2017年12月11日
日本人は背もたれ倒さない派?
日本だな……と改めて呟いてしまった。
4日ほど前、11月に出版された『僕はLCCでこんなふうに旅をする』(朝日文庫)の発刊イベントがあった。話題は当然、LCCをめぐる話になる。そのなかで、シートの背もたれを後ろに倒すか、倒さないかというという話題になった。倒れるか、倒れないかという話ではない。倒すか倒さないか……。
LCCは座席の前後間隔が狭い。少しでも多くの乗客を搭乗させるためだ。当然、背もたれを倒したときの、後ろの席はより狭くなってしまう。
そのあたりから、日本では背もたれを倒す論争が起きているらしい。LCCがシェアをのばしてきたことから起きた話でもあった。
会場に集まった人たちに訊いてみた。挙手をお願いすると、倒さない派が半分以上を占めていた。
イベントが終わった後、参加者の間で話もあったらしい。こんな意見も出た。
「海外のLCCでは倒してもいいけど、日本は倒せない。それで定着しているみたい」
そうなのだろうか。
背もたれは倒すためにある。LCCでは狭さを考慮して、倒れる角度が少ない。それでも倒すと少し楽だ。飛行機がそうなっているわけだから、倒すことは乗客の権利でもある。しかし日本では倒さない派が増えている。
機内の様子を思い出してみる。海外でLCCに乗ったとき、背もたれに関する機内放送はあまりない。いや、僕は聞いた記憶がない。ところが日本の国内線LCCに乗るとこんな放送が流れることが多い。
「背もたれを倒すときは、後ろの方にひとことお声がけをお願いいたします」
この違いなのだろうと思う。
僕は飛行機に乗る機会が多いから、背もたれを倒すことについてはいくつかの経験がある。前に座る人から、「Can I lean my seat back?」といわれたこともある。そこでこの英語を覚え、背もたれを倒すときに口にすると、後ろに座っていたインド系の男性から、「No」という言葉が返ってきたこともあった。夜行便で黙って背もたれを倒すと、後ろから「put the seat back please」という声が聞こえてきたこともあった。すぐに意味がわからなかったが、「シートバック」から想像して戻した。
こんなことは珍しくない。そして、世界の人々は、後ろの席から、「戻して」といわれれば戻すだけのことで、それを気にする様子もない。つまり背もたれを倒していいのか、悪いのかという論争に発展しないのだ。なにも考えないのだ。
日本人は他人の視線を見ながら生きる民族である。外国人も、気にしないわけではないのだが、その気遣いのエネルギーが違う。それは美徳でもあるが、ときにこの性格は煩わしい。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=インドネシアの列車旅。ジャワ島編からスマトラ編へ。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載がはじまった。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機
4日ほど前、11月に出版された『僕はLCCでこんなふうに旅をする』(朝日文庫)の発刊イベントがあった。話題は当然、LCCをめぐる話になる。そのなかで、シートの背もたれを後ろに倒すか、倒さないかというという話題になった。倒れるか、倒れないかという話ではない。倒すか倒さないか……。
LCCは座席の前後間隔が狭い。少しでも多くの乗客を搭乗させるためだ。当然、背もたれを倒したときの、後ろの席はより狭くなってしまう。
そのあたりから、日本では背もたれを倒す論争が起きているらしい。LCCがシェアをのばしてきたことから起きた話でもあった。
会場に集まった人たちに訊いてみた。挙手をお願いすると、倒さない派が半分以上を占めていた。
イベントが終わった後、参加者の間で話もあったらしい。こんな意見も出た。
「海外のLCCでは倒してもいいけど、日本は倒せない。それで定着しているみたい」
そうなのだろうか。
背もたれは倒すためにある。LCCでは狭さを考慮して、倒れる角度が少ない。それでも倒すと少し楽だ。飛行機がそうなっているわけだから、倒すことは乗客の権利でもある。しかし日本では倒さない派が増えている。
機内の様子を思い出してみる。海外でLCCに乗ったとき、背もたれに関する機内放送はあまりない。いや、僕は聞いた記憶がない。ところが日本の国内線LCCに乗るとこんな放送が流れることが多い。
「背もたれを倒すときは、後ろの方にひとことお声がけをお願いいたします」
この違いなのだろうと思う。
僕は飛行機に乗る機会が多いから、背もたれを倒すことについてはいくつかの経験がある。前に座る人から、「Can I lean my seat back?」といわれたこともある。そこでこの英語を覚え、背もたれを倒すときに口にすると、後ろに座っていたインド系の男性から、「No」という言葉が返ってきたこともあった。夜行便で黙って背もたれを倒すと、後ろから「put the seat back please」という声が聞こえてきたこともあった。すぐに意味がわからなかったが、「シートバック」から想像して戻した。
こんなことは珍しくない。そして、世界の人々は、後ろの席から、「戻して」といわれれば戻すだけのことで、それを気にする様子もない。つまり背もたれを倒していいのか、悪いのかという論争に発展しないのだ。なにも考えないのだ。
日本人は他人の視線を見ながら生きる民族である。外国人も、気にしないわけではないのだが、その気遣いのエネルギーが違う。それは美徳でもあるが、ときにこの性格は煩わしい。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=インドネシアの列車旅。ジャワ島編からスマトラ編へ。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載がはじまった。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機
Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(2)
この記事へのコメント
先日のイベントでは、興味深いお話をいろいろ聴かせていただき、ありがとうございました。
このLCCのシートリクライニングの問題はずっと気になっていたので、改めて傾向を知ることができて嬉しかったです。
国内線は倒さなくても、国際線は倒すという人も多いようですね。
倒すのが許されない風潮であれば、いっそのこと全くリクライニング出来ない仕様にしてもらえたら諦めがつくのですが。
肩こり&腰痛持ちの身としては、どうしても未練がましくなってしまいます。
かと言って、その為だけにLCCからレガシーに変更する気にもなれず。
悩ましいところです。
このLCCのシートリクライニングの問題はずっと気になっていたので、改めて傾向を知ることができて嬉しかったです。
国内線は倒さなくても、国際線は倒すという人も多いようですね。
倒すのが許されない風潮であれば、いっそのこと全くリクライニング出来ない仕様にしてもらえたら諦めがつくのですが。
肩こり&腰痛持ちの身としては、どうしても未練がましくなってしまいます。
かと言って、その為だけにLCCからレガシーに変更する気にもなれず。
悩ましいところです。
Posted by たぬきまるようこ at 2017年12月11日 14:57
リクライニング折角あるのだから
使いたい派です。
でも倒されるとかなり窮屈。
人に迷惑かけないようにするという教育を受けてきましたが・・・
やっぱり使いたい。
みんなが一斉に倒してもらえるなら平和なんですけどね。
使いたい派です。
でも倒されるとかなり窮屈。
人に迷惑かけないようにするという教育を受けてきましたが・・・
やっぱり使いたい。
みんなが一斉に倒してもらえるなら平和なんですけどね。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2017年12月12日 15:04
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