2019年05月13日
河原の温泉を浸かり歩く
台湾の超のつくような秘湯を探しだし、そこに浸かるという旅を続けている。台湾の温泉の奥深さを教えられる旅でもある。
温泉街の奥に共同浴場があると聞いて訪ねた。そこは谷のどん詰まり。先には道がないところに、「警光山荘」と書かれた建物があった。日本時代に建てられた警察官用温泉。その後、台湾の警察官が利用する温泉になったが、いまは一般開放。知名度は低く、地元の人たちだけが入浴する共同温泉になっていた。台中から山の方向に進んでみた。地震で突然、温泉が湧出するようになったことで出現した温泉施設に出合った。
しかし超秘境温泉の入口。アウトドアブームも手伝い、河原温泉の世界が待っていた。
河原温泉というのは台湾語で野渓温泉。つまり河原を掘っただけの温泉だ。水量が増すと水没してしまうこともある。
梵梵野渓温泉は、英土社という村から、河原を10分ほど歩くと現れた。ちょうど崖がえぐられたような地形で、そこに直径10メートルほどの池……手を入れてみるとほどよい湯加減だった。
河原で水着に着替え、入ってみた。いい温泉だった。底から温泉が湧き出、川の水が適度に流れ込んでいる。村の人たちが管理しているという。
次いで向かったのはガラホ野渓温泉。ガラホ村から、山道を谷底に向かって40分もくだった。額を流れる汗をぬぐった先に見えたのは立派な滝だった。
かなりの水量の川を膝ぐらいまで浸かって渡り、滝つぼに手を入れると、みごとな温泉だった。大きな滝から流れ落ちるのはぬるい湯、熱い湯は脇から流れ込み、滝つぼが自然の温泉になっていたのだ。
そんな野渓温泉は、近くの村で訊くと教えてくれる。降りる道が危険で浸かることができない温泉や、川の水量が増して水没してしまったところもあったが。
温泉の名前からもわかるように、これらの温泉があるのは、ほとんど先住民が暮らすエリアだった。どこも行きづらい。漢民族が多い街から、くねくね道を延々とのぼっていかなくてはならない。台湾の先住民の多くは、深い山のなかに暮らしている。そしてそこを流れる川の河原に、野渓温泉は出現する。
こういう温泉を訪ねていると、台湾という島は先住民族の方が多いのでは……と思えてくる。しかし台湾の先住民は、2014年の調査では54万人ほどで、台湾の人口の2.3パーセントしかいない。先住民族のなかでも、山地に暮らす人たちは約半数といわれるから、1パーセント強ということになる。
しかし僕は毎日、先住民族のエリアの温泉に入り、彼らが経営する民宿に泊まって旅を続けた。こういう旅も台湾にはある。
■バグラデシュの小学校を修復するクラウドファンディングをはじめています。詳細は以下から
https://a-port.asahi.com/projects/sazanpen/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=再び「12万円で世界を歩く」のシリーズが連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
温泉街の奥に共同浴場があると聞いて訪ねた。そこは谷のどん詰まり。先には道がないところに、「警光山荘」と書かれた建物があった。日本時代に建てられた警察官用温泉。その後、台湾の警察官が利用する温泉になったが、いまは一般開放。知名度は低く、地元の人たちだけが入浴する共同温泉になっていた。台中から山の方向に進んでみた。地震で突然、温泉が湧出するようになったことで出現した温泉施設に出合った。
しかし超秘境温泉の入口。アウトドアブームも手伝い、河原温泉の世界が待っていた。
河原温泉というのは台湾語で野渓温泉。つまり河原を掘っただけの温泉だ。水量が増すと水没してしまうこともある。
梵梵野渓温泉は、英土社という村から、河原を10分ほど歩くと現れた。ちょうど崖がえぐられたような地形で、そこに直径10メートルほどの池……手を入れてみるとほどよい湯加減だった。
河原で水着に着替え、入ってみた。いい温泉だった。底から温泉が湧き出、川の水が適度に流れ込んでいる。村の人たちが管理しているという。
次いで向かったのはガラホ野渓温泉。ガラホ村から、山道を谷底に向かって40分もくだった。額を流れる汗をぬぐった先に見えたのは立派な滝だった。
かなりの水量の川を膝ぐらいまで浸かって渡り、滝つぼに手を入れると、みごとな温泉だった。大きな滝から流れ落ちるのはぬるい湯、熱い湯は脇から流れ込み、滝つぼが自然の温泉になっていたのだ。
そんな野渓温泉は、近くの村で訊くと教えてくれる。降りる道が危険で浸かることができない温泉や、川の水量が増して水没してしまったところもあったが。
温泉の名前からもわかるように、これらの温泉があるのは、ほとんど先住民が暮らすエリアだった。どこも行きづらい。漢民族が多い街から、くねくね道を延々とのぼっていかなくてはならない。台湾の先住民の多くは、深い山のなかに暮らしている。そしてそこを流れる川の河原に、野渓温泉は出現する。
こういう温泉を訪ねていると、台湾という島は先住民族の方が多いのでは……と思えてくる。しかし台湾の先住民は、2014年の調査では54万人ほどで、台湾の人口の2.3パーセントしかいない。先住民族のなかでも、山地に暮らす人たちは約半数といわれるから、1パーセント強ということになる。
しかし僕は毎日、先住民族のエリアの温泉に入り、彼らが経営する民宿に泊まって旅を続けた。こういう旅も台湾にはある。
■バグラデシュの小学校を修復するクラウドファンディングをはじめています。詳細は以下から
https://a-port.asahi.com/projects/sazanpen/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=再び「12万円で世界を歩く」のシリーズが連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
Posted by 下川裕治 at 11:52│Comments(0)
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