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ナムジャイブログ

2017年03月20日

空港の困惑ホテル

 旅の伏線を探せば、オランダのホテルの高さに行きつく話である。アムステルダム市内の都合のいい場所になると、ゲストハウスクラスでも、ツインで2万円近くもする。少しでも安いホテルはないだろうか。同行していたカメラマンが、ホテルの予約サイトを通して1軒のホテルを予約した。スキポール空港のすぐ近くのホテル。ふたりで1万5000円ほどだった。翌日は朝早くに飛行機に乗らなくてはいけない。好都合だった。
 取材を終えスキポール空港に向かった。しかしホテルがみつからない。インフォメーションで訊いてみた。
「セキュリティを通って、出国審査を受けた先にあります」
「はッ?」
 メルキュールホテルだったが、空港内にあるトランジットホテルだったのだ。飛行機の乗り継ぎ時間が長い人向けのホテルである。その国には入国せずに泊ることができる。
 そういうホテルの存在は知っていたが、通常、ホテルの予約サイトには登場しないはずだ。しかしスキポール空港のメルキュールホテルは、普通のホテルとして予約できてしまう。
 セキュリティを通り、出国審査のブースに立った。パスポートはあるが、飛行機の搭乗券はない。チェックインは、翌朝なのだ。事情を話した。職員は隣にいたスタッフとなにやら話し、出国スタンプを捺してくれた。
 ホテルには、問題なく泊まることができた。ひと息つきビールでも……と思った。フロントで訊くと、下の階に降りればレストランや売店があるから、そこで買えという。
 階段を降りると、搭乗フロアーだった。売店でビールを買おうとすると、搭乗券といわれた。当然である。しかし僕はチェックインをしていない。スマホにあるEチケットを見せながら、事情を説明した。店員は近くにいた別のスタッフと相談し、結局は売ってくれた。免税料金だった。
 さて翌朝。チェックインをしなくてはならない。そのためにはオランダに入国しないといけないのだ。訊くと、搭乗フロアーを右にずっと歩くと、ドアがあるという。その先に荷物が出てくるターンテーブルがあるので、そこを通りすぎると入国審査ブースがあるというのだが。
 不安な足どりで進むと、入国審査ブースに出た。
「どうして昨夜、出国して、今朝、入国するんですか?」
 たしかにそうなのだ。そこでまた事情説明である。ようやくチェックインフロアーにでたときは、どっと疲れがでた。刑期を終えた囚人が刑務所を出たときは、こんな心境なのではないかと思った。
 困惑の宿泊。これがオランダの寛容なのだろうか。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=インドでいちばん長い列車の旅を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。難関のミャンマーの列車旅が続く。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 12:34│Comments(0)
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