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ナムジャイブログ

2013年09月09日

10月1日は世界中の飛行機が混みあう

 トレンガヌという街にいる。マレーシアの東海岸にある街である。この街の沖にある島がリゾートになっているようで、そこに遊びにくる中国人が多い。エアアジアでクアラルンプールから来たのだが、乗客の半数以上は大陸から来たリゾート客だった。
 日本ではあまり知られていないリゾートなのだが、中国系マレーシア人とのつながりなのか、このあたりは完全な中国人のリゾートアイランドになりつつある。中国系マレーシア人は中国語を話すから、中国語のままで楽しめるリゾートというわけだ。
 これからバンコクに向かい、日本に帰るのだが、10月にバンコクに行かなくてはならない。10月1日に東京からバンコクに向かう飛行機を予約しようと思うのだが、とんでもなく混みあっている。
 僕はユナイテッド航空のマイレージを貯めているため、スターアライアンス系の航空会社を選ぼうとする。しかし10月1日は、ユナイテッド航空に席はなく、中国国際航空の予約も難しい。
「そりゃ、そうですよ。国慶節ですから」
 知人から教えられた。
「国慶節……。すっかり忘れてました。でもどうしてアメリカのユナイテッド航空が混むんです?」
「中国人はいま、世界規模で動きますから」
 中国人が長く休むことができる国慶節。10月1日から、彼らの大移動が起きる。
 世界のあちこちで、「なぜ、10月1日の航空券がとれないの?」と首を傾げる人は多いのかもしれない。
 中国の経済成長には陰りがみえてきているが、一般の庶民の感覚は違うらしい。ひと桁多い金額が貯まった貯金通帳を眺めながら、「今年の国慶節は海外だ」と目を輝かすのだろう。
 トレンガヌで日本人墓地を探した。ここは戦中、英雄扱いされたマタハリが生まれた街である。戦前は数十人の日本人が住んでいたといわれ、その墓地は15年ほど前にみつかったのだ。
 街の人たちに尋ねつつ、やっと日本人墓地をみつけたが、そこは広い中国人墓地の片隅だった。マレーシアの中国人と日本人の存在感の違いをみせつけられたような思いだった。
 しかしトレンガヌの墓地に眠る中国人たちは恵まれていたわけではない。豊かな暮らしを夢みて、マレーシアに渡ったのだが、そこには苦力貿易を牛耳るエージェントが跋扈する世界だった。海を渡った中国人の多くは、本国に帰ることはできなかった。
 その街にいま、リゾート客として中国人がやってくるようになった。女性たちはリゾートファッションで決めている。つばの広い帽子が目立つ。子供たちは拾った貝殻を大事そうに手にしている。彼らは確実に豊かになったのだ。
「中国の長い歴史のなかで、いまの中国がいちばん豊かかもしれない」
 ある専門家がいっていた。たしかにそうなのかもしれない。

 朝日新聞のサイト「どらく」連載のクリックディープ旅が移転しました。「アジアの日本人町歩きの旅」。アクセスは以下。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html




Posted by 下川裕治 at 12:58│Comments(2)
この記事へのコメント
マタハリが生まれたのは、オランダのレーワルデンですから、日本生まれで幼少期、青春時代をトレンガヌで過ごしたハリマオこと谷豊のことですね。
Posted by M.I. at 2013年09月12日 11:12
はじめまして…。中村達雄と申します。いま、中国江蘇省の宿遷という街でこの文章を読んでいます。廃黄河と大運河の取材でこんな田舎に来ているのです。
去る2月にボルネオのサンダカンに日本人の墓を見に行ってきました。トレンガヌの墓地と同じように、やはり広大な中国人墓地のいちばん奥のはずれのほうに10幾つかのカラユキさんや船員の墓がひっそりと立っていました。サンダカンやコタキナバルはやはりトレンガヌと同様に大陸中国tたちがリゾートに押し寄せ、彼ら専門のホテルも幾つかありました。3月に行ったネパールにも大量の大陸中国人が右往左往していました。
このブログ、定期的に楽しく読んでいます。
Posted by 一葉 at 2013年09月17日 17:59
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