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ナムジャイブログ

2020年02月10日

重苦しいマスク話

 マスクをめぐる話がにぎやかだ。いまは新型コロナウイルスにからんだマスク話が席巻している。武漢に住む外国人を運ぶチャーター機でマスクを届ける話。品薄に乗じて高値で販売する業者が問題にもなった。
 感染者が出ている国ではどこも品薄のようで、「日本も品薄でしょうが、手に入ったら次回に来るときに買ってきてくれないでしょうか」などというメールがタイから届いたりする。単なるマスクではなく、口や鼻のまわりをぴたっととめるタイプなどをネットで探しているようだった。
 日本はこれから花粉症のシーズンを迎えるから、それ用のマスクを用意していたのだろうか。ほかの国に比べると、在庫が多いという人もいる。
 そうこうしているうちに、また別のタイ人から、マスクの依頼がきた。次回のタイ行きは、マスクの運び屋と化しそうだ。
 マスクをつける人の急増は、ここ30年の世界の大きな変化でもある。記憶がある。30年前、僕は東京でフリーランスのライターをしていた。週刊誌の企画で、少しずつ増えはじめたアジアからの観光客から、日本の印象を聞いてまわるというものがあった。
 彼らに、日本でいちばん驚いたことは?と訊くと、マスクという答えが返ってきた。病院でしか見たことがないという人が多かった。
「日本人はどうして街を歩くとき、マスクをつけるんですか」
 おそらくインフルエンザが流行っていたのではないかと思う。もうひとつ、彼らが目を丸くしたのは立ち食いそばだった。タイ人のひとりはこういった。
「立って食べるなんて、私にはできません」
 その後、マスクの需要を高める状況に次々に陥っていく。アジアではSARSの感染が広がり、大気汚染が深刻になっていく。PM2.5の増加に各国が悩むことになる。そして今回の新型コロナウイルス……。
 どれもひとりの力では防ぎようがない。マスクが完全に防いでくれるわけではない。しかしマスクをつけないよりは……。いまやアジアはどこでも、マスクが街の風景に溶け込むようになってしまった。
 日本では別の文脈でマスクの効果が語られたこともある。マスクをつけると精神的に楽なのだ。上司に呼ばれて注意を受けるときにはマスクをつける。赤んべーと舌を出してもみつからない……と。ちょっと病んだ日本人たちの話は、このブログでも書いた記憶がある。
 1月の末、バンコクのスワンナプーム空港で、中国からやってきた観光客を見た。全員が防毒マスクかと思うような本格マスクをつけていた。その姿は痛々しかった。マスクへの思いはこの30年で、ずいぶん重苦しいものになってしまった。

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Posted by 下川裕治 at 15:19│Comments(0)
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