2014年07月07日
またしてもバスに乗るとこができない?
【通常のブログはしばらく休載。『裏国境を越えて東南アジア大周遊編』を連載します】
【前号まで】
裏国境を越えてアジアを大周遊。スタートはバンコク。カンボジア、ベトナムを北上。ラオスに入国し、ホンサーを経てタイ。そしてミャンマーのチャイントン。しかしその先へは行けず、いったんタイに戻り、再びミャンマーへ。ミャーワディからヤンゴンに到着した。
※ ※
ヤンゴンから南下の旅がはじまった。モールミャインまではバスが頻繁に出ていた。モールミャインにはタイからの飛行機も乗り入れている。つまりここまでが、なんの問題もなく訪ねることができるミャンマーだった。
バスは午後3時にヤンゴンを出発した。道は舗装され、快適である。背中の痛みは相変わらずだったが、振動が少なく、それほど気にはならなかった。日が暮れ、バスは海と山に挟まれたわずかな平地を進んでいった。左手には山の斜面になっていたが、そこに石段がつくられ、山の頂に寺院が見えた。山の斜面全体が仏教寺院のようにも映る。パガンのパゴダ群もみごとだが、この斜面寺院も相当なものである。やがて、大きな橋を越え、モールミャンの街に着いた。夜の9時だった。
ダーウェイまでのバスは、別のターミナルから出発するという。バイクタクシーに乗って向かうと、一軒のバス会社のオフィスの前で停まった。
小屋がけの粗末なオフィスだった。土の床の上に木製のテーブル、そして裸電球。机にはひとりの女性が座っていた。
「ダーウェイまでの切符を……」
「外国人はダーウェイまでの切符を売ることはできません」
「いや、大丈夫だとヤンゴンでいわれてここまで来たんです」
「でも、売ることはできないんです」
「ヤンゴンでは……」
チャイントンのバスターミナルを思い出した。そこでも僕らはバスに乗ることができなかったのだが、雰囲気は微妙に違った。チャイントンは、とりつくしまもない感じだったが、ここはなんとかなりそうな気もした。
しかし女性の職員は、「ダメ」という一点張りだった。しばらくの沈黙があった。彼女は僕らを乗せてきたバイクタクシーの運転手になにやら伝えた。彼が僕の荷物を持った。「バイクに乗れ」という。
バイクはすぐ近くにあった別のバス会社の前に着いた。やはり小屋だった。若い女性が座っていた。
「ダーウェイまで行きたいんですが」
「夜の10時のバスと午前4時のバスがありますが、どちらにします?」
「はッ?」
「10時のバスはもう来ますが」
「乗ることができるんですか?」
背中の痛みを考えれば、少し休みたい思いがあった。しかし朝の4時というのも少しつらい。それにこの機会を逃したら、またもめる可能性があった。やっぱり外国人はだめだという話になりかねなかった。モールミャインに長くいないほうがよさそうだった。とにかくバスに乗ってしまうことだ。
切符を買い、オフィスの前でバスを待つ。やってくるバスは、僕らを乗せてくれるのだろうか。(以下次号)
(写真やルートはこちら)
この旅の写真やルート地図は、以下をクリック。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html。
「裏国境を越えて東南アジア大周遊」を。こちらは2週間に1度の更新です。
【前号まで】
裏国境を越えてアジアを大周遊。スタートはバンコク。カンボジア、ベトナムを北上。ラオスに入国し、ホンサーを経てタイ。そしてミャンマーのチャイントン。しかしその先へは行けず、いったんタイに戻り、再びミャンマーへ。ミャーワディからヤンゴンに到着した。
※ ※
ヤンゴンから南下の旅がはじまった。モールミャインまではバスが頻繁に出ていた。モールミャインにはタイからの飛行機も乗り入れている。つまりここまでが、なんの問題もなく訪ねることができるミャンマーだった。
バスは午後3時にヤンゴンを出発した。道は舗装され、快適である。背中の痛みは相変わらずだったが、振動が少なく、それほど気にはならなかった。日が暮れ、バスは海と山に挟まれたわずかな平地を進んでいった。左手には山の斜面になっていたが、そこに石段がつくられ、山の頂に寺院が見えた。山の斜面全体が仏教寺院のようにも映る。パガンのパゴダ群もみごとだが、この斜面寺院も相当なものである。やがて、大きな橋を越え、モールミャンの街に着いた。夜の9時だった。
ダーウェイまでのバスは、別のターミナルから出発するという。バイクタクシーに乗って向かうと、一軒のバス会社のオフィスの前で停まった。
小屋がけの粗末なオフィスだった。土の床の上に木製のテーブル、そして裸電球。机にはひとりの女性が座っていた。
「ダーウェイまでの切符を……」
「外国人はダーウェイまでの切符を売ることはできません」
「いや、大丈夫だとヤンゴンでいわれてここまで来たんです」
「でも、売ることはできないんです」
「ヤンゴンでは……」
チャイントンのバスターミナルを思い出した。そこでも僕らはバスに乗ることができなかったのだが、雰囲気は微妙に違った。チャイントンは、とりつくしまもない感じだったが、ここはなんとかなりそうな気もした。
しかし女性の職員は、「ダメ」という一点張りだった。しばらくの沈黙があった。彼女は僕らを乗せてきたバイクタクシーの運転手になにやら伝えた。彼が僕の荷物を持った。「バイクに乗れ」という。
バイクはすぐ近くにあった別のバス会社の前に着いた。やはり小屋だった。若い女性が座っていた。
「ダーウェイまで行きたいんですが」
「夜の10時のバスと午前4時のバスがありますが、どちらにします?」
「はッ?」
「10時のバスはもう来ますが」
「乗ることができるんですか?」
背中の痛みを考えれば、少し休みたい思いがあった。しかし朝の4時というのも少しつらい。それにこの機会を逃したら、またもめる可能性があった。やっぱり外国人はだめだという話になりかねなかった。モールミャインに長くいないほうがよさそうだった。とにかくバスに乗ってしまうことだ。
切符を買い、オフィスの前でバスを待つ。やってくるバスは、僕らを乗せてくれるのだろうか。(以下次号)
(写真やルートはこちら)
この旅の写真やルート地図は、以下をクリック。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html。
「裏国境を越えて東南アジア大周遊」を。こちらは2週間に1度の更新です。
Posted by 下川裕治 at 10:07│Comments(0)
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