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ナムジャイブログ

2018年02月19日

唐津の海鮮丼は生すぎる?

 タイから乗った飛行機が福岡に着いた。翌日名古屋に向かわなくてはならない。博多に1泊になったが、ビジネスホテルの料金がやけに高い。空港のバス乗り場で、すぐに出る高速バスの表示を見た。
 唐津──。
 バスで1時間半ほど。訪ねたことがない街だった。唐津に着くと、目の前にビジネスホテルがあった。博多の半分の料金で泊まることができた。
 部屋で原稿を書きはじめる。どんな国や街にいても、締め切りは追いかけてくる。
 8時頃だろうか。夕飯を食べなければ……とホテルを出た。江戸時代を再現したような商店街をぽつぽつ歩いた。しかし灯が点いているのは居酒屋ばかり。まだ原稿を書きあげていない。ビールというわけにもいかない。
『食事処 さかな屋さん』という看板をみつけた。唐津は玄界灘に面した港である。せっかくここまで来た。仕事に追われているが、魚ぐらいは食べたい。
 店に入ると、本当に魚屋だった。どこで食事? 一瞬、立ち止まると、腰が曲がりかけたおばあさんが出てきた。
「奥へどうぞ」
 そこにはテーブルがふたつあった。店の奥の小あがりを食事スペースにしていた。地元の中年おじさんふたりの先客がいた。刺身をつつきながら焼酎を飲んでいる。
 入り口には海鮮丼と書かれていた。おばあさんに訊くと、ご飯ものは海鮮丼しかないという。1500円という値段だったが、せっかくの唐津である。
 出てきた海鮮丼は、ご飯が見えないほど刺身が載っていた。カンパチ、アジ、イカ、ネギトロ……。10種類以上はあるだろうか。やはり港の魚屋である。
 刺身は新鮮だった。イカは硬さも残っている。しかし半分ぐらい食べた頃から、少し箸が鈍りはじめた。みごとな刺身だが、なんだか生すぎるのだ。刺身を食べて、生すぎるというのも妙ないい方だが。
 僕は信州で生まれ育った。子供の頃、日本はまだ流通網がいまほどではなかった。山国に届く刺身は多くない。マグロぐらいしか口にしなかった気がする。
 大学進学を機に東京に出、以来、東京に暮らしている。地方に出ることも多い。そのなかで僕は魚を覚えていったが、いまでも寿司屋は苦手だ。わからない魚がまだ多い。
 そんな人間には、どっさり刺身の海鮮丼は生すぎる。海辺に育った人とは、食の領域が違うのだろう。山菜に反応する舌はもっているが、豪勢な刺身はキャパシティを超えるのだろうか。
 タイ人が同じようなことをいっていた。いまのタイ人には、刺身が好きという人が少なくない。しかしそれは数切れの量の刺身らしい。そんなタイ人が日本に行く。北海道の小樽は人気の街だが、名物の海鮮丼の途中で箸が止まってしまったという。刺身はおいしいが、海鮮丼は生の度合いが多すぎるらしい。
 僕は刺身が好きだ。しかしそのレベルはタイ人並み? 唐津の海鮮丼が教えてくれる。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=ベトナムの旅。ホーチミンシティからダラットへ。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 12:19│Comments(1)
この記事へのコメント
海鮮丼やちらし寿司で生ものばかり食べていると

普段より輝くのが穴子とかんぴょう、玉子焼き。
生じゃない物が欲しくなりますよね。

タイのお寿司屋も一貫づつ。
大量に生では食べられないと言う理由もありそうですね。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2018年03月06日 17:44
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