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ナムジャイブログ

2023年11月27日

ミャンマー速報のボリュームが増えた

 僕は毎週、ユーチューブでミャンマー速報を配信している。ミャンマーに住む日本人やミャンマー人から情報をもらい、僕がまとめている。できる限り安全な通信手段をつかってのやりとりだ。
 2021年2月1日にミャンマーでクーデターが起きた。速報はその直後からはじめた。第1回の配信は2021年2月4日である。
 毎回の内容は、だいたい、1600字ぐらいになる。しかしここにきて、その分量がだいぶ増えている。
 1027作戦の影響だ。10月27日、兄弟同盟を結ぶ少数民族軍MNDAA(ミャンマー民族民主同盟軍)、TNLA(タアン民族解放軍)、AA(アラカン軍)がミャンマー国軍に向かって攻撃を開始した。場所は北部のシャン州。1ヵ月がすぎ、いま170ヵ所を超える国軍の拠点を占拠している。
 国軍は劣勢を強いられている。地上戦では対抗できず、空爆を繰り返すしかない。
 ミャンマーは多民族国家である。100を超える少数民族がある。主要民族はそれぞれ武装化した軍隊をもっている。ひとつの民族でも軍事組織はいくつかあるため、その数はかなりになる。頭文字のアルファベットをつなげた名前で呼ぶことが多く、これを覚えることはかなり大変なことだ。今回の兄弟同盟にしても、MNDAAとかTNLAといった名前が頻繁に飛び交う。少数民族軍なかには国軍寄りの組織もある。構造はなかなか複雑だ。
 2011年、ミャンマーはそれまでの軍事政権から民政化に舵を切った。アウンサンスーチー氏が率いるNLD(国民民主連盟)が政権を握った。約10年、ミャンマーは民主化の時代を経験したが、そのときも少数民族とうまくいっていたわけではない。しかし軍事政権時代に比べれば、はるかに風通しはよくなってはいた。
 しかし国軍はそこでクーデターを起こす。少数民族軍は敵対するが、その軍事力は子供と大人ほどの違いがあった。国軍は軍事ヘリコプターや戦闘機、戦車、大型の銃火器などをもっているが、少数民族軍の装備は脆弱。ゲリラ戦にもち込むしかない。しかし今回の1027作戦でも、少数民族軍は国軍と互角、いや、それ以上の戦闘をつづけている。それは兵士の意識の違いだといわれている。かき集めた感が拭えない国軍は士気が低い。
 1027作戦に呼応するように、ほかの民族の軍も国軍への戦闘を開始した。PDF(国民防衛軍)も歩調を合わせはじめた。
 いま、ミャンマー各地で衝突が起きる内戦に近い状態になりつつある。ミャンマー速報の内容が増えてしまうのだ。
 1027作戦が起きた当初、国軍は、「前にもこの種の反抗は起きた。しばらくすれば沈静化する」と高をくくっていたが、最近、目の色が変わってきている。
 しかし少数民族軍が占拠するエリアはまだ広くはない。マンダレーの攻防が分かれ目という説もあるが、そこまでの力は少数民族軍にないという分析が多数派だ。
 これからも粘り強くミャンマー速報をつづけていくつもりだ。少ない経費で配信できることがユーチューブの魅力でもある。
 


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Posted by 下川裕治 at 10:16Comments(1)

2023年11月20日

まだ、できる?

 久しぶりにアメリカとカナダをまわった。コロナ禍が収束したからというわけではないと思うが、入国審査はスムーズだった。理由はわかっている。僕のパスポートが新しくなったからだ。以前のパスポートには、パキスタンの入国記録があった。アメリカはパキスタンをテロ支援国家に指定している。何回か別室で調べられた。
 ロサンゼルスとカナダのトロントでアメリカに入国の審査を受けたが、あのしばしばトラブルを起こす入国審査機が消えていた。直接、ブースの列に並ぶスタイルになった。はっきりいって、このほうが早い気がする。
 トロントで日本人の知人夫婦に会った。コロナ禍が明け、トロントに移住していた。
 カナダはいま、日本の若者の出稼ぎ先としてちょっと注目されている。トロントの最低賃金は時給16.55カナダドル。1ヵ月働くと29万円ぐらいにはなるらしい。飲食店ならそこにチップが加算される。月収40万円を超える人もいるという。もちろんその分、物価も高いからそれほど稼げるわけではないというが。
 しかし知人夫婦は違った。日本から仕事を受け、それをトロントでこなす。俗にいうところの「ノマドワーカー夫婦」だった。年齢は40歳代。夫婦ともの日本でそれなりの経験を積んでいたから、定期的な仕事も受けている。これで暮らすことができるという。もっともビザの関係で、カナダで働くことがまだできない。日本から収入を得るしかないのだが。
 トロントは2回目だが、いい街だと思う。街はそれほど大きくない。オンタリオ湖に面していて、湖畔に立つとホッとする。日本人夫婦にいわせると、人もいいという。
 夫婦と夕食をとり、宿に戻ったが、なんだか街を歩いてみたい気分だった。少し寒かったが、オンタリオ湖畔のベンチに座った。宿のすぐ近くだった。
 30年ほど前を思い出していた。そのとき、僕は家族でバンコクに暮らしていた。1年弱の滞在だったが、その間、僕は収入がなかった。日本で貯めた資金で暮らしていただけだった。アジアに暮らしたい……そんな思いが高じてのバンコク暮らしだった。
 資金も心細くなっての帰国だったが、許されれば、まだバンコクには暮らしたかった。
 当時はフリーランスのライターだった。一見、自由な仕事に映るかもしれないが、打ち合わせは日本。原稿を書いた後のゲラのチェックなど、基本は日本、いや東京にいることが前提だった。インターネットというものがまだ普及していなかったのだ。
 しかし時代は変わった。打ち合わせやゲラのやりとりは、すべてインターネットでできてしまう。そこにコロナ禍が拍車をかけた。在宅ワークからノマドワークへの道は実に平坦になった。海外にいてもzoomで取材をこなし、原稿やゲラのやりとりもインターネットを使えばなんの問題もない。
 30年前、いまのような環境があれば、バンコクにいながら仕事をすることができた。収入を得ることができたのだ。
 仕事というものは、ノマドワークで完結するほど甘くないことはわかる。しかしそれも程度の問題のような気がする。
 しかしある程度の年齢の日本人が海外に暮らすことは意味がある。いまの欧米に暮らしたら、シングルマザーの問題や、LGBTQの環境にもより敏感になる。いやそれ以上に、日本という生きづらい社会の外側に居場所をみつけられた気もする。それはカナダ出稼ぎの若者とは違う。
 トロントに暮らす夫婦が少し羨ましい。ベンチで眺める夜空を、ニューヨークからの飛行機がしばしば横切っていく。トロント・シティ空港とニューヨークは飛行機で1時間ほどなのだ。彼らはそういう世界で暮らすことを選んだ。コロナ禍は内向きの心理を生んだかもしれないが、その一方で、海外という選択肢を広めてもくれた。
 まだできる? 少し心が軽くなる自分がいた。

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Posted by 下川裕治 at 18:25Comments(1)

2023年11月18日

新陳代謝という時差のからくり

 発売になった『歩くバンコク2024年版』。今号の特集は「懐かしバンコク……街歩き」だ。バンコクに残った昔ながらの道を歩いている。
 特集の企画は、製作にかかわる人たちの意見を反映している。前号は「スマートバンコクに大変身」だった。開通した電車の新路線や絶景タワー、自然公園……。すべてコロナ禍の間にバンコクに出現したものだった。
「この違いなんだろうな」
 2冊を見比べてそう思う。
 コロナ禍だった。日本もタイも新型コロナウイルスに苦しんだ。しかし日本とタイはそのなかで起きたことがずいぶん違う。
 バンコクの都市型電車の路線延長はコロナ禍前から進んでいた。経済成長のなかで肥大化するバンコクのインフラを整えることは急務だった。そこを目に見えないウイルスが襲う。しかしタイはその工事を止めることはなかった。それが成長のエネルギーというものかもしれない。
 その一方で、休業を強いられた店舗などへの補償はほとんどなかった。耐えきれない店は廃業に追い込まれた。コロナ禍の収束が見えてくると、廃業した店舗を購入する人が現れ、新しい店が次々にできていった。街の新陳代謝が起きたのだ。
 転じて日本。都市のインフラはすでにかなり整っていた。新路線網といった大規模な整備はすでに終わっていた。つまりそれだけタイより進んでいたわけだ。
 政府は休業に対する給付金や補助金を次々に実行していった。店舗はタイ同様に休業を強いられたこともあったが、給付金で生きのびた店が多かった。つまり新しい店の誕生はそれほど多くなく、街の風景もあまり変わらなかった。
 コロナ禍の日本を振り返ると、そこにあるのは維持と停滞だった。日本は時間を止めたということだろうか。
 コロナ禍が明け、タイ好きの人たちが3年ぶりのバンコクを訪ねる。そこで目にしたものは、スマートに変身していくバンコクだった。はじめはその変容ぶりに目を輝かせていたが、やがて気づくことになる。
 愛したバンコクは消えていく……。
 そこで「懐かしいバンコク」が恋しくなってくる。それが特集に反映された気がする。
 それは発展する街と、すでにピークをすぎた街の間にある時差のからくりのようなものだった。誰が悪いわけではない。それは、浮き沈みのある人生に似た街の運命のようなものだった。
 毎年、バンコクを訪ねていれば、その変化についていったのかもしれないが、3年つづいたパンデミックは、街がもつエネルギーの違いを鮮明に浮きだたせてしまったのだ。
 しかし以前のバンコクを知らない若者たちは、便利になったバンコクをすんなり受け入れていく。そこにもやはりタイのいい加減さや猥雑さは残っているから、若い日本人は彼らなりのバンコクに出合っていく。
 バンコクの街には新陳代謝が起きた。そしていまの日本人に起きているのは旅人の新陳代謝という気がする。


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Posted by 下川裕治 at 12:11Comments(0)

2023年11月06日

円安が生む内向き社会

 11月6日、『歩くバンコク2024年版』が発売になる。早い書店では週末から店頭に並んでいるはずだ。7日の夜の便でバンコクに向かう。できあがった本を製作にかかわった人たちに届けるためだ。
 今回の『歩くバンコク』は、空港や各エリアの駅近の両替店を写真と一緒に紹介している。円安のなか、両替で少しでも多くのタイバーツを手に入れるには両替店を利用するしかないからだ。
 現金の日本円をタイのバーツに両替するとき、日本の空港などでの両替のレートが最も悪い。次いでタイの銀行。いちばんレートがいいのがタイにある両替店だ。仮に1万円を両替した場合、日本の空港での両替と、タイの両替店では、200バーツを超える差が出てしまう。両替のレートは日々変わるから、正確な差を示せないが、タイの両替店を利用すると1万円両替で800円以上、得をすることになる。『歩くバンコク』を見て、両替店で両替すれば、この本代は確実に浮くと思う。
 円安、そしてじりじりとあがるタイの物価はつらい。さまざまな面で逆転現象が起きている。ときにタイは安いという概念を変えなくてはいけない。
 通信環境もその傾向が見えてくる。僕はこれまで、タイに到着したとき、空港にあるAISやDTACのブースでシムカードを買って挿れてもらっていた。前回行ったときは、7日間使うことができるAISのツーリストシムカードが299バーツだった。そのときのレートで1200円ほどだった。
 しかし日本でネットで買うとそれよりも安くなることがあるらしい。円安が進んでいるからだ。
 しかし日本でシムカードを買った場合、自分で挿れなくてはならない。事前に動作確認ができない不安があった。バンコクの空港で買うときは、AISのスタッフが挿れてくれるので、その場でつながったかどうかの確認ができる。
 すると知人がこんな話をしてくれた。
「最近はデータローミングのほうが安いらしいんです。楽天モバイルはある容量まで無料って話です」
 僕は楽天モバイルではないので使えなかったが、加入しているソフトバンクで訊いてみると、980円というプランを教えてくれた。これならシムカードを挿れるより安いかもしれない……。
 ローミングは、かなり高い通信料をとられるという話を何回か耳にしていたので関心もなかったが、そういう時代は終わったということなのかもしれない。はたしてタイの空港でうまくつながるかわからないが、その場合はシムカードを入れる方法もある。今回はデータローミングを試してみようと思う。
 円安が進行すると、こういう傾向が出てくる。以前は海外のほうが安かったから、まずは飛行機に乗り、現地で苦労しながら通信環境を整えた。しかしいまは日本で整えた方が安くなる。どんどん内へと向かってしまうのだ。
 先日、ある居酒屋でこんな話を聞いた。
「円安だから外国人客が増えて収益はいいけど、日本人がこなくなった。二重価格にしないと日本人はこないかも」
 二重価格? 昔のタイではないか。金のある外国人とその国の人で料金の差をつける方法だ。日本はそうなっていくのだろうか。
 そう考えると両替は逆の動きをする。円安とはそういうことなのだ。

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