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ナムジャイブログ

2018年07月02日

バンコクは時計が少ない街だった

 腕時計が壊れた。気づいたのは、パキスタンのペシャワールだった。ふと見ると画面の文字が消えていた。電池がなくなってきたのかもしれない。しかし太陽に当てると画面に文字が浮き出てくる。しかし時刻の変更などの機能が、反応しなくなっていた。
 最近、おかしなことが起きるようになっていた時計だった。使いはじめてから10年近く経っているような気がする。買い替えの時期なのかもしれない。
 同行するカメラマンに訊いてみた。
「腕時計は嫌いなんで、いつもは鞄の中。時間を測ったり、必要なときに使うだけですよ」
「普段は?」
「スマホ。ときどき見れば、時刻わかります。国が変われば、時刻も自動的に修正されるから楽ですよ」
 そういうものらしい。
 パキスタンからインドを経てタイに。タイでは講演や講座が待っていた。それぞれ時間が決まっている。いつもは途中、何回も腕時計を見る。とくに講演のときは、腕から時計をはずして壇上に置く。しかし今回は時計が壊れている。
 知人に腕時計を貸してくれないかと訊いてみた。
「腕時計? もう何年もはめてないな。スマホを使うようになってから、はずすようになってね。この前、アパートにあった腕時計を見たら止まってました」
 3人ほどに訊いてみたが、皆、腕時計は使っていなかった。スマホ派だった。スマホは腕時計までも、凌駕してしまったらしい。
 講演当日。会場はホテルだった。主催者の方に、会場には柱時計があるか訊いてもらった。ないという。僕の前に話をする方に訊いてみた。その人も腕時計をしていなかった。
 するとホテル側から連絡が入った。ボーイが会場の後ろで時計を掲げるという。なんだか恐縮してしまったが。
 壇上に立つ。たしかにボーイが客席の背後で時計を掲げていてくれたが、壇上との距離がありすぎ、時刻がよくわからない。ぼんやりとした時計針を頼りに話を進めるしかなかった。
 それ以来、バンコクという街の時計が気になりはじめた。バンコクは時計の少ない街だった。スーパー、食道、コンビニ……僕が見た限りほとんど時計がない。道行く人の腕にも視線が動く。腕時計をはめている人は10人にひとりといった感じだった。もともと少なかったのか、スマホを持つようになって減ったのか……。タイ人は時間にルーズだと、僕は何回も著作で書いてきた。そういうことではないのかもしれなかった。彼らは今の時刻を知らない。いや、そんなことはない気もするのだが。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまは中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 13:39│Comments(0)
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