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ナムジャイブログ

2015年02月09日

日本の政策は中国に似ている?

 バンコクでホテル関係の仕事に就く知人の嘆きが聞こえてくる。
「日本人客が少ないんですよ。軍事政権になって、街の活気が減ったこともあるかもしれないけど、直接的には円安。1バーツ4円ですよ。これじゃ、誰だって海外旅行、考えちゃいますよ」
 日本の旅行会社もかなり苦しい。
「デフレからインフレに移行させ、やがて給料に反映されるって政府はいうけど、海外旅行に再び行くようになるのはその先でしょ。そもそも給料に還元されるのかも不透明。強い日本になる前に腰砕けになるような気がしてしかたない」
 海外に拠点を置いて働いていた知人も、ひとり、またひとりと帰国している。日本から受けとっているギャラが目減りし、生活が立ちゆかないのだという。「ちょうど頃合いかという思いもあってね」。その言葉には覇気がない。帰国を考えはじめたロングステイ組も多いという。
 経済力のある日本の再現……。それをめざす政策のなかで、僕の周りで起きていることは、小さな日本への流れだった。産業界にはさまざまな収益構造があるが、海外からの情報を日本人に提供し、日本から収益を得ている人たちの間では、日本回帰の流れがはじまっていた。内に向かうベクトルである。国際的に強い日本を標榜していると政府はいうのだが、実際には島国に閉じこもっていくわけだ。
 海外に飛び出していく……。その背後にあるのは、日本への不安だった。それを解消しようというのだから、内向きの動きが出てきて当然のことだった。
 小さくまとまった日本。それが、いまの政権がめざしている方向のような気がしてしかたない。
 僕にとっての香港とマカオをまとめた『週末香港・マカオでちょっとエキゾチック』という本が発売になった。本を書いている途中で、民主派や学生たちの路上占拠がはじまった。金鐘や旺角の路上に座り、学生たちと何回も話をした。はじめは要求する普通選挙の話だったが、しだいに彼らが内包する不満が顔をのぞかせた。
 中国に返還されてから、香港の経済は停滞し、格差社会が広がっていった。そのなかでゼロから成功していく香港流のサクセスストーリーが影を潜めてしまった。学生たちの閉塞感はそのあたりにあった気がする。
 その間にも、円安は続いていた。日本の政策が、返還後の香港とダブってしかたなかった。いまの日本の手法は、どこか香港を翻弄させた中国に似ている。それは結果なのかもしれないが、若者が抱く可能性という芽を押さえ込んでいく月日のようにも映るのだ。国の経済力と人の幸せは必ず一致するわけではない。そのあたりの感性が東アジアの空に渦巻いている。


Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(0)
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