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ナムジャイブログ

2014年12月29日

「ホワイトクリスマス」にむっとする

 北海道の留萌線。その終点の増毛にいた。先週のことだ。
 列車がこの町に着いたのは朝の7時すぎだった。雪道を歩いて港まで行ってみた。
 強風が吹いていた。ときに突風に体がもっていかれそうになる。気温はマイナス5度ぐらいだろうか。凍った道に足許をとられてしまう。漁連の倉庫の脇で風をしのいだ。軽トラックがのろのろとやってきて、漁港につないだ船の様子を見にきていた。
「今日は荒れる」
 あとになって考えてみれば、漁師はその日の天候がわかっていたのだ。だから船をつなぐ綱を確認にきていたのだ。
 どこか店に入りたかったが、まだ時刻が早かった。いや、増毛のような小さな町では、多くの店が冬場は休むのかもしれない。ましてや、今日はこの天気である。
 風に雪が混じりはじめた。横なぐりの雪が顔にあたる。寒さはすぐに通りこして痛くなってくる。どこかでこの吹雪から避難しなくては……。増毛駅の待合室しかなかった。
 増毛駅は、留萌線の終着駅だというのに無人駅だった。駅員はいないが、待合室は開放されていた。足や指の先はすでに感覚がなくなっている。頬だけが雪が吹き付けて痛さが伝わる。つい急ぎ足になってしまうが、ところどころに吹きだまりがあり、足がずぼりと入ってしまう。
「ふーッ」
 待合室でひと息ついた。暖房はないが、風がないだけで救われる。
 マイナス20度のシベリアやハルピン、雪に埋まったインドのスリナガル北部。寒い地域は何回か経験してきていたが、この風ははじめてだった。それなりの防寒対策はしてきたつもりだったが、この吹雪は、顔をすっぽり包むものが必要だった。北海道の日本海沿岸を襲う吹雪は、世界でもトップクラスのつらさをもっていた。
 1時間ほど待合室にいた。しかし風雪は強くなるばかりで、町並みもまったく見えなくなってしまった。ホワイトアウトである。町を歩く人もまったくいない。
 意を決して外に出た。どこかの店で暖かいものを胃に入れたかった。10メートルほど進んだだろうか。一緒にいるカメラマンに声をかけた。
「無理だ。戻るしかない」
 前がまったく見えず、横殴りの雪で体は真っ白である。強風がこれほどつらいものだとは思わなかった。
 吹雪には波があることがわかった。駅の待合室で震えながら見ていると、ぴたりと風が止まることがある。それが10分ほど続き、また視界がきかなくなる。その時間しか外に出ることができなかった。
 その日は宗谷本線で美深まで北上した。駅前の宿に入り、テレビの天気予報を見る。
「24日の夜、日本海岸はホワイトクリスマスになりそうです」
 お天気キャスターの言葉にむっときた。



Posted by 下川裕治 at 11:55│Comments(0)
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