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ナムジャイブログ

2017年01月16日

線路脇スラムのホスピタリティ

 インドネシアのスラバヤにいる。毎日、午後になると、激しいスコールに見舞われる。雨季ただなか……といったところだろうか。
 インドネシアの、鉄道に乗りまくる取材だ。昨日はスラバヤ市街地を走る列車を撮影するために、線路の上にいた。
 スラバヤコタ駅とスラバヤパサールトゥリ駅の中間あたりの線路はスラムに囲まれていた。しかしこの構造がインドネシアだった。
 この辺りの線路は高架になっている。2階建ての家の屋根の高さに線路がある。ところが2階建ての家の上に、さらに一軒分の家を重ね、その出入り口は線路に面していた。
 おそらく貧しい人たちが、2階建ての家に話をつけ、安い賃貸料で3階をつくらせてもらったのではないかと思う。
「出入り口は線路側。水は自分たちでもちあげます。なんの迷惑もかけません」
 そう話をつけたのだろうか。
 アジアの鉄道は、線路際に不法に住みついてしまう人々に苦労している。勝手に線路側に出入り口をつくるスラムである。洗濯物も線路の上に干したりする。この区間は徐行で進まなくてはならない。安全上の問題もあるだろう。
 インドネシア国鉄は、「高架にすれば大丈夫だろう。周囲は2階建ての家が連なっているし」と踏んだのかもしれないが、インドネシア人は逞しかった。2階建ての家の上にバラックを建ててしまった。国鉄の上をいっていたわけだ。
 狭い石段と梯子を伝って、線路の上にでる。線路の上をうろうろしている住人たちは、警戒の色ひとつ見せず、「3時には列車が通るよ」と笑顔で教えてくれた。カメラを見て、察したのだろう。
 僕らは線路脇、つまりスラムの家の前で待機した。
 雲行きが怪しくなってきた。不穏な風が吹き、空が暗くなる。ぽつり、ぽつりと大粒の雨が落ちてきた。スラムの人たちは、家の前にビニールシートをかけながら、皆が手招きをする。そこで待てば濡れない……というのだ。しかしカメラマンには撮影ポイントがある。すると彼らは傘をもってきてくれた。
 雨が強くなったきた。すると、少年が動画用の小さな防水カメラをとりつけた三脚を運んできてくれた。雨に濡れる……。カメラマンと僕は苦笑いを交わすしかなかった。
「トタンを葺いた廃材の家の間を走る列車を撮りたいってこと、彼らはすぐにわかるでしょ。粗末な自分たちの家が映るわけでしょ。それなのに、どうして彼らはこんなにも親切なの?」
 僕は雨に濡れはじめた線路の上で戸惑っていた。これがインドネシア?
 足を掬われた気分だった

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=ミャンマー鉄道、終着駅をめざす旅がはじまります。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。難関のミャンマーの列車旅が続く。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 17:11│Comments(0)
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