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ナムジャイブログ

2013年06月17日

愚痴の日々がはじまるのか

 タイ人が日本入国のビザが免除されることが決まった。6月10日の夜、僕はバンコクにいた。日本から連絡が入った。翌朝、発表されるという。
 安倍政権の景気刺激策のひとつだった。タイ人とマレーシア人のビザを免除し、観光客を増えることの経済効果を期待していた。
 さて、翌朝。さっそく、タイのテレビを観たタイ人から電話がかかってきた。質問がふたつあった。ひとつはいつからビザが不要になるのか。そして、空港で入国拒否に遭うことはないのか。
 ビザ免除の発表では、時期を特定していなかったためだ。どうも夏ぐらいから実施されるようだが、正確なところはわからない。韓国と台湾のビザ免除は名古屋の万博に合わせて実施された。なにかマスコミ受けするようなイベントに日本政府は合わせたいところだろうが。
 空港での入国拒否……。これはどうだろうか。おそらくビザが免除されるのは、2週間程度の短期滞在である。日本への観光目的のタイ人へのビザ免除だから、1ヵ月や3ヵ月という期間にはならない気がする。ビザは2国間の交渉で決まるが、基本的には平等の概念がある。日本人はいま、ビザなしでタイ1ヵ月滞在が可能だ。2週間というのが妥当な気がする。
 この期間なら、それほどチェックは厳しくないように思う。通常の入国審査ではないだろうか。また、そうなってもらわないと、経済効果も期待できない。
 これで僕もずいぶん楽になる。いま、年に4、5回はシーロム通りにあるビザセンターに出向いている。ビザの申請書類を書いてあげる役目である。それから解放される。
 そう思いめぐらせながら、悪い予感が膨らんでくる。かつて日本で不法就労をしていたタイ人の知人たちだ。もう日本は無理と思っていた彼らの瞳に光が差し込んでしまうニュースでもあった。
 やはり電話がかかってきた。
「俺たち、また行けるかな」
「名前が登録されているから、無理だと思うけど」
「そうか……」
 その後の沈黙が不気味だった。きっと新しい名前でのパスポートづくりを画策しはじめるのに違いなかった。
 不安は連鎖する。成田空港から電話がかかってくる日々が戻ってくる気がした。
「ユージ。元気? いま空港。今晩からのホテルをとってないんだけど」
 僕はタイ人の間ではユージと呼ばれているのだ。そして、携帯電話の番号は、かなり広まっている。親しい知人たちは、こういって僕の番号を伝える気がする。
「日本へ行ったら、ここへ電話すれば大丈夫だよ。いい奴だから」
 僕はそれほど暇じゃない。しかしそういうことをまったく無視して、タイ人は電話をかけてくる。ビザをとらなければ日本に入国できなかったときのほうが、ずっと楽ではなかったか。また愚痴の日々がはじまるのか。

(お知らせ)
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Posted by 下川裕治 at 17:11│Comments(0)
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