インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2013年09月16日

チェンマイのホームレスは捕まった

 チェンマイの警察を訪ねた。ひとりの日本人ホームレスが、捕まったことがわかったからだ。
 経緯を少し説明しておく。
 昨年のことだ。チェンマイのバスターミナルで寝泊まりしている日本人ホームレスがいることを知った。彼に会ってみた。チェンマイに来てからの日々をまとめてみたいと彼がいった。ちょうどその頃、『「生きずらい日本人」を捨てる』(光文社)を書いている最中だった。編集部と相談し、彼の手記を収録することにした。
 彼は日本の家庭を捨て、さしたる金ももたずにチェンマイにやってきた。50代の前半という年齢だった。やがてその金も消え、ホームレスになる。高い血圧という病を抱えていた。薬を買う金もなく、やがて死ぬだろうという諦念もあった。
 しかし、ホームレスゆえの粗食とひたすら歩く生活が、彼の体を甦らせてしまう。だからといって、金があるわけではない。万引きを繰り返しながらのホームレス。万引きが発覚して捕まることになる。しかしチェンマイの警察は彼を、「かわいそうだ」と釈放してしまう。
僕が会ったのは、彼がそんな状況に置かれていたときだった。彼はチェンマイでの日々をノート3冊にぎっしり書いてきた。
 本が出版され、収録された彼の原稿分の印税がでた。8万円ほどになった。
 彼を気にしていたチェンマイの日本人と一緒に会った。僕らは、この金で日本に帰るように説得した。ビザは切れ、オーバーステイになっていたが、その罰金は刑期を終えれば消える。彼は、「私にも私の考えがある」といった。僕はその金を渡した。
 それから9ヵ月。やはり彼は捕まった。38バーツの無銭飲食。チェンマイの警察も2回目となれば見逃すことも難しい。
「6日にメーサイに移送した」
 警察でそういわれた。僕が訪ねたのは9月9日。3日前だった。メーサイには、脱北者を収容する施設があると聞いたことがある。ある程度、人数がまとまると、バンコクに送るらしい。
「メーサイか……」
 タイ最北端の山並みは彼の瞳にどう映るのだろうか。もちろん金は一銭もない。家族や親族が送金してくれないと、彼には行き先がない。チェンマイの警察はこういった。
「彼は日本への連絡を拒否している」
 帰りたくはないのだ。しかしタイの警察にしても、いつまでも彼を収容しておくわけにはいかないだろう。
 どう生きようが自由ではないか。彼はそう思っているのだろうか。しかし海外でのホームレスの前には、国籍という壁がある。それを越えるのはなかなか難しい。国境を越える脱北者とチェンマイの日本人ホームレス。メーサイの収容施設では、ふたつの国籍が交錯している。

 朝日新聞のサイト「どらく」連載のクリックディープ旅が移転しました。「アジアの日本人町歩きの旅」。アクセスは以下。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html




Posted by 下川裕治 at 16:40│Comments(2)
この記事へのコメント
彼の続きが見たいです。
Posted by 山田 at 2013年09月16日 21:55
高い高血ってどんな病気ですか?粗食で治癒できたということでとても気になります。私は高血糖と高血圧で悩んでるので。先月チェンマイへ久しぶりに行きましたが その方をみかけませんでした。
Posted by はら at 2013年09月18日 10:25
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。