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ナムジャイブログ

2014年11月03日

わかりあえない香港と上海

 香港からバンコクに戻り、上海に1泊して昨夜、東京に戻った。上海に着いたのは10月31日の夕方。強い雨に包まれていたが、街はハロウィンに浮かれていた。
 上海からしばらく足が遠のいてしまっていた。日本の嫌中、つまり中国を嫌う空気は相変わらずで、上海にいる日本人の知人たちも元気がない。上海に行くきっかけをみつけられずにいた。
 中国にしばらく行かないと、不思議なことに中国に批判的になっていってしまう。おそらく世界に流れている中国情報は、嫌中になびいているからだろう。
 1年ぶりだった。携帯電話のシムカードや地下鉄に乗る交通カードの残額など、確認しなくてはいけないことがいくつかある。それらが整って、さて上海。1年の間に、上海は進化していた。いつも泊まるホテルは、改装されて少しきれいになっていた。それでも宿代は1泊200元。日本円で2500円ほどですんでしまう。ホテルの周りには、こぎれいな食堂やカフェも増えた。
 しかし今回は、どうしても香港で路上を占拠する学生や民主派のことが上海の街にだぶってしまう。上海が整っていくことに、どこか引っかかるものが生まれてしまう。
 中国人は、香港のことは知っている。しかし詳しい情報は届いていない。テレビも新聞も報道はごくわずかだ。政府は香港からの情報に神経を使っているのだろう。「なるべく香港に行かないように」という通達も出ているという。
 それも影響しているのかもしれないが、上海の人たちは、香港の状況に冷淡だった。要求する普通選挙に対しても「無駄」のひとことで片づけてしまうようなところがあった。
 普通選挙は中国共産党の根幹を突く要求だから、たしかに無駄だった。しかし、それにあえて挑む香港人へのシンパシーは薄い。そしてなにも考えずに、「今晩はハロウィンで仮装して騒ごう」なのである。
 またしても路上で悩んでしまう。香港の学生の多くは、上海の空気を知らない。そして上海の人々も香港の若者が抱える閉塞感を理解することができない。そのずれは、中国という社会を眺めると陳腐に映る。
 上海は香港に比べれば味わい深い街だ。プラタナスの街路樹はもうじき色づく。人民公園のイチョウは黄を強めはじめていた。
 しかし香港では、多くの学生が路上のテントで寝泊まりしている。香港が返還されたとき、こんな状況を誰が想像しただろう。
 わかりあえないふたつのエリア。この溝はいったいいつになったら埋まる気配が生まれるのだろうか。



Posted by 下川裕治 at 14:11│Comments(1)
この記事へのコメント
はじめまして。
江蘇省の日系工場に日本から派遣されて来まして、4年になります。藤田と申します。
1日に本社から来ておりました財務監査の方々を上海浦東空港に送って、日本航空のチェックインカウンターの横でボーっとしていた私の目の前を足早に、私は今まで写真でしかお目にかかったことがありませんので、半信半疑でありましたが、確かに下川先生が横切られたような気がしていました。いまブログを拝見し、やはりあれは先生であったかと思い、これもなにかの縁とばかりに失礼を承知でコメントしている次第でございます。

世の中は思い通りにはほとんど行きませんし、多くの人が矛盾の中で、どうにか自分を言い聞かせて、なんとか生きてるのだと思います。
私も外面はここで総経理をしています。会社では、一生懸命にできる人間を演じていますが、できることなら、バンコクあたりに現実逃亡したいです。
実際には、まだそんな勇気もないですので、これからも限界までそんな今の自分を演じ続けることでしょう。
そういうときに先生の、どこか浮世離れした、脱力した文体の後ろに見える風景に癒されている一ファンです。

これからも、お体を大切に楽しい本を書いてください。楽しみにしています。
Posted by 藤田 at 2014年11月03日 17:02
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