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ナムジャイブログ

2013年09月23日

日本人の店が怖い

 最近、その傾向がとくに強いような気がする。日本にいると、日本人が経営する店から足が遠のいてしまうのだ。日本人の店は、なぜか怖い。つい、ミャンマー人や台湾人、タイ人、そして沖縄の店に足が向いてしまう。
 僕は日本人だから、日本語を話すことができる。59歳にもなっているのだから、飲食店でのシステムや礼儀ぐらい知っている。場数は踏んできた。しかし年をとるにつれ、日本人の店を敬遠するようになってきた。
 これはどういうことだろうか。
 たとえばどこにでもあるような居酒屋。チェーン店が多い。こういう店の対応は画一的で、丁寧な言葉の背後に威圧感が潜む。アルバイト店員が教えられる接客マニュアルは、サービスという仮面をかぶったトラブル処理術にも思えてくる。
 小料理屋系の小さな店は、料理のレベルは高く、雰囲気もいいのだが、店の人との距離が近すぎる。いろいろと話さなければいけないかと思うと、暖簾をくぐろうという気になれない。
 そこへいくと、アジア人が切り盛りする店は楽だ。マニュアルがにおう対応もない。言葉の問題もあるのだが、向こうから話しかけてくるようなことはまずない。放っておいてくれる。それでいて店だから、氷がなくなると運んできてくれる。
 アジアの優しさが失われていない。なにをしてもいいわけではないが、日本のようにその入り口で、ぴしゃりと拒絶するようなきつさがない。
 それは甘えだとわかっている。アジアに慣れ親しんだ人間だから……ということもあるだろう。しかし親しい知り合いと酒を飲むときぐらい、穏やかな心もちでいたい。そう考えると、アジア人や沖縄の人の店になびいていってしまうのだ。
 先週、このブログで書いた、チェンマイのホームレスの話が世間を駆けめぐっているらしい。今月の初旬、マレーシアに行ったが、そこで会った日本人からも訊かれた。
「あのホームレスの人どうなりました?」
 アジアでホームレスになりたいわけではないだろうが、どこかで気になっている日本人は少なくないのだろう。
「アジアでのホームレスは難しいことはわかるけど、同じホームレスになるなら、アジアのほうがいいなぁって思うんです。やっぱ日本は、ホームレスにも厳しそうだから」
 漠然としたイメージにすぎないが、タイのチェンマイでホームレスになった男のなかにも、同じ思いがあった気がする。甘い話なのだが、アジアはいつもそんな蠱惑の香りをたたえている。おそらく僕が、日本人の店が怖いといった心境と同じなのだろう。
 人はそれほど強くはないということか。


(お知らせ)
朝日新聞のサイト「どらく」連載のクリックディープ旅が移転しました。「アジアの日本人町歩きの旅」。アクセスは以下。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html


Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(0)
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