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ナムジャイブログ

2019年03月18日

引きずられる便利さ

 徳島、大阪、京都をまわった。白血病で息をひきとったジミー金村さんの墓参を兼ねた取材だった。
 取材や旅という世界になると、僕は海外というフィールドのほうが多くなる。たまに日本で取材旅行に出ると、
「日本はなんて便利なんだ」
 と呟くことになる。日本語が通じる、ということもあるのだろうが。
 飛行機が徳島の空港に着くと、便に合わせた徳島駅行きのバスが待っていた。取材を終え、ビジネスホテルで原稿を書いていた。相変わらずだが、本の原稿に追われている。
 ふと気がつくと、11時をまわっていた。なにか食べなくては……とホテルを出ると裏手にスーパーが店を開いていた。24時間営業だった。
 ビジネスホテルのある場所は、徳島の繁華街から少しはずれていた。もう徳島大学が近い。そんなエリアなのに終日営業。僕は助かったが、店内は閑散としていた。
 店内を歩くと酒類のコーナーがあった。
「そうか、日本は深夜でも自由に酒を買うことができるんだ」
 としばし、ずらりと並ぶビールの前で立ち止まってしまった。
 翌朝、バスで大阪に出ようと思った。駅前にあるバスセンターに出向くと、簡単に切符を買うことができた。大阪行きのバスは30分おきに出ていた。乗り込むと、客は10人ほどだった。バスは鳴門海峡を越え、淡路島を縦断し神戸に出て、梅田に到着した。3時間ほどで着いてしまった。
 そこから茨木に行くことになっていた。阪急電車の駅はすぐ近くだった。
 やはり日本は便利だった。
 日本のコンビニが終夜営業の見直しを検討しているという。いまの日本は、人手不足がかなり深刻なのだ。その話を聞いた知人のイギリス人はこういった。
「いいんじゃない。日本は、便利すぎるから」
 彼はイギリスに里帰りして、日本に戻ったばかりだった。
「ロンドン郊外の実家にいたんだけど、夜の10時頃、コーラが飲みたくなって、ふと考えたんですよ。日本はすぐ近くにコンビニがあるけど、ロンドンは違う。あっても早く店は閉まってしまう」
 彼は日本の大学を卒業し、10年以上、東京に住んでいた。
 日本には、「引きずられる便利さ」があるような気がしてならない。他店が24時間営業に踏み切ったからうちも……という発想だ。それを競争の論理といっていいかわからないが。徳島の住宅地に近いスーパーが終日営業にする意味があるのかとも思ってしまうのだ。その空気感が便利な日本をつくりだしたが、その空気に足を引っ張られている気がしないでもない。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=再び「12万円で世界を歩く」のシリーズが連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 15:43│Comments(0)
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