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ナムジャイブログ

2013年09月30日

娘たちは親の背中を見ていた?

 10月1日、内定式を行う企業が多い。複数の内定をもらった学生も、この日で最終的な就職先を決めることになる。
 僕にはふたりの娘がいる。上の娘はすでに就職し、働いている。下の娘が今年、就活だった。なんとか勤める会社が決まり、内定式に出るはずである。
 ふたりの娘とも、僕がかかわる出版界に就職はしなかった。上の娘は、マスコミというものに若干の興味があったらしく、本格的な就職活動がはじまる前に、OB訪問という形で何社かを訪ねた。僕も担当の編集者などを紹介したのだが、そのうちの何人かはこういったという。
「この業界はやめときなさい。将来がありません。厳しくなっていく一方でしょう」
 皆、出版社で僕の本を担当する人たちである。本ができあがったときは、
「ひょっとしたら、この本、売れるかもしれません。頑張りましょう」
 などといっている担当者が、本心ではそう思っているのだ。親の職業の手前というものもあるだろうに……とは思うが、実際にそうなのだ。本の売り上げは年を追って減ってきている。売れる本もあるのだが、全体の流れからみれば、衰退産業なのだ。
 それがきっかけ、というわけではなかっただろうが、娘たちは、出版界に就職しようとはしなかった。正しい選択だとは思うが、出版界で生きている親のしたら、ぽそっとしてしまうところがある。
 ある作家が書いていたが、原稿を書く世界では、2世という存在が少ないのだという。政治家に2世議員が多いことは問題にもなっている。2世タレントという言葉もある。しかし2世作家といういい方は耳にしたことがない。
 読者は冷酷である。面白いものにしか反応を示してくれない。親が作家だからといって読んではくれない。政治家には、「親の地盤を引き継ぐ」という表現があるが、作家に地盤など、爪の先ほどもないのだ。
 ひとつの本が面白かったとなると、読者はさらに読み応えのあるものを要求する。そのなかで生きていかなくてはならない。
 そんな親の背中を、娘たちはしっかり見ていたのだろうか。非正規雇用がいかに危ういものかを、しっかり刷り込まれた世代なのである。そういうフィルターをかければ、親の仕事の脆さはすぐに浮き彫りにされる。
 シニア層は、本を読むことの大切さを強調するが、その言葉が砂漠に染みこむ水のように消えていくことを知っている。
 娘の就職を考えていたら、なんだかずんずんと落ち込んできてしまった。このところ、いつも本の締め切りに追われている。売れるのかどうか……予測もつかない本の原稿を今日も書かなくてはならない。

(お知らせ)
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Posted by 下川裕治 at 15:19│Comments(2)
この記事へのコメント
それでも僕は買いますよ!
Posted by G5gattana at 2013年10月04日 00:38
いまバンコク下町暮らし読んでます!
この時の娘さんたちは三歳と一歳ですね>_<1995年のこの本を読んで検索していまここにきました。

娘さんたちはタイ語やめたんでしょうか?
Posted by yu at 2015年03月29日 15:16
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