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ナムジャイブログ

2013年08月12日

なんの変哲もないことを書いている

 バンコクから猛暑の東京に戻った。この時期は、バンコクのほうがはるかに過ごしやすい。40度などという気温を聞いただけで、バンコクに戻りたくなってしまう。
「今年は特別暑い」
 という会話は、毎年、耳にする。前年と同じことはないのが気候というもの。そう達観したことを口にすると、ひねくれ者に思われてしまう。ここは、やはり、
「今年は特別暑いね」
 と口裏を合わせることが処世術。気候の話は罪がないから、暑いことを口にするのが肝要というものだろう。
『週末台湾でちょっと一息』という本が、朝日新聞出版から出た。よく売れているようである。『週末バンコクでちょっと脱力』に続く本なのだが、僕の本だから、ガイド的な期待をもって買われると困る。この本を手に台北を歩いても、行き方ひとつ書いてないわけだから、なんの参考にもならない。
 しかしそういう本でも、買ってもらえることはありがたい。
 週末を扱ったアジア本は何冊も出ているのだが、その多くがガイド系である。より充実した週末旅のための情報が詰まっているわけだ。そういう本を否定はしない。しかし僕のような旅行者には向かない。だいたい僕の旅には、計画というものが希薄だ。
「台北も暑いでしょ」
「東京より暑いかもしれません」
「そういうときはどうしてるんです?」
 東京も暑いから、そんな会話になる。きっと僕の本を読んでくれたのだろう。
「そうですね。夜になったら、街を歩くんです。これが面白い」
「夜?」
「そう。下町の工場とか商店が遅くまで店を開けてるんです。理由? 暑いからです。シャッターを閉めると、風が通らなくなっちゃうんです。だから店を閉めない。でも、仕事はしたくない」
「それのどこが面白いんです?」
「仕事をしたくないのに、店を開けてるんですよ」
「………」
 この人とは、いくら話しても埒があかない……という表情が相手の目の周りに見え隠れして、会話は終わるのだ。
 先日、高野秀行さんと対談をした。
高野 下川さんのエッセイを読んですごいと思うのは、なんの変哲もないことを書いていることです。
下川 自分のなかでは、いろいろ変哲はあるんだけど……。(『一冊の本』より)
 僕の旅はどうもほかの人たちと違うらしいことは、昔からわかっているのだが……。

 朝日新聞のサイト「どらく」連載のクリックディープ旅が移転しました。「アジアの日本人町歩きの旅」。アクセスは以下。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html



Posted by 下川裕治 at 15:34│Comments(0)
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