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ナムジャイブログ

2020年03月02日

武漢封鎖という危うさ

 新型コロナウイルスが世界を揺るがしている。感染を防ぐのはなかなか難しい。各国の対応を見ると、ある怖さをもって際だって映るのは中国の対応だ。感染規模も多きく、混乱していたとはいえ、武漢という大都市を封鎖した。世界の感染国のなかで、特定の都市を封鎖したのは中国だけだ。
 いや、できないといってもいいのかもしれない。韓国の大邱にその動きがあったが、住民の猛反対にあった。
 感染拡大を防ぐために都市を封鎖する。その手法に対し、専門家の意見も分かれる。封鎖した結果、あれだけの多くの犠牲者を出してしまったという人もいる。多くの人々が街に閉じ込められたことで、感染が拡大したという分析だ。病院に押し寄せた人々が院内で感染していった……と。
 武漢を封鎖しなければ、感染はもっと広がっていたという見解も存在する。中国は、後者を強調するだろう。
 僕が気になるのは、ひとつの都市を封鎖するということが、どれだけのことか、ということだ。以前、バンコクで赤シャツ派と黄シャツ派が衝突し、最終的には軍が出動し、バンコクに、夜間外出禁止令が敷かれたことがあった。その初日、僕は早朝の飛行機でベトナムに行くことになっていた。記憶では朝5時までの外出禁止令だった。しかしそれでは飛行機に間に合わない。
 訊くと航空券を見せれば、外出してもいいようなことをいう。しかしタクシーは? ホテルに相談すると、知り合いの運転手が前夜からホテルにやってきてくれた。
 午前4時台に無人の街を空港に向けて疾走する……。そんなことはなかった。荷物を積んだトラックが走っている。訊くと、隣接県のトラックだという。バンコクに食料が届かないと大変なことになる。バンコクの市場には明かりがついていた。市場のおばちゃんは軍より強い?
 なにかにつけ、詰めが甘いタイだから……と思うかもしれない。しかし都市に外出禁止令や封鎖令を出すということは大変なことなのだ。武漢の人々への食料をどう運び込むのか。仕事ができない間の補償はあるのか。人々の反発をどう受け止めるのか……。
 中国だからできたことだった。強い権力がなければ封鎖などできない。
 しかし封鎖という発想の背後には、武漢の人々を犠牲にしても、中国を守るという思想が潜んでいる。「地方を犠牲にして、北京を守る……つまり共産党を守るということですよ」という人もいる。
 中国は、その思想を実行に移したということだろうか。しかしほかの国々は、そう簡単にはいかない。それは民主主義以前の問題にも映るのだ。
 新型コロナウイルスがひと段落したとき、中国が武漢の犠牲を語らず、自らの対策を自画自賛し、その手法に人々が傾くとしたら……。そこには危険な発想が含まれている。

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Posted by 下川裕治 at 11:35│Comments(1)
この記事へのコメント
天安門事件しかり、自らが生き延びる事を最優先する国民性ですから犠牲なんてやむ無し程度の感覚では?人口が人口ですから数十万程度はものの数ではないというのが本音だと思ってしまいます
Posted by 赤貧人生 at 2020年03月10日 11:30
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