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ナムジャイブログ

2022年03月28日

桜の季節に救われる

 東京が桜の時期になった。今日、新宿御苑の桜を家族と一緒に見てきた。事前予約制だった。娘が予約をとってくれた。園内で酒を飲むことはできないが、シートを敷き、その上でおはぎを食べた。
 花曇りの穏やかな1日だった。
 季節の足どりは確実である。新型コロナウイルスの感染が広まってから、このたしかな季節の変化にどれだけ救われただろうか。
 しかしウイルスも自然界を構成する生物である。集まると結晶をつくるから鉱物の性質ももっているが、これだけの痛めつけられたのだから、人間の意識としては生き物に傾いている。そして組み込まれた遺伝子情報で感染を広め、そして弱毒化の道をきちんと歩んでいった。それはありふれた自然の摂理だった。うろたえていたのは人間だけだった。
 新型コロナウイルス対策の失敗は、ウイルスとの共存をめざさず、闘う道を選んでしまったこと……そう専門家はいう。そのあたりは頭でわかっても、体がついていかない。やはりウイルスは怖い。本質的には本能とのせめぎあいだったのか。
 週末に横浜の鶴見にあるリトル沖縄に行ってきた。4月2日にここからライブをすることが決まった。
 かつてこの一帯には多くの沖縄出身者が暮らしていた。4月11日から新しいNHKの朝ドラ「ちむどんどん」がはじまる。沖縄から東京にやってきた女性の物語だ。その舞台は鶴見でもある。
 しかしいまの鶴見は日系ブラジル人の街。といっても沖縄……。どういうことかというと、沖縄から南米に渡った沖縄の人々の2世や3世が暮らしているのだ。
 彼らが街を案内してくれることになっている。彼らのパワーを背に受けて、街を歩いてみようと思っている。。
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 背中を押してくれる本を読んだ。「コールセンターもしもし日記」(吉川徹著。三五館シンシャ発行)である。
 これまでも何回かコールセンターで働く人と会ってきた。東南アジアに暮らしながら日本のコールセンターで働く人は少なくないからだ。皆、口では希望を口にしたが、目に輝きはなかった。タイのバンコクにあるコールセンターで働く女性はこういった。
「電話とヘッドセットが並ぶ部屋に入ったとたん、心を無にします。クレームをひたすら聞きつづけるにはそれしかありません」
 この本は添乗員や交通誘導員といった仕事に降りかかるトラブルを日記風にまとめたシリーズの1冊である。そのコールセンター版なのだが、著者の人生がそのなかに挟みこまれ、いい味を出している。著者は大卒サラリーマンだったが、離婚やパニック障害に見舞われ、会社を辞めた。それが30代の前半。それから20年以上、派遣社員として働きつづけた。コールセンターはその派遣先だった。
 途中、タイが気に入り、何回か滞在する。3ヵ月ほどタイに向かい、帰るとアパートの部屋はカビにやられていた。
──こんな部屋にしか住めない日本での現実に情けなさが込みあげた。
 彼は新しい派遣先を探し、子供の養育費を払いつづけた。会社に勤めつづけて入れば、それなりの地位や収入を手にしていたのかもしれないが、いまだアパート暮らしだ。しかし成長した息子と3ヵ月に1回ほどの割合で会うと、「しみじみと幸せを感じる」と著者は書く。臆面もなくといった表現の背後には派遣社員として辛い半生が横たわっている。
 それに比べれば、コロナ禍は……。そう思えてくる。今年の桜は花房が少し大きいような気がした。

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○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
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Posted by 下川裕治 at 10:17Comments(0)

2022年03月21日

行かふ年も又旅人也

『「おくのほそ道」をたどる旅』(平凡社新書)が発売になった。300年以上前、芭蕉と曾良が歩いた道筋を路線バスや徒歩でたどった旅である。
 コロナ禍のなかでの旅だった。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の間を縫うように旅を進めた。いまもそうなのだが、新型コロナウイルスの感染とともにすごす時期は、どこか、コンピュータのロールプレイングゲームの画面を見ている気分に似ている。画面の断片は記憶に残っているのだが、時間の感触がない。記憶は白濁しているのだ。
 つまりは時間の空白である。
「おくのほそ道」をたどる旅も、旅の記憶は鮮明なのだが、そのとき、日本でなにが起きていたかという接点がない。ウイルスはアルファ株だったのか、デルタ株だったのか。それすらはっきりしない。
 旅は明確だが、社会環境が濁っている。不思議な感覚でこの本を眺めている。
 本棚には芭蕉に関する本が何冊もあった。黄ばんだ岩波新書が多い。ずっと気になっていたのだ。
「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」
 名文である。月日というものを行き交う旅人にしてしまう文章にはいまでも唸る。そこから去来とか、土芳といった芭蕉の弟子の本も一応は読んだのだが、正直なところ、よくわからなかった。単なるダンディズムではないかとさえ思ったこともある。
 しかし旅の途中でふと、思った。月日はコロナウイルスのなかで頼りなく移っていく。元の場所に戻ることもないだろうが、戻りたくもない辛い社会だ。しかしそのなかでたしかなものは、いまこうして歩いているということ。それしかない。しかし旅というものは常に移動していく。
 芭蕉が「おくのほそ道」で得たものは、不易流行の具現化だといわれる。こういうことをいわれると、またわからなくなる。不易流行の意味は、「あらゆるものは変化してやまない」ことだといわれる。だから年月を旅に重ねたということになるのだろうか。
 ひょっとしたら、コロナ禍に「おくのほそ道」を歩いたからこそ、なんとなくわかりかけてきたのかもしれない。
 芭蕉が旅をしたのは元禄の時代である。町人を中心とした文化が栄えた平和な時代のようにいわれるが、はしかやコレラ、天然痘などの疫病が流行っている。
 この旅のスタートは、隅田川を遡る船だった。そこで隅田川花火の案内が流れた。慰霊と疫病が鎮まることを願ってはじまったという話が紹介された。調べると少し違うようだが、花火には、一気に吹き飛ばしてほしい、という思いを載せやすい気もする。
 なんだか少しわかってきたところがある。もう一度、おくのほそ道を歩いてみるともっとわかる?

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Posted by 下川裕治 at 16:04Comments(0)

2022年03月16日

【新刊プレゼント】「おくのほそ道」をたどる旅

下川裕治の新刊発売に伴う、プレゼントのお知らせ記事の投稿です。

【新刊】「おくのほそ道」をたどる旅



下川裕治 (著)
「おくのほそ道」をたどる旅

平凡社


◎ 本書の内容
松尾芭蕉が門人の曾良を連れ「奥の細道」の旅に出てから300年余り。世界を旅してきた著者が、「おくのほそ道」をたどる旅に出た。史跡を訪ねる旅のなかで、何を感じ、何を思うのか。

【プレゼント】

新刊本『「おくのほそ道」をたどる旅』 を、

抽選で"3名さま"にプレゼントします!

応募の条件は以下です。

1.本を読んだ後に、レビューを書いてブログに載せてくれること。
(タイ在住+日本在住の方も対象です。)

応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2022年4月20日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。

えんぴつお問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php


1.お問合せ用件「その他」を選んでください。

2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。

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Posted by 下川裕治 at 16:27Comments(0)

2022年03月14日

ポストコロナは中国に向かう?

 いまバンコクにいる。今日、PCR検査の結果を受けとる。陰性なら今晩の飛行機で帰国する。
 昨日、「歩くバンコク」という地図型ガイドのデザイナーに会った。僕はこのガイドブックの製作にかかわっている。
 コロナ禍が収まれば、このガイドブックを発行することになると思うが、地図に落とし込まれている店舗が大幅に変わったしまう可能性がある。コロナ禍のなか、バンコクでは多くの店が休業や廃業に追い込まれてしまった。
「でもね、いい店はちゃんと残っているんです。ある意味、淘汰されたような感じがあります。コロナ禍前から人気があまりなかった店が姿を消したというか」
 新型コロナウイルスに席巻された世界の街は同じような傾向にある気がする。それは日本に当てはまる。
 タイに入る前、カンボジアに滞在した。シェムリアップでは、知人のバイクの後ろに乗って街をまわった。シェムリアップの大きなホテルは、国道6号線に沿って並んでいる。客室数が300、400といった規模だ。そしてその大多数が休業している。
 それに比べ、客室数の少ないホテルは営業をつづけている。カンボジア人が利用するようだ。
 新型コロナウイルスの2年以上つづいた嵐が収まったとき、どうなるのだろうか。
 大型ホテルは難題を抱えているという。2年間近く使われなかったホテルは、水まわりや空調などの基礎部分が利用できなくなっている可能性が高いという。修復してオープンということになるが、その費用は莫大なものらしい。家もそうだが、人が住まなくなった家は痛みが激しい。カンボジアは南国。アリなどの被害も大きくなる。収入が2年間なかったホテルに、その資金があるかどうか。
 大型ホテルのなかには、廃業するところも多いと噂されている。
 シェムリアップの人たちの意識も変わったきたらしい。団体客を受け入れるスタイルの観光を見直す動きが出ているという。
「団体といえばほぼ中国人です。中国のエージェントは料金をものすごく値切ってくる。それは他の国々の比じゃない。ホテルは部屋が埋まれば……という発想で受け入れてきましたが、終わってみれば、たいした儲けになっていないことが多かった。それはホテル以外の観光バスとかガイドにもいえること。それよりも個人や家族客にシフトしていったほうが収益があがるって考える人が増えてきたんです」
 かつての日本の温泉宿がそうだった。大口の団体客を受け入れていったが、しだいに個人やグループ、家族客へシフトしていった。いまだ使わることが少ない大きな宴会場が残っている宿も多いが。
 世界規模でみれば、新型コロナウイルスはその変節点になっていく可能性が出てきているのかもしれない。それは単なるタイミングだったのかもしれないが。
 中国の武漢からはじまったコロナ禍は、最後には中国に向けられる? 
 世界人々はポストコロナをどう見据えているのだろうか。

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Posted by 下川裕治 at 12:25Comments(1)

2022年03月07日

入国規制の緩和も難しい

 カンボジアにしばらく滞在し、3月5日にバンコクに入った。プノンペンからバンコクまでのフライトが2回、欠航になった。その都度、タイランドパスの申請が必要だった。入力するデータには、バンコクまでのフライト番号が必要なのだ。
 タイランドパスは申請後、タイ政府から送られてくる許可を待たなくてはならない。添付されるQRコードを空港で読みとるシステムだ。2回目の欠航の連絡が入ったのは、プノンペンを出発する2日前。これでタイランドパスが間に合う? 薄氷を踏むようなタイ入国だった。このあたりの詳しい話は、アエラドットに書くので、そちらを。
 さて、タイ入国。タイの入国規制緩和も急だった。これまでは到着後、その足で病院。そこで検体を採取し、その結果を待つまで隔離ホテルで1泊。そして5日目も同じことを繰り返すことになっていた。
 しかし3月1日から、5日目の検査が廃止になった。タイの場合、PCR検査と隔離ホテルは一体化している。ホテルは病院と提携して検査と隔離を行う。その料金は先払いだ。
 タイランドパスを申請するとき、この料金を払い、検査代込みのホテルのバウチャーを添付しなくてはいけなかった。客が大幅に減ってしまったホテルの救済策も兼ねていた。
 僕が1回目のタイランドパスを申請したとき、5日目の検査が廃止になる発表の前だった。2泊分の代金を払ってバウチャーをつくった。
 しかし5日目の検査が必要なくなったのだから、その分は返金するのが筋である。しかしほとんどのホテルが応じなかった。ホテルにしたら、まず病院への支払いをキャンセルし、準備した部屋もキャンセルしなくてはならない。責任は国にある。国がその分を負担すべきだと主張。決着をみないまま、3月1日になってしまった。
 僕は3月5日にタイ入国した。ホテルにチェックインするとき、当然、5日目の話になる。
「5日目をキャンセルしたら返金になるんですか」
「5日目は泊まることもできます。キャンセルはお客さんの意向ですので」
「PCR検査は?」
「それはありません」
「返金も?」
「そこは病院の話で……」
 苦しい返答だった。
 これはかなり問題になると思った。世界でどのくらいの人が、損をするのかはわからないが。今後、タイランドパスを申請する人も手が止まる。もし申請後になにかが緩和されても、その代金が返ってこないなら、落ち着くまで待とうか……と考える。タイ政府はせっかく規制を緩和したというのに、それが逆効果を生んでしまう。
 入国規制を強化していくのも大変だが、追加料金を徴収するほうがまだ楽だ。緩和していくときの返金となると、どういう手続きをすればいいのか。隔離ホテルへの支払いは、アゴダやエクスペディアなどのホテルサイトを通している人も少なくない。だからタイらしい曖昧さに落とし込もうとしているのかもしれないが。
 今日(3月6日)、チェックアウトするときにこういわれた。
「5日目の料金は90%返金することになりました」
 一件落着? 国、ホテル、病院の間の喧々諤々が目に浮かんだ。
 こんな事情で、3月5日の夕方に予定していたライブは、3月8日20時30分からに変更。内容はバンコクの悩んでしまう日本語看板の謎を皆さんのコメントを参考に解いていくライブです。うまくいくかどうか。
https://twitcasting.tv/c:shimokawayuji/shopcart/138245


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Posted by 下川裕治 at 12:07Comments(0)