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ナムジャイブログ

2014年09月08日

マカオの昨日は香港の明日

 香港にいる。
 常宿である重慶マンションでこの原稿を書いている。昨日、マカオからフェリーで香港にやってきた。
 香港が揺れている。
 2017年に行われる香港の行政長官選挙をめぐり、香港の民主派の抗議行動が続いているのだ。行政長官とは、首相にあたる存在である。香港が中国に返還されたとき、香港基本法がつくられた。そのなかで2017年の選挙は普通選挙、つまり香港住民の直接投票で長官を決めることになっていた。しかし、それに対し、立候補できるのは、中国政府が認めた人に限るという方針を中国が打ち出した。これでは普通選挙ではない……と民主派は拳を挙げたのだ。
 先月末の抗議行動には、19万人が集まったという。民主派は香港の中心街を占拠すると主張している。これに対し、中国は人民軍を結集させているという噂もある。第2の天安門事件に発展しかねない。
「危険な状態」
 と香港の人々はいう。
 一国二制度という形で香港は返還された。返還から50年は、香港の社会制度は変わらないことになっている。この方針に対し、中国はこう考えている。
「50年たてば、中国と香港は自然と同じ社会になっている」
 それは香港の中国化なのか、中国の香港化なのか。誰にも答は出せない。しかしいまの時点で、本来の普通選挙は認められないと中国は考えている。共産党の一党独裁体制を維持することは、中国という国の根幹にかかわることなのだ。
 先月の末、マカオの行政長官の選挙が行われた。立候補したのはひとりで、無投票当選だった。これが中国の描く普通選挙だといわれる。対外的には普通選挙なのだが、水面下で根まわしがあり、中国が認めた人だけが立候補するというスタイルである。
「マカオの昨日は香港の明日」
 とよくいわれる。つまり香港の普通選挙も中国によって骨が抜かれていくという示唆でもある。民主派はどこまで香港の自由を守ることができるのだろうか。
 常宿である重慶マンションのゲストハウスとは、長いつきあいである。主人にあいさつしようとすると、いま、上海に行っているといわれた。
「たぶん、もう帰ってこないと思う」
 3代目の息子はそういった。このゲストハウスの初代の主人は、中国の社会主義を嫌って上海から香港にやってきた。はじめてこの宿に泊まった30年前、年老いた初代の主人はいつも中国茶をごちそうしてくれた。2代目主人とのつきあいが長い。彼ももう70代になっている。そして、いま、上海に帰っていった。
 揺れる香港の街で、上海で暮らす彼のことを考えている。




Posted by 下川裕治 at 14:37│Comments(1)
この記事へのコメント
15年以上前から下川さんの本を愛読させて頂いております。
先日、私もマカオから香港に移動し今日本に帰ってきてブログを拝見させております。実を言うとマカオのフェリー船内において下川さんをお見かけしました!話かけたかったのですが、まさかここで会うか?という思いと間違っていたら失礼だろうという思いが交差して話しかける事ができませんでした。香港入国審査の下川さんの後ろにいたのが私です。とても哀愁が漂っておりました。(笑)これからの活躍も応援しております。 突然のコメント失礼しました。
Posted by テラちゃん at 2014年09月10日 10:51
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