。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=東京再発見の旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji

  

Posted by 下川裕治 at 12:13Comments(0)