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ナムジャイブログ

2016年02月15日

アマゾンでは本を買わない

 窓の外を春の嵐が吹き抜けている。横殴りの雨がぱちぱちと窓に音を残す。東京は一気に春めいてきた。
 今日、本屋にでかけた。アマゾンのサイトを開くのではなく、本屋に行かなくては……そう思った。
 しばらく前、ある新聞社からのインタビューを受けた。テーマは本棚。自宅の本棚の話をしているうちに、自分で腹立たしくなってきてしまった。
 最近、本を読めないのだ。本を書いている人間が、本を読まない。これは由々しきことだ。理由はいくつかある。
 まず視力。老眼が進み、電車などで本を読むと疲れる。一応、遠近両用眼鏡をかけているが、裸眼のようにはいかない。
 仕事も忙しい。毎月、20本近い締め切りに追われている。そこに本の原稿を書く仕事が重なっている。取材の旅もそこに加わってくる。この年になって、仕事があることに感謝しなくてはいけないのだろが、本を読む余裕がない。
 老眼とはいえ、電車のなかで本を読めないわけではない。しかしいつもメールに翻弄されてしまう。できるだけ自宅ではメールを見ないようにしている。ネットをつなぐと、仕事が進まないからだ。勢い、電車のなかでメールをチェックすることになってしまう。
 出版界で若者の本離れが話題になって、もう何年もたつ。本代にまわるお金が、携帯電話やネットの通信費に奪われてしまったといわれた。たしかに、その一面はあるが、それ以上に彼らには時間がないのだと思う。電車のなかで本を読む暇などないのだ。ラインの返信はしなくてはならない。フェイスブックもある。メールは次々に届く。ぽんとタッチするとゲームの誘惑が待ち構えている。
 僕も、その流れのなかに巻き込まれている。しかし僕は本を書いているのだ。やはりこれはまずい。
 本屋に行ったのはそのためだった。
 ターミナル駅の大型書店に入った。ほしい本は1冊あったが、もう1冊は品切れになっていた。アマゾンではすぐに買うことができるのだが。
 1冊の本を手にレジに並ぶ。先頭にいた老人が、「どうして、本の注文を受けられないのか」と延々と抗議を続けている。昼間の書店は老人が多い。
 本を探しながら、書店を歩くと、懐かしい時間が戻ってくる。以前、僕はこうして本を買っていたのだ。
 1週間に1冊の本は読む。
 アマゾンでは本を買わない。
 書店には週に1回は行く。
 自分自身を保つために、自らに課せようと思う。


Posted by 下川裕治 at 16:30│Comments(3)
この記事へのコメント
スマホがどんどん便利になってきて一日の多くの時間を費やしてしまっていますね。もはやスマホに支配されていると言っても過言ではないです。

それらに対する抵抗・・・ですね。
下川さんの本を読むそれが僕にとっての自分を保つ方法です。

なのでどんどん旅をして、どんどん本を書いてください!
Posted by たぬきまるだいすけ at 2016年02月16日 02:03
思い返してみると、最近のまどさん以外の書店に入っていないことに気が付きました。
本は好きでいつも何かしら持ち歩いていたりするのですが、最近新刊本を購入するのは下川さんの著作だけだったので。。。
自分が好きなもの以外興味をもてないもので、なかなか趣味の幅が広がりません。
たまには大きな書店にでも行って、ピンとくる1冊を探してみるのも楽しいかもしれませんね。
Posted by たぬきまるようこ at 2016年02月19日 13:18
今日、下川さんの文庫本を買いに大阪の商店街にある個人書店に行きました。
目当ての本があり、レジに向かう途中に平積みの「嫌韓、嫌中、日本はすごい」本の特集コーナーが。
そういう考えに与しない私はいやーな気持ちになりました。
売れるから置くのか、売りたいから置くのか。色々考えさせられてしまいます。
Posted by なにわ人 at 2016年02月19日 20:44
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