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ナムジャイブログ

2016年07月04日

治安とテロの混同を招くこと

「いままで訪ねた国のなかで、いちばん治安のいい国はどこです?」
 インタヴューや講演の後の質問コーナーでときどき訊かれる。
「バングラデシュ」
 そう答えることにしている。僕の感覚にすぎないが、日本より治安がいいと思う。
 理由は単純で、人である。バングラデシュという国は、とにかく人が多い。北海道の2倍ほどの土地に約1億6000万人。実際はそれより多いという人もいる。狭い土地にこれだけの人が暮らすということは、田舎や街の路地裏を歩いても、必ず人の姿……ということになる。夜行バスに乗り、午前3時ごろにふと目を覚ます。バスは、鬱蒼とした森のなかの道を走っているというのに、道端を歩く人や自転車を漕ぐ人たちがいる。いったいなにをしているのか、とぼんやりと眺めることが多い。
 バングラデシュの街は自転車リキシャが多い。彼らの多くは貧しく、家がない人も少なくない。彼らの寝床は、リキシャの座席である。夜中の路地裏で、彼らはリキシャの座席でうとうとしている。声をかけると、ちゃんと乗せてくれる。
 いつも誰かが見ている。バングラデシュはそういう国だ。彼らは普通の国民だからひったくりなどが起きると、黒目がちな瞳に好奇心の光を宿らせて、すぐに集まってくる。
 バングラデシュという国を訪ね、写真を撮ったことがある人ならわかると思う。カメラを構えると、誰ともなく人が集まり、被写体の手前は、いつも同じような髭面の男たちいで埋まってしまうのだ。日本のテレビ局の人からこんな話も聞いたことがある。
「バングラデシュでは、カメラの周りに集まってくる人を排除するスタッフを雇わないとなかなか撮影が進まないんです」
 犯罪を企てる人にしたら、なんだかとてもやりにくい国なのだ。
 ダッカでテロが起きた。7人の日本人が犠牲になった。ISに共鳴する過激派とみられている。こういう事件がおきると、すぐにバングラデシュの治安、という話になる。
 しかしISが起こすテロと、その国の治安は異質なものだ。
 少し前にイスタンブールの空港でもテロが起きた。世界の空港はセキュリティチェックを強めているが、そのチェックポイントを、攻撃して侵入するという手口の前では、防ぎようがない。それは世界の空港に共通することだ。ダッカで起きたようなテロにしても、防ぐ手立ては世界の国々にもない。銃火器の規制は間接的なことだ。治安とテロはやはり次元が違う。
 バングラデシュの治安が悪化したわけではない。その誤解を招こうとすることが、ISの狙いのひとつでもある気がする。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=ユーラシア大陸最南端から北極圏の最北端駅への列車旅。そろそろ最終回です。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまはタイ南部をうろうろしてます。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 11:44│Comments(1)
この記事へのコメント
バングラデシュは治安が悪いと思い込んでいました。
なるほど人口密度が高い国ですね。
治安と言えばフィリピン・・・

今ジェットスターで往復12000円くらいのプロモーションが有り悩んでいます。深夜到着便です。

治安状況を調べると
ボッタクリ、詐欺、恐喝・・・
チョット怖いなぁ。
一人で行くのは危険みたいなので悩んでいます。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2016年08月27日 02:20
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