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ナムジャイブログ

2019年02月11日

インフレというエネルギーを生むからくり

『12万円で世界を歩く』という本がある。30年前に刊行された。一応、僕のデビュー作ということになっている。
 このときのルートをもう一度辿ってみるという旅がはじまっている。この旅は、総費用12万円の旅だった。そこには、飛行機代やホテル代、食費……など、旅の費用すべてが含まれたいる。この資金で、どこまで行って帰ってこれるか──という旅だった。
 もう一度辿る旅で、タイ、マレーシア、インドネシア、ネパールを訪ねた。旅の費用が重要なファクターだから、当時といまの為替レートがかかわってくる。訪ねた国のレートはこう変わっていた。
 タイバーツ=5,1円→3.48円
 マレーシアリンギ=50.6円→26.9円
 インドネシアルピア=0.077円→0.0078円
 ネパールルピー=5.6円→1円
 前に記されているのが30年前。後ろがいまである。これを見ると、円はこの30年で高くなったなあ、と思うかもしれないが、そうでもない。現地のインフレが進んでいるのだ。
 インドネシアルピアは、10分の1になってしまったが、物価は10倍あがっていた。どの国も、基本的にインフレ基調である。
 当時訪ねたほかの国も調べてみた。韓国とロシアが大きく変わっていた。
 韓国ウォン=0.018円→0.097円
 ロシアルーブル=212.9円→1.67円
 韓国はウォン=5倍強になっていた。アジアのほとんどの国が円高傾向なのだが、韓国だけ逆になっていた。ロシアは、ひどい。こうなると暴落といってもいい。
 旅行者にしてみれば、為替レートと現地の物価の相関関係のなかで、「安い」「高い」という感覚が生まれてくる。
『12万円で世界を歩く』には、詳しい明細表が掲載されている。
 たとえばタイ。クイッティオというそばが15バーツと記されている。いまは40バーツほどだろうか。3倍弱。為替レートは半分にもなっていないから、この30年でタイはだいぶ高い国になったわけだ。
 いろいろ比べれば面白いだろうが、現地の人は為替レートの変化ではなく、物価の上昇と給料の上昇のほうが関心事である。この給料の上昇が測りにくいから、話はあやふやになっていってしまう。タイでいえば、この30年で、給料は3倍以上にあがったかということだ。
 しかしそこには庶民感覚を突いたようなからくりもある。給料があがると、物価の上昇を忘れて、単純に喜んでしまうのだ。その感覚がアジアのエネルギーを下支えしたような気がしないでもない。
 30年前と同じルートを旅する。アジアのエネルギーというものが少し見えてくる。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=再び「12万円で世界を歩く」のシリーズが連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 11:34│Comments(1)
この記事へのコメント
こんにちは。
アジア旅行好きの信州人です。
「週末シリーズ」特に楽しく拝読しております。
韓国ウォンのレートが気になりましたので「12万円で世界を歩く」を再読いたしました。
0.1875円ではなかったでしょうか。ネットの情報サイトも確認しましたが概ねその通りです。同郷の先達に僭越ながら、信州人の性としてご容赦ください。
Posted by 北信出身 at 2019年02月17日 22:50
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