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ナムジャイブログ

2015年05月18日

これが旅の代償?

 蔵前仁一さんと、元フジテレビアナウンサーの益田由美さんと3人での対談があった。ともに60歳前後。還暦である。
 益田由美さんは、『なるほど・ザ・ワールド』のレポーターを務めた。
 彼女の話で面白かったのは、この番組がつくられた頃の空気だった。それまでの海外紹介番組といえば、『兼高かおる世界の旅』が名を馳せていた。僕も何回か見ている。秘境ともいえる場所も登場していたが、番組のつくりは、紹介だった。「世界にはまだ、こんなところがある」という正攻法のつくり。そこにはある格式のようなものが流れていた。
 しかし、『なるほど!~』は違った。世界を紹介することに変わりはなかったが、そこには、面白さを優先させるポリシーが満ちていた。海外紹介番組のバラエティといえばそれまでだが、海外に勝手に行き、体を張って面白がるようなテンションがあった。
「テレビも同じだったんだ」
 改めてそう思った。僕や蔵前さんもそういう存在だった。僕らの前の時代の海外旅行記は、選ばれた人が派遣されて書くものが多かった。やはり紹介だったのだ。
 しかし僕らは、なんやかやと理由をつけて海外に勝手に出向き、安宿に泊まり、夜行バスに揺られて、そのひどさやつらさ、ときにちょっとした幸せを書き綴っていった。道案内人は誰もいなかった。自分の体力と気力だけで前に進む旅だった。
 その国を大局的に紹介するわけでもなく、世界が抱える貧困や矛盾にはあまり触れなかった。その手法に対しての批判もあったが、僕らの世代なりの自負もあった。
 自分が見て、五感に響いたことしか、面白いことはないのではないか。そんな思いもあった。
 そういった旧世代への反発を支えたのが体力だった。まあ、いってみれば突撃型である。
 益田さんも蔵前さんも、そして僕も若かった。向う見ずなところはあったが、どこか必死で番組や本をつくっていったような気がする。マスコミという世界のなかで、僕らはそんな位置にいた。偉くはないが、体力と感性だけはあった。世代論で話をまとめたくはないが、それが1950年代の半ばに生まれた僕らの宿命だったのかもしれない。
 しかしそんな3人も60代になった。益田さんは海外取材がたたったのかヘルニアに悩んだ。蔵前さんも腰痛を抱えている。僕は不整脈になり、いつも薬を持参しなくてはいけない身である。
 若い頃の旅の代償?
 そうなのかもしれない。


Posted by 下川裕治 at 14:13│Comments(1)
この記事へのコメント
雑誌?テレビ?その対談見たいです。
兼高さんのテレビ少し記憶してます。
陽のエネルギーに満ちた、地球の明るい世界感を与えてくれました。
私にとって下川さん、蔵前さん、由美さんは日本を出るための背中を押してくれた方達です。思い返せば人の優しさに触れたくて旅を繰り返していたように思いますが、お陰様で日々の暮らしの意識領域が広がり、ゆったりした時間感覚を保つことができるようになりました。ありがとうございます。旅の先輩達が居てくれることにより、いつか自分もまたと希望が持てます。お身体にお気をつけて。応援しております。
Posted by モモ at 2015年05月18日 16:13
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