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ナムジャイブログ

2018年10月08日

薄気味悪い電波

 中国の柳園という小さな町にいる。辿り着いたといったほうがいいかもしれない。ここから列車で西安に向かう。
 今回の旅は、新疆ウイグル自治区のカシュガルからはじまった。和田(ホータン)へは列車で向かった。そこからバス旅になる。まず且末(チャルチャン)へ。さらに若羌(ルオチャン)と進む。そこからチベットにつながる山道になり、新疆ウイグル自治区を抜けて青海省に入った。最初に泊まった街は、花土溝(ホアトゥゴウ)だった。そこから敦煌を経由して柳園に出た。1週間近くかかってしまった。
 情報の少ないルートだった。バスターミナルで地図を広げて、ルートを探っていく日々だった。
 こういう旅で困ることは、到着した街の宿だった。中国は外国人が泊まることができる宿が限られている。とくに新疆ウイグル自治区は厳しく管理されている。しかしその情報を現地の人たちは知らない。外国人にそんな制限があることを知らないからだ。
 若羌を出発するとき、困って公安に訊いてみた。
「新疆ウイグル自治区と内地は制限が違います。内地は新疆ウイグル自治区より厳しきはありませんが……」
 内地といういい方をはじめて知った。新疆ウイグル自治区から眺めると、そういう表現になるのだろうか。しかし、めざす花土溝の宿についてはまったくわからなかった。
 行くしかなかった。
 幸い、花土溝には泊まることができる宿が2軒あった。
 部屋に入り、試しにと思い、ルーターのスイッチを入れてみた。僕は世界の多くの国で接続できるルーターを使っている。
 新疆ウイグル自治区でもつながるのだがその先に問題があった。中国はグーグルなどをブロックしているのため、VPNに接続できないと通常のインターネットは使えない。新疆ウイグル自治区では、そこがうまく接続しなかった。
 青海省に入ったのだから、と接続してみると、簡単につながってしまった。3週間ほど前のこのブログで、その件に触れている。やはり新疆ウイグル自治区ではつながらず、成都に着いたとたん接続できた。それは都市と辺境の問題のように映ったが、実は違ったらしい。中国は新疆ウイグル自治区だけ、別の電波を流しているようだった。
 ウイグル人は、厳しい抑圧のなかで生活している。1日バスに乗ると7回も検問がある。そこでチェックするのはウイグル人だけなのだ。漢民族はフリーである。バザールの入口や公園……ウイグル人が行く場所はどこも厳しいチェックが待っている。しかし中国の管理はそれだけではなかったらしい。ウイグル人が日々使うスマホや携帯の電波も変えていた。花土溝のホテルで、簡単につながるVPNを使いながら、薄気味悪ささえ覚えていた。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまは中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 13:53│Comments(0)
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