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ナムジャイブログ

2015年10月19日

鳩の卵を捨てる

 いまマレーシアの東海岸のドゥングンという街にいる。ビーチリゾートなのだが、泊まっているのは福建会館という1泊1600円の安宿である。目の前はビーチだが。
 夕暮れどきである。海岸の木に戻ってきた小鳥たちがにぎやかだ。マレーシアの夕暮れどきはこれがいい。マラッカでも、うるさいほどの鳥の声のなかでぼんやりしていた。
 マレーシアに来る前、バンコクに寄った。かかわっている東京の事務所が、バンコクに部屋を借りている。そこで仕事をさせてもらった。
 倉庫のように使っている部屋だから、人の出入りは多くない。そのためだろうか。ベランダに鳩が巣をつくってしまった。僕がベランダに出ると、親鳥が驚いて逃げていった。巣には卵がふたつあった。親鳥は卵を温めていたのだ。
 どうしようか。
 部屋を借りているマンションの管理室に相談をもちかけた。
「わかりました。すぐ人を向かわせます」
 やってきたタイ人の男の子は、なんのためらいもなく、巣を卵ごととり除き、ビニール袋に入れた。
「それ、どうするの?」
「ゴミ箱に捨てます」
「……」
 ベランダには巣をつくるために鳩がもってきた木の枝や葉が残っていた。糞もある。僕は水を流しながら掃除したが、その最中に親鳥が戻ってきてしまった。その声がなんだか切なく聞こえる。
 バンコクに暮らす日本人にその話をした。
「下川さん、何を甘いこといってるんです。バンコク暮らしは鳩との闘いですよ」
 皆、ベランダにやってきて巣をつくる鳩には苦労しているらしい。だいぶ昔だが、僕もバンコクに足かけ2年暮らした。ベランダのついたアパートを借りたが、鳩はやってこなかった。最近、鳩が増えているのだろうか。彼らが巣くう木々や公園が、減ったのだろうか。
「あれだけの鳩に日々、悩まされていたら、卵を、捨てるなんて、どうってことないですよ。雛が孵ってしまったら、もっとつらいでしょ」
 たしかにそうなのだが、殺生を禁じる仏教とはどう折り合いをつけているのか。
 タイ人は動物好きだが、それは可愛いときだけである。年老いてきたり、粗相をしたりすると、一気に熱が冷める人が多いという。なかには犬を捨ててしまう人もいる。
 タイ人は幼い子供には満身の笑みで受け入れる。が、少し大きくなると、手のひらを返したように表情から色が変わる。
 バンコクに暮らしていると、年を追って仏教の教えから離れていく?


Posted by 下川裕治 at 12:42│Comments(2)
この記事へのコメント
糞害などに悩まされることを考えたら、どこかで割りきらないといけないのかもしれませんが、親鳥の気持ちを考えると胸が苦しくなりますね。
タイ人が信仰する仏教においては、当然の如く生まれ変わりを信じていると聞くので、「またすぐ次がある」と、卵を処分することに罪悪感が少ないのでしょうか。
その鳩が同じ仏教徒であることが前提となりますが…。
Posted by たぬきまるようこ at 2015年10月20日 09:39
タイの人たちの良心って
仏教由来のものが多い気がします。
それらがすたれて行ってしまうと・・・
少し寂しいモノになってしまいそうで怖いです。

でもハトは仕方ないですね。
ハトの運が悪かったって事でしょう。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2015年10月22日 23:11
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