インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2013年11月11日

誰も越境しない国境

【2013年11月04日号から、通常のブログはしばらく休載。『裏国境を越えて東南アジア大周遊編』を連載します】
【前号まで】
裏国境を越えてアジアを周遊する旅。前号はバンコクを夜行バスで出発しスリンへ。そこからカンボジア国境をめざした。
     ※         ※
 スリンのバスターミナルを出発したロットゥー(乗り合いバン)は40分ほどで国境に着いた。タイ側はチョンチョムという。
 国境のバー周辺は、越境してきたカンボジア人で混みあっていた。タイ側にあるマーケットに行くのだという。皆、パスをもっているのか、自由に出入りしている。その脇を通って、タイ側のイミグレーションの建物に入る。通過する人は誰もいない。暇な国境だ。しばらく歩いていくと、カンボジア側のビザオフィスがあった。はたしてこの国境でビザをとることができるだろうか。ひとつの不安だった。
 しかし職員はすっと申請用紙を渡してくれる。ビザ代は20ドルだった。
 同行したカメラマンが顔写真をもっていなかった。そういうと、なかに入れられ、スマホでカシャ。
「これでいいのか」
 つい口を挟みたくなる。ただ写真代は100バーツ。職員のポケットに入っていく金である。その向かいのイミグレーションでスタンプを捺してもらう。タイ側のイミグレーションを出てから15分ほど。なにしろ正式に国境を通過する人が誰もいないのだ。
 アランヤプラテーとから抜ける国境が脳裏をよぎる。午後に越境しようものなら、イミグレーションの前に長い列ができる。それに比べると、気が抜けてしまうほどの越境だった。
 さて、これからどうやってシェムリアップに……。カンボジア側の村はオスマックといった。売店が2、3軒あるだけだ。訊いても、シェムリアップまで行くバスはないという。車が数台停まっている。シェムリアップまで行くというのだが、1台50ドル……。
 これが裏国境の辛いところだった。バス便はない。タクシーは相乗りなのだが、越境する人がほとんどいない。1台を借り切るしかないのだ。
 30分ほど待っただろうか。しかし国境を越えてくる人は誰もいなかった。
「行くしかありませんかね」
「今日は誰も国境を越えてこないのかもしれない……」
 50ドルの車に乗るしかなかった。
 洪水が迫っていた。カンボジアの道は数段よくなった。舗装路が続いた。これは楽勝かと思っていたら、その道に水が入りはじめていた。車は水しぶきをあげなから進んでいくが、あと20~30センチも水かさが増せば、通行が難しくなる。
 しかし、周囲の村のカンボジア人はのんきなものだ。水が流れる路上に座って酒盛りをする奴もいる。農民は冠水した水田の上に、投網を手にして小舟を出す。突然、漁師になってしまうのだ。
 そんな暮らしのなかでは、車は脆弱な乗り物である。
 しかしなんとかシェムリアップまで辿り着いた。4時間ほどかかった。もう1週間遅れていたら、冠水の前で途方に暮れていたかもしれない。(以下次号)

(写真やルートはこちら)
この旅の写真やルート地図は、以下をクリック。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html
「裏国境を越えて東南アジア大周遊」を選んで下さい。こちらは2週間に1度の更新です。






Posted by 下川裕治 at 22:06│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。