2018年12月03日
12万円──はアメリカでは成り立たない
いま、メキシコのシウダード・ファレスという街にいる。アメリカのエルパソと国境を挟んだ街である。
メキシコとアメリカの国境に中米からの人々が押し寄せている。アメリカは国境を封鎖したと聞いていたが、それは、ティファナとサンディエゴの間の国境だけのようだ。この国境は平常だった。
メキシコに来たのは、夕食を食べ、ひと晩寝るためである。とにかくアメリカの物価は高い。それを逃れてやってきた。
今のアメリカは、フリーウエイ沿いの普通のモーテルでも1泊100ドルを超える。ちょっといいところなら200ドル、300ドル。大きな街になると、1泊3万円以下のホテルを、通常のホテル予約サイトでみつけることは難しくなる。しかしエルパソ市内から15分ほど歩いたこの街に入ると、1泊2000円クラスの宿がすぐにみつかる。
中米の人々が国境を越えたくなる気持ちは十分にわかる。僕は、その逆の理由で国境を越えたのだが。
『12万円で世界を歩く』という30年ほど前に出版された本がある。それをなぞるような旅をはじめている。だいたいのエリアで当時に比べれば、円の価値もあがり、LCCという格安航空会社が生まれ、同じルートを12万円以下で辿ることができるようになってきている。しかしアメリカは違う。
そもそも太平洋路線の飛行機運賃が変わらない。30年前は、往復8万円ほどだったが、いまも8万円台。まったく安くなっていないのだ。
30年の間に、アメリカの物価はかなりあがった。当時の記録をみると、バスターミナルでのコーヒーが1杯0.92ドルだったが今は2.16ドル。2倍以上になっている。味はまったく変わらないと思うが。
30年前、僕はアメリパスという、乗り放題のバス切符でアメリカを一周した。これはアメリカに住んでいない人だけが買うことができる切符で、2万1500円だった。しかしその切符もなくなってしまった。
今はその都度、切符を買っていかなくてはならない。その運賃も、当然、高くなってしまった。ロサンゼルスからエルパソまで60ドルほど。ここからニューオリンズまでは200ドルを超えてしまう。
『12万円で世界を歩く』という本の企画は総費用が12万円で旅をするというものなのだが、はじめの3日間ほどで、すでに12万円を超えてしまったのだ。
12万円──というアメリカの旅はもう成り立たないわけだ。当時の日本は、バブルのただなかだった。アメリカは人気の国だった。
日本とアメリカの距離……。メキシコの国境の街で悩んでしまう。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまはインドから中国に戻る帰路編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
メキシコとアメリカの国境に中米からの人々が押し寄せている。アメリカは国境を封鎖したと聞いていたが、それは、ティファナとサンディエゴの間の国境だけのようだ。この国境は平常だった。
メキシコに来たのは、夕食を食べ、ひと晩寝るためである。とにかくアメリカの物価は高い。それを逃れてやってきた。
今のアメリカは、フリーウエイ沿いの普通のモーテルでも1泊100ドルを超える。ちょっといいところなら200ドル、300ドル。大きな街になると、1泊3万円以下のホテルを、通常のホテル予約サイトでみつけることは難しくなる。しかしエルパソ市内から15分ほど歩いたこの街に入ると、1泊2000円クラスの宿がすぐにみつかる。
中米の人々が国境を越えたくなる気持ちは十分にわかる。僕は、その逆の理由で国境を越えたのだが。
『12万円で世界を歩く』という30年ほど前に出版された本がある。それをなぞるような旅をはじめている。だいたいのエリアで当時に比べれば、円の価値もあがり、LCCという格安航空会社が生まれ、同じルートを12万円以下で辿ることができるようになってきている。しかしアメリカは違う。
そもそも太平洋路線の飛行機運賃が変わらない。30年前は、往復8万円ほどだったが、いまも8万円台。まったく安くなっていないのだ。
30年の間に、アメリカの物価はかなりあがった。当時の記録をみると、バスターミナルでのコーヒーが1杯0.92ドルだったが今は2.16ドル。2倍以上になっている。味はまったく変わらないと思うが。
30年前、僕はアメリパスという、乗り放題のバス切符でアメリカを一周した。これはアメリカに住んでいない人だけが買うことができる切符で、2万1500円だった。しかしその切符もなくなってしまった。
今はその都度、切符を買っていかなくてはならない。その運賃も、当然、高くなってしまった。ロサンゼルスからエルパソまで60ドルほど。ここからニューオリンズまでは200ドルを超えてしまう。
『12万円で世界を歩く』という本の企画は総費用が12万円で旅をするというものなのだが、はじめの3日間ほどで、すでに12万円を超えてしまったのだ。
12万円──というアメリカの旅はもう成り立たないわけだ。当時の日本は、バブルのただなかだった。アメリカは人気の国だった。
日本とアメリカの距離……。メキシコの国境の街で悩んでしまう。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまはインドから中国に戻る帰路編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
Posted by 下川裕治 at 19:21│Comments(0)
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