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ナムジャイブログ

2019年03月11日

子供がいれば生きていける

 以前、バングラデシュの難民キャンプの話をした。60万人以上のロヒンギャ難民が暮らしているクトゥパロンキャンプ。そのなかの医療施設で医師と交わした会話が気になっている。彼はキャンプ内で生まれる子供の多さを気にしていた。
「正確な数はわからないんですが、推定で1年間に2万人ぐらいの子供が生まれているようなんです」
 2万人──。とんでもなく多い。出生率の算出は簡単にはできない。60万人というと、日本でいうと鳥取県の人口が近い。鳥取県で1年間に生まれた子供は約4500人ぐらいだから、その4倍以上になる。
「妊娠がわかって診療所にやってくる。しかし、夫の名前を書かない女性が多いんです。いろんな事情があるのかもしれませんが」
 医師はファミリープランの話もするといっていたが。
 難民キャンプには女性や子供が多い。紛争地から避難してきたわけだから当然だろう。クトゥパロンの難民キャンプを案内してくれたのはベンガル人。イスラム教徒だった。
「NGOのスタッフのなかには、出生率の高さを、イスラム教で説明する人がいる。一夫多妻だからと……。でも、いまのイスラム社会では、そんなことはあまりありません。ロヒンギャはイスラム教徒だけど、同じですよ」
 ではなぜ出生率が高くなるのだろうか。
「難民キャンプでは出生率が高くなる」という話をだいぶ昔に聞いたことがある。タイにいくつかあったカンボジア人の難民キャンプで援助活動をしている日本人からだった。
 カンボジアにはその後、UNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)の管理のもとで選挙が行われた。そのとき、1ヵ月ほどプノンペンに滞在した。すでに旅行者もカンボジアには入っていた。そのひとりから、郊外の売春宿の話を聞いた。
「ベトナム人が多いけど、カンボジア人女性の一画もある。そりゃ、ひどいところです。掘っ立て小屋のなかがカーテンで仕切ってあって。そこで聞いたんだけど、カンボジアの女性は避妊をしないらしい。子供がほしいそうなんです。どんなに厳しい環境でも、子供がいれば生きていけるって、彼女たちは考えるらしい」
 そういうことなのだろうか。難民になったこともなく、男性でもある僕にはなかなか想像できない。しかし、身寄りのないひとりの女性が、将来が見えないなかで生きていかなくてはならない。紛争はそんな状況をつくりあげてしまう。
 それでも生きていく女性たち。その支えになるのが子供たち……。
 クトゥパロンの難民キャンプで考え込んでしまった。診療所には10人を超える女性たちが順番を待っていた。

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○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 13:02│Comments(1)
この記事へのコメント
日本も戦後はベビーブームでしたよね。追い込まれると子どもが欲しくなるんですよね。いい状況ではないですね。ただ、戦後のベビーブームがなかったら僕は生まれてこなかったかも… 
Posted by きむら at 2019年03月14日 06:29
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