インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2016年02月01日

列車バー

 信州に向かう列車のなかで、ぼんやりとビールを飲んでいた。車窓には雪景色が広がっている。今晩は雪だろうか。明日の朝は雪かきが待っているのかもしれない。
 つまみは新宿駅のキオスクで買った「柿の種」である。ぽりぽりと噛んで、またビールをひと口。
 こんな時間が好きだ。
 最高のバー……と訊かれたら、「列車」と答える。性格が暗いのかもしれないが、人と酒を飲むことが苦手だ。気を遣ってしまうからだ。そういいながら、人がいないと寂しくなる。人間嫌いの人恋し。つまりはそういうことなのだ。
 こういうタイプの人間は列車がちょうどいい。見ず知らずの客だが、ときに、そんな人を肴に酒を飲むこともある。
 タイの列車で、酒を飲むことができなくなった。知ったのは昨年の夏だった。マレーシアのバターワースからバンコクに向かう列車に乗ったときだった。車内に貼られたステッカーが目に止まった。「酒を飲むことも、売ることもできない」と書かれていた。
 列車がバタンベサールの国境駅に停車しているとき、車掌に訊いてみた。
「まだ、タイに入っていないので、いまのうちにがんがん飲んでください」
 そういうことを訊きたかったのではなかったのだが。イスラム色の強いマレーシアでがんがん飲めといっても……。タイ人らしい反応に、苦笑いしてしまった。
 タイは宗教的な問題もあり、飲酒を忌み嫌う傾向がある。タイ人の多くが、日本では小乗仏教という人が多い上座部仏教を信仰している。そのなかで酒は平常心を乱すものとされている。その影響だと思う。飲酒はよくないことなのだ。それにしてはよく酒を飲むと思うが、列車の車内が禁酒になっても、それに反対の声を挙げる人はいないのだろう。
 自著でも紹介しているが、昨年、シンガポールで酒に関する新しい法律が施行された。公共の場所では夜の10時半からビールを飲むことができなくなった。ホーカーズという屋台村が公共の場所か……という論争が起きた。この法律がつくられた原因のひとつは、リトルインディアで起きたトラブルだった。彼らは皆、酒を飲んでいた。シンガポールに限らず、酒と暴力をすぐに結びつけてしまう国は少なくない。背後にあるストレスを棚あげして、酒を悪者にする論理だ。
 以前、上海に暮らす日本人が東京にやってきた。彼の希望は昼から酒を飲むことができる店だった。
「上海でも昼酒はできるんですが、なにか雰囲気が違うんです」
 ふたりで浅草に行った。午後3時だというのに居酒屋は賑わっていた。
 日本はストレスのない社会なのか。そんなことはないとは思うのだが。


Posted by 下川裕治 at 16:36│Comments(2)
この記事へのコメント
日本でも新幹線に乗ると、嬉しそうにビールやワンカップをあけている人をよく見かけますね。
タイ国内の店舗でそうしているように、時間を決めて販売するというわけにはいかなかったのでしょうか。
それなら酔っ払いと同じ列車に乗り合わせたくない人は、その時間帯を避けることも選択出来ますし。
宗教上厳しくなってしまうのは仕方のないことなのかもしれませんが。
私もいつか少し長く休みがとれたら、ゆっくりタイで列車旅をしたいと思っています。
Posted by たぬきまるようこ at 2016年02月04日 20:39
先日バンコクから国境の町ノンカイまで寝台車で行きました。
寝台車ならカーテンさえ閉めてしまえばこっちのもの!?
こっそり飲んでもバレないって思います。
つまりは酒飲んで騒いだり迷惑かけなければいいのではないかなぁ。
匂いがもれない様に少量で・・・

でもなんだか可笑しいですよね
マレーシアがOKでタイがNGだなんて逆なら理解でるんですけど・・・
それだけマレーシアという国は
気を使ってくれているのでしょうか?(他宗教に対しての尊重という意味で)
イスラムが基本の国だけれども
イスラムを押し付けない。
そんなところ鉄道に関しては有るのでしょうか?

実はタイの規制がグローバルスタンダードなのかもしれませんね。
旅行客の多い国と言うのも理由の一つな気がします。日本よりも進んでいるのかもしれません。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2016年02月16日 01:27
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。