インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2019年06月17日

悩みのシニアひとり旅

『シニアひとり旅』(平凡社新書)が発刊された。副題に「インド。ネパールからシルクロードへ」とあるように、訪ねる人が多い東南アジアの先を舞台にした一冊だ。
 この本は、『シニアひとり旅』の続編でもある。タイや台湾といったエリアから、一歩先に進んだ。
 いまのシニア層が若かった頃、日本にはバックパッカーブームというものがあった。いまに比べれば、当時の日本はまだ明るかったのだが、若者は目に見えない不安に苛まれていた。その答えが、バックパッカー旅──そんな空気があった。
 だいぶ前、M1に出たチュートリアルの漫才を見ていたことがあった。そのネタのなかに、インドが出てきた。なにかに悩んでいたという設定だった。それを解決するために、いろんなことをする。そのなかに、こんなセリフがあった。
「インドも行ったよ」
 苦笑いするしかなかった。そう、あの頃、多くの若者がインドに憧れた。物資的に豊かになったその先にある社会が、インドにあるのではないか。
 実はそんなものは、インドにはなにもなかった。しかしそういえるのは、インドに行ったからであって、日本で鬱屈した青春をすごしていた彼らには、インドは憧れの地として温存されていった。
 人から後ろ指をさされない人生を歩み、自由な時間を手にしたいまのシニアにとって、夢みがちに眺める国はやはりインドだった。
 そんな話から本書ははじまる。そしてネパール、パキスタン、バングラデシュ、中央アジア……。
 中央アジアはシニア層にしたら遠い国だった。そもそも彼らが若かった頃、中央アジアの国々はなかった。その後、独立した国家群である。中央アジアには、シルクロードが通っていた。いまは中国の一帯一路政策のなかで、妙な状況に進んでしまったシルクロードだが、シニア層にとっては、やはり憧れだった。そんな土地がいま、旅の目的地としては旬の時期を迎えている。
 バングラデシュにも1章をあてた。いまも昔も、バングラデシュは旅先になかなか選ばれない国だが、僕は深くかかわってきた。小学校の運営にかかわってきたのだ。いま、その校舎が老朽化し、クラウドファンディングでその資金を集めている。しかし30年近く、バングラデシュとかかわっていると、いろんなことが見えてくる。貧しい国とかかわっていると、力を失っていく日本の姿が浮き彫りになってしまう。
 しかしいまのシニア層は、豊かな日本を刷り込まれている。シニアひとり旅には、悩みの日々が待っている気がする。それがバックパッカー旅にも映るのだ。

■バグラデシュの小学校を修復するクラウドファンディングをはじめています。詳細は以下から
https://a-port.asahi.com/projects/sazanpen/
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=台湾の超秘湯の旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまも続いています。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 13:29│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。