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ナムジャイブログ

2018年05月14日

あまりに暇な列車旅

 インドネシアのブリタールにいる。ジャワ島の東側に、大きく輪を描くようにつくられた路線がある。ブリタールはその中間にある街だ。今朝、4時に起き、スラバヤに近い路線に乗り、ここまでやってきた。
 路線と聞いて、このブログを読んでくれている人は、察しがつくのではないかと思う。東南アジアの全鉄道路線を走破する旅である。
「まだやっているのか」
 と思う方もいるかもしれない。そう、まだ制覇はできていないのだ。地道にやっているのだが、カンボジアで新しい路線が開通したといった情報も飛び込んできて、急がないといつまでたっても走破の完了に辿り着けない気がしている。
 その旅が、しだいにつらくなってきている。おおかたの路線は乗ったのだが、未乗車区間は、ところどころに歯が抜けたように残っている。それを落穂拾いの乗りつぶしていかなくてはならないのだ。
 日本の鉄道を完全に制覇乗する旅には多くの先達がいる。彼らの記録には、未乗車区間に乗るときの緊張や胸の高鳴りがしばしば登場する。僕はその東南アジア版という旅を続けているのだが、いままで、はじめての区間を乗るときの高揚感というものがどうしてもわからなかった。すでに乗った区間も未乗車路線も、列車は同じ顔をして走る。その温度差に僕は鈍感だった。
 ところが今回、インドネシアの列車に乗りながら、その感覚を少しわかりはじめたような気がする。
 全路線を制覇する旅は、ずんずんと効率が悪くなっていく。すでに乗った区間に乗らないと未乗車区間に至らない。既乗車区間の旅には新鮮味はない。そして乗り継ぎ時間ものびていく。つまりは暇な旅が延々と続いて未乗車区間の旅になるのだ。
 今日もそうだった。列車が混んでいたこともあるのだが、いまいるブリタールへの列車に乗るために、シドアルジョという駅で9時間半も待たなくてはならなかった。
 いまのインドネシアはかなり暑い。シドアルジョは大きい街ではないから、駅周辺の店も少ない。時間をつぶす場所がないのだ。ただ、ただ駅にいるしかない。風が吹き込む場所をみつけて、時間がすぎていくのを待つしかない。朝は4時に起きているから、眠気も襲ってくる。頭に「す」が入ったような状態になる。
 それでも列車を待たなくてはならない。乗るのは未乗車区間だから、バスで進むわけにはいかないのだ。
 夕方、ようやく列車が姿を見せた。乗ってしばらくすると、未乗車区間に入っていく。そのとき、胸が高鳴った。この先の区間はすることがある。車窓にもはじめての風景が広がる。未乗車区間の高揚感とはこういうことだろうか。それはあまりに暇な時間の代償のように映った。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。今は中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 12:56│Comments(0)
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