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ナムジャイブログ

2015年04月06日

孤立感が旅に漂う?

 アジアのマイナーな国境を越えながら、東南アジアを一周する──。その旅が、本にまとまった。『「裏国境」突破 東南アジア一周大作戦』(新潮文庫)というタイトルである。
 タイからカンボジア、ベトナム、ラオス、そしてミャンマーと陸路の国境を越えていく旅だ。できるだけ、最近になって外国人にも通ることができるようになったマイナー国境を選んでいった。
「下川さんのフィールドだから、今回はあまりトラブルもないでしょう」
 旅に出る前、編集者や周囲からいわれた言葉だった。
 僕自身も、そんな思いがあった。これまで何回となく訪ねた国々である。
 しかしアジアはやはり甘くはなかった。ひと筋縄ではいかないのだ。
 僕が東南アジアを歩きはじめて、30年以上の年月がたっている。その間に、このエリアはずいぶんと発展した。戦乱は消え、人々の暮らしはずいぶん豊かになった。
 世界を見ても、順調に成長してきている地域といってもいい。しかし、国境という辺境に向かうと、さまざまなトラブルが待ち構えていた。やはりアジアだった。詳しい話は、本を読んでもらって……ということになるのだが、経済成長はまた、新しいトラブルを生んでいるということなのだろう。
「自分ではとても無理なルートだから、本を読んで楽しんでます」
 最近、読者から、こういわれることが多くなってきた。昔は僕の本を読んで旅に出たという話をよく耳にしたものだが。やはり僕の本を読んでくれる人が、少しずつ年をとってきたということなのだろうか、とも思う。若い人は旅に出る人が減ってきている。
 一抹の寂しさを感じなくもないが、それがいまの日本人なのかもしれない。そのなかで旅を続ける。そこに漂う孤立感のようなものに、ときに苛まれることもある。いったい僕は、どこへ向かっているのかわからなくもなってくるのだ。
 とりたて旅のつらさを強調しているつもりはない。しかし僕に向けられる視線に、同情の色を読みとると、なんと答えていいのか言葉に詰まるのである。
 これだけ旅を続けていれば、それなりの経験は積んでいる。小さなトラブルには動じない神経の太さも備わっているのだろう。しかし旅はそれほど甘くない。次から次へと、困難が目に間に立ちはだかる。そこに向かっていかなくてはいけない。僕は年を重ねているかもしれないが、旅先で出会うアジアの人々には無縁のことなのだ。
 僕はいつまでも、アジアとアジアの人々に振りまわされていくのだろう。それを素直に書いているだけなのだが。



Posted by 下川裕治 at 09:57│Comments(0)
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