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ナムジャイブログ

2014年10月06日

香港に降るのは涙雨? それとも雨傘革命?

 香港にいる。本を書く仕事があり、先月も香港にいた。その予兆はあったのだが、10月1日の国慶節を前に、香港で路上占拠がはじまってしまった。やはり気になった。また香港行きの飛行機に乗ってしまった。
 香港には中国返還時に定められた「香港基本法」がある。そのなかで、民主化を徐々に進め、最終的には普通選挙で行政長官を選ぶことになっている。普通選挙とは、香港のトップである行政長官を、一般有権者が直接投票するスタイルである。
 この方向のなかで、中国返還以来、何回となく交渉が続けられてきた。そして2007年に中国政府は、「2017年の行政長官選挙では、普通選挙を実施してもいい」と発表した。しかし今年、中国政府は候補者を絞り込んだうえでの普通選挙という方針を打ち出した。つまり中国寄りの候補者のなかでの普通選挙である。これに香港の学生や民主派が反発し、路上占拠に発展した。この原稿を書いている10月3日、香港島の金鐘、中環という中心街と銅鑼湾、九龍半島側の旺角、尖沙咀の広東道が占拠されている。
 一時は警察が催涙ガスを使って占拠する市民を排除しようとしたが失敗。日を追って、路上占拠が広がってきている。
 毎日、占拠されたエリアを歩きまわっている。ときおり大粒の香港らしい雨が降る。
 あのときもそうだった。香港が中国に返還された翌日、僕は香港に入った。激しい雨に香港は洗われていた。
 涙雨──。香港人の思いを乗せたような雨だった。世界の植民地のなかで、独立や返還に反対する人々の声があがった唯一のエリアが香港だった。社会主義国である中国への返還だったからだ。大戦後、中国大陸から香港に移り住んだ人たちは、社会主義を嫌った人が多かった。
 中国政府は返還から50年の間、一国二制度を採用するとした。50年で香港と中国は同じレベルになる……という読みがあったといわれる。それは、香港の中国化なのか、中国の香港化なのか……誰にもわからなかった。
 2017年の普通選挙は、その第一段階とみる向きもある。
 路上占拠の先陣を切ったのは、返還前後に生まれた学生である。中国の息がかかった香港の歴代長官は、不動産に絡んだ悪い噂が絶えない。その反発もあっただろう。そんな不満へのガス抜きという人もいる。
 しかし学生たちは頑張っている。雨のなかで路上に居座り、集まった人に水を配り、ゴミを回収する。救護の学生が待機する。路上占拠はバンコクで経験しているが、集まる人が桁違いに多い。動員されている気配はまったくない。
 しかし普通選挙の要求を中国は呑めないだろう。それは中国の体制の根幹にかかわっているからだ。香港と違い、中国の政権は巨大で強い。
 また雨が降ってきた。
 催涙ガス弾を学生たちは雨傘で防いだことから、誰とはなく、この路上占拠は、「雨傘革命」と呼ばれるようになっている。



Posted by 下川裕治 at 14:44│Comments(0)
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