インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2018年10月29日

マレーシア鉄道がなくなった

 30年ほど前、『12万円で世界を歩く』という本を出版した。僕のデビュー作ということになっている。その旅をなぞる企画がもちあがり、その1回目、赤道をめざす旅に出ている。昨夜、赤道を通過し、ブキティンギという街に着いた。
 旅はバンコクからはじまった。バスでハジャイまで南下した。そこからロットゥーという乗り合いバンで、タイとマレーシアの国境の街、バタンベサールに出た。昔の国境とずいぶん違う。かつて車専用の国境ゲートがあった場所に一本化され、そこを人も通るようになっていた。
 歩いて越境する人は、ほとんどいなかった。マレーシア人は、タイのイミグレーションの手前にバイクを停めていて、それに乗ってマレーシアのイミグレーションに向かってしまう。僕は歩くしかなかった。15分ぐらい炎天下を歩いただろうか。やっとマレーシアのイミグレーションに出た。
 そこの職員に、「バターワースに行きたいんですが」と訊いてみた。すると、
「出たところにバタンベサール駅があるから、そこから列車です」
「列車?」
 マレーシアの鉄道には、何回か乗っていた。本数も少なく、遅れも多い。できればバスにしたかった。バイクタクシーに乗って、バス停らしきところに行ったが、昼までバスはないという。しかたなく駅に行ってみた。
 駅に掲げられている時刻表に、目を疑った。バタンベサール駅からバターワースまで、1日に10本以上の列車があるのだ。
 なんだか世界が変わっていた。2年ほど前に、バターワースからバンコク行きの列車に乗ったことがあった。俗にマレー鉄道と呼ばれるものだ。そのとき、バターワースとバタンベサールの間には、1日に2、3本の列車しかなかった。それが10本以上。
 切符売り場の近くに案内人のおじさんが立っていた。
「クアラルンプールからバタンベサールまで電化されたんです。クアラルンプール近郊を走っていた電車がここまで乗り入れるようになりました。快適ですよ。昔のディーゼル機関車の列車はもうないですから」
「じゃあ、マレー鉄道は?」
「もう、ありません」
 バターワースとバンコクを結ぶ列車は、電化のあおりを受けて消えてしまったらしい。バンコクを結ぶ列車は、タイ側のバタンベサール駅が始発駅になるのだろうか。
 バターワースまで冷房の効いた電車に乗って進んだ。車内にはクアラルンプールの近郊の路線図が掲げてあった。都市型の電車がバタンベサール駅まできていたのだ。
 マレー鉄道に憧れる人には、ちょっと味気ない電車だろうか。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまはインドから中国に戻る帰路編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 12:11│Comments(3)
この記事へのコメント
マレー鉄道は現在はマレーシア側のバタンベサール駅が終点です。そちらでタイとマレーシアの出国入国手続きですね。
Posted by びびび at 2018年10月29日 14:48
マレーシア鉄道が電化…
一度はどんなものか乗ってみたいです。

台風などの災害にどこまで耐えられるのか心配。
復旧まで何日もかかりそう。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2018年10月31日 16:38
東南アジア鉄道の旅、お疲れさまです。

マレー鉄道、私も6年前にバターワースからバンコクまで乗りました。
とても楽しかったので、また機会があれば乗りたいと思って時刻表をネットを調べたことがあったのですが、ダイヤが変わったのか、前に乗った電車はなさそうでした。

そして、今回のブログを拝見して驚きました。
マレー鉄道自体がなくなってしまったんですね。
快適で旅情たっぷりの路線だったのでとても残念です。

今後も下川さんの旅を楽しみにしています。
Posted by りゅうじ at 2018年11月11日 12:03
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。