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ナムジャイブログ

2018年06月06日

ウズベキスタンの空への渇望

 5月末にウズベキスタンから韓国経由で日本に戻った。ソウルの空港に着いたときその湿気に顔をしかめた。空気が体にまつわりついてくる。
 ソウルは雨模様だった。気温はそう高くはないが、地下鉄に乗っていると、じんわりと汗をかく。訊くと湿度は90パーセント近かった。ソウル在住の日本人は、「昨日より涼しくてすごしやすい」といった。僕の体は、ウズベキスタンに滞在した数日のうちに、乾燥した空気にセッティングされてしまったようだった。
 5月のウズベキスタン──。天国のような気候だった。日射しは強いが、木陰に入るとひんやりとする。空気が乾いているからだ。
 ぶどう棚の下にテーブルが並ぶ。そこに彼らは座り、安物のお茶を飲む。僕も、それに倣った。ぶどう棚の葉の密度は高くない。その間から、光が差し込む。テーブルの上に落ちた光はゆらゆら揺れる。木漏れ日である。
 ウズベキスタンの気候が、優しくないことは知っている。7月、8月になると気温は40度を超える。冬には雪も降る。その帳尻を合わせるかのように、春と秋は天国のような気候に包まれる。
 ソウルに1泊した。翌朝はよく晴れた。湿度もかなり低くなった。昼前の飛行機で東京に帰った。そこでまた、僕は顔をしかめることになる。ソウルよりひどい湿気だった。空気が重い。すでに九州は梅雨入りしたと聞いた。
 僕らはこんなにも高い湿気の国に暮らしているのだ。ウズベキスタンの乾いた空を渇望した。
 今日、家族で山梨県にあるぶどう園を訪ねた。勝沼や塩山の周りにはぶどう畑が広がり、そのなかにワイナリーが点在している。
 一軒のワイナリーの庭にぶどう棚がつくられていた。そこのベンチに座ると、やはり木漏れ日が体をまだらに照らす。
「ここでテーブルが並べば……。そうワインを飲んでもいい」
 しかし日本である。山梨県のこの一帯は東京に比べればはるかに湿度が低い。しかしぶどう棚の下に座っていると汗ばんでくる。そのワイナリーで食事をとったが、冷房の効いたレストランが用意され、ワインはそこで飲むスタイルになっていた。
 この1週間、僕はぶどうに縁がある日々を過ごしたが、ぶどう棚の下は、ウズベキスタンのほうがはるかに快適だった。
 ウズベキスタンはイスラムの国だから、ワインはあまりない。ロシアの影響で、ビールやウォッカは浴びるように飲むが、ワインはあまり見かけない。
 冷房の効いたレストランで白ワインを飲みながら、やはりウズベキスタンの空を渇望していた。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまは中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 00:41│Comments(0)
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